死神の始動
44.一夜明けた朝
「……朝か」
シルヴィアとパーティーを組むことになってから一夜明け、時刻は6時。あの後はお互い疲労が限界だったということもあり、特に何か話すこともなく眠りについた。
ちなみに俺はリビングのソファーを使わせてもらった。流石に愛奈さんのベッドを使う程礼儀知らずではない。今まで石の上で寝てたし、このソファでも天国の心地良さだった。この三年間で眠りの浅くなった俺でも、ぐっすり眠れたし。
「ふあ~~~。シルヴィアはまだ寝てる……かな?」
昨日の移動中も若干寝足りない様子だったし、やっぱり疲れが溜まっているんだろう。別にわざわざ起こす理由もないし、気長に待つとす
「おーーーい!」
……あったな、起こす理由。そういえば、朝迎えに来るとかなんとか言ってた気がする。流石にこんな時間に来るとは思ってなかったけど。
「おはようございます」
「おう坊主!どうだ?何か進展はあったか?」
「何ですか、進展って」
玄関で待っていたのはガイさんだ。どう考えても朝六時のテンションじゃない。
「そりゃお前、若い男と女が同じ部屋で始めることと言えば」
「とてつもない誤解がありますね。そもそも別の部屋で寝ましたよ」
「……何だと?」
「何真面目な雰囲気作ってるんですか。当たり前でしょう」
高校男子みたいなノリで突っかかってくるのはやめてほしい。絶対面白がってるだろ。
ガイさんは今日は戦闘をしないからか、金属鎧ではなく普段着姿だ。休日のお父さん感がすごい。最低限の得物として腰に短剣を下げているから、それにしては少し物騒だけど。
「おはようエイム。シルヴィアちゃんはどうしたんだい?」
「おはようございます。まだ眠っているみたいです、やっぱり疲れが溜まってたみたいですね」
カルティさんも今日は普段着だ。荒野で使っていた長杖は持ってきてらず、こちらは完全に手ぶらだ。
「まぁ仕方ないか。折角だし朝を一緒にしようと思ったんだけど…」
「起きてますよ、おはようございます」
「!?」
突然後ろから聞こえた声に振り向くと、そこには昨日の寝巻から普段着に姿を変えたシルヴィアがいた。冬でも外出できそうな厚手のセーターに身を包み、腰にはいつもの細剣を提げている。
「起きてたのか、おはよ」
「着替えてたから出られなかったのよ……おはよう」
つまり俺より先に起きてたってことか。結構早い時間だと思うんだが、みんな早起きだな。
「エイムは何か準備はいるかい?」
「いえ、このまま出れますよ」
銃はずっと身につけておかないと安心して眠れなくなってしまっている。服装も今の所このローブだけだし、このまま外出しても問題はない。
「じゃ、どこかで朝でも食べて、軍に向かおうか」
「なら、今日は俺がおごらせてもらうぜ」
「いいんですか?」
「坊主のお陰で、任務報酬にボーナスが付きそうだしな。しばらくは余裕のある生活を送れそうだ」
俺から聞いたカミラの迷宮の深部の話はかなり価値のある情報らしく、予定していたより報酬が弾むのはほぼ確定なんだそうだ。なら俺の借金にそれを当ててほしいところだが……多分その気はないんだろうなぁ。
シルヴィアの家を出て、途中で朝食を摂る。シルヴィアの世界でも朝は手早く済ませるのが一般的みたいで、朝から営業している店も軽食のメニューが多かった。ガイさんはガッツリ食ってたけど。
どうやら軍の施設は基本的に中心部に集中しているらしく、俺達は徒歩で街の中心に向かう。車の方が速いが、魔力を使って疲れるのが嫌だとのことだ。まぁあの倦怠感は気分の良いものではないし、その気持ちは分かる。
「この時間から活動してる人、結構多いんですね」
「この街の中で働く人はともかく、私達みたいな外で動く人間にとって、夜での行動は出来れば避けたいからね。なるべく早い時間から活動しようとする人は多いよ」
なるほど、荒野だと明