第7話 コンビニってちょっとエッチな場所
いつもの下校道が、今日はやけに長く遠くまで続いているように見える。
それもそのはず、今日はこれから佐藤さん、いやエリの家に行くのだ。
「エリ、本当に家に行ってもいいの?」
「うん、だって私の事もっと知りたいんでしょ?ゆっくり話したいけど喫茶店とかお金かかるじゃん」
家庭的というか、経済的というか、そんなギャルらしからぬところも彼女の魅力であると俺は思う。
派手なことが好きで遊ぶのが好きで男が好き。
そんなギャルのイメージとは違い実に普通の女の子らしいところを持っている。
まぁ服装はエロいし色んなところを触らせてくれるのは俺も得してることだから目を瞑ろう。
「この先にちょっと行ったところが家だから、先にコンビニでなんか買っていく?」
「う、うんそうだね」
俺たちは近くのコンビニに寄ってお菓子や飲み物を買っていた。
するとこれは偶然以外の何物でもないのだが、ふとあるものが目に入った。
そう、ゴムだ。ゴムと言ってももちろん輪ゴムではない。スキンだ。スキンが何か知らないピュアな少年少女は是非親に聞いてくれ、ぶっとばされるから。
部屋に行くということは当然そんな流れになるのでは、なんてことまでは思っていないにしても、いざという時にゴムがないからできませんなんて据え膳食えぬを喰らったら俺は一生後悔するだろう。
万が一、いや億が一の可能性の為にもこういうものを持っておいた方がいいのだろうか?
いや、逆に持っていたら持っていたで最初からその気だったのかと軽蔑されてしまうだろうか。
……わからない。世の中の男たちはいつどうやってゴムを買うんだ?
彼女と一緒に買うものなのか?いや、財布に入れてるなんて話も聞くけど果たして真相はどうなんだ?
俺は無意識のうちにその前で足を止めてしまっていた。
「どしたのワクミン?」
「へ?い、いやいやなんでもないよ……」
「あー、ゴム売ってる。味付きの奴だね」
エリは何の恥ずかしげもなくそれを手に取ってパッケージを見ている。
「もしかしてこれ見てたの?」
「そ、そんなわけないじゃ、ないか……」
「ふーん、じゃあ私これ買おっかなー?」
「え!?」
え、女の人ってゴム買うの?なんて本気で真に受けたわけではない。
つまりそれは俺と使うために買ってもいいよという合図なのか、それとも俺をからかっているかのどちらかであることは理解できる。
しかしどっちだ?冗談だった場合、俺はかなり恥ずかしいことになる。
「ふふ、これ財布に入れてるとお金貯まるんだって前にネットで見たよ」
「あ、ああそれは聞いたこと、あるかな……」
「じゃあ二人でお財布に入れる?」
「で、でも……」
「いいじゃん一人だと恥ずかしいし一緒に買っちゃお」
エリは、俺が持っていた買い物かごにポイっとそれを放り込んだ。
そしてお菓子や飲み物と一緒にそれをレジに持っていくと、店長と名札のついたおじさんに少し見られた気がした。
俺は人生で初めてゴムを買った。
つけたこともなければ実物を開けてみたことも実はない。
一人でするだけの俺にもちろんそんなものは必要なかったからだ。
だから今それを持っているというだけでもドキドキするのに、それを持って彼女の家に行くなんて、一体俺の身に何が起こっているんだ……
「ふふ、さっきのおじさんめっちゃ見てたね」
「うん……恥ずかしいよやっぱり」
「絶対私たちがこの後ヤリまくるって想像してたよねー」
「い、いやそりゃそう見えるのも、仕方ないよ」
「家に着いたら早速開けてみよっかなー」
「!?」
その後すぐにエリが「お守りで使うでしょ?」といったことで他意はないとわかったので深読みすることはなかったが、開けようなんて言われた瞬間は心臓が口から飛び出そうなくらいにドンッと音を立てていた。
コンビニ一つでハラハラドキドキさせられながら、ようやく俺はエリの家に着いた。
「ここだよ、普通の家だけどゆっくりしてってね」
案内されたのは住宅街にある一軒家。小さな庭がついていて、普通よりは少し大きめな家に見えたが驚くほどの豪邸とかそんなんじゃない。
もし案内された家が豪邸で、エリがとんでもないお嬢様だったらどうしようかなんて妄想も何回かはしてみた。
でもそうじゃなくて俺はホッとしている。普通の家の普通の女の子だからこその安心感というものがそこにはあった。
「お、お邪魔します」
「だから誰もいないんだってー。私の部屋は奥だからそこで待ってて。コップとか持ってくるし」
まず俺は部屋に通された。
人生初の女の子の部屋だ。
本棚には漫画や小説が並べられていて、勉強机とベッド、それにコタツ机が真ん中に置いてある少し広めの普通の部屋だ。
でもなんかいい香りがする。女の子の部屋ってこんなに爽やかなものなのかと、俺はうっとりしていた。
その後少しの間一人で部屋に残されて、目のやり場に困りながらも本棚を見ていると俺の好きなラノベが一冊だけ置いてあった。
ラノベはその一冊だけで、あとは小難しそうな小説や少女漫画だったので特にラノベ好きというわけではないのだろうが、彼女もこういうのを読むのだと思うと少し意外だった。
「何見てるのー?」
「あ、さと、エリ……」
「また佐藤さんって言いかけたなー。無視するぞ」
「ご、ごめん」
「ふふ、残念ながら女の子の部屋にエロ本はありませんので」
エリは制服のままジュースとお菓子を持ってきた。
さっき買ったやつを紙皿に並べて持ってきてくれたようで、ひとまずそれに手を付けながら気分を紛らわせた。
「ワクミン、女の子の部屋って初めて?」
「う、うんもちろん……」
「そっかー。でもね、私も誰かを部屋に入れるの初めてだよ」
どうして彼女は俺が聞きたいことをそのまま喋ってくれるのだろう。
そんなことを言われたら俺は天にまで昇ってしまいそうになるではないか。
「あ、あの……エリはラノベとか、読むの?」
「え?ああこの本のことかな。うん、普段は読まないけどこれはすっごく面白かったんだ」
「へ、へぇ……誰かのおすすめとか?」
「そーなの、誰かのおすすめ」
敢えて誰に勧められたのかを言わないのはわざとだろうか?
それに部屋に人を入れるのは初めてだって言ってたけど、元カレとかいないのかな……でもこういう話をするのってちょっと女々しいと思われるかな……
「まーた難しい顔してるよ?」
「ご、ごめ……」
「それより、そっち行っていい?」
「え?」
エリは立ち上がると、俺の隣にすとんと座った。
近い……それにやっぱりいい香りがする……
「触る?」
「へ?い、いや……いい、の?」
「変なところは触ったらダメだよ?太ももまーで」
ニヤニヤと笑いながら俺に太ももを差し出してくるエリの誘惑に俺は勝つ術を持ってなどいない。
それに人の好意には素直に甘えろが俺の信条だ。
だから早速太ももに手を添えた。
「どう?きもちいでしょ?」
「う、うん……スベスベ、する」
「その表現やだー、おっさんみたいー」
「ご、ごめん……でも、気持ち、いい」
ああ、もう天国だここは。
いい香りを嗅ぎながら掌いっぱいに彼女の太ももの柔らかい感触を感じながら甘いひと時を過ごすなんて、これが天国でなければなんなんだ。
もう一生このままでいいやと思うくらいに俺は幸せだった。
「ね、さっき買ったやつ開けてみようよ?」
「え、それって、ゴム?」
「そーだよー、どんなんか気にならない?」
そう言って手を伸ばして俺の向こうにある袋をとろうとした時に、俺の体に柔らかい何かが当たった。
「あ、ごめん胸当たっちゃった?」
「え、いや……」
「でも、触るのはまだ待ってね」
ふふっと笑って俺の前を過ぎていくエリの顔を見ると俺の手がぴくっと反応してしまった。
もちろんすぐに我慢したが、あまりの可愛さとエロいシチュエーションに俺の本能が反応してしまったようだ。
「開封の儀じゃー。あ、色ついてる、赤ってつけたらちょっとグロそうだよねー」
「よ、よくわかんないけど……」
「つけてみる?」
「え!?」
「なーんてね、びっくりしすぎー」
「……」
ダメだ、俺の心臓がもたない……
しかしいつまでこんな時間が続くんだろうと思っている矢先にエリがゴムを一つ渡してきた。
「お財布、入れよーよ。せっかく買ったのに使わないともったいないじゃん」
「う、うん……」
出来ればこの製品の本来の使用目的通りの使い方をしたい、なんてことを童貞の俺が言えるはずもなく、財布を出してそれをお札入れの所にしまった。
「でも結構入ってるよねー。どーしよー?」
「そ、そんなに高くないし捨てる?」
「ダーメッ!物は粗末にしたらバチが当たるんだよ?それに」
エリが立ち上がってそれを机の引き出しにしまいながらこっちを見て言った。
「そのうち使うかも、でしょ?」
その言葉に俺は完全にのぼせてしまった。
そして人の部屋だというのに鼻血が垂れてきた。
「あ、大丈夫!?ティッシュティッシュ!」
「ご、ごめん……」
「もう、ワクミンはエッチなことでも考えてたのかなー?ふふっ」
床に血が溢れないように必死で鼻を抑えながら、悪戯に笑うエリを見て俺は幸せな一時を過ごした。
そして落ち着いた後しばらく二人で何でもない話を、彼女の太ももを触りながら話しているとすっかり夜になっていた。
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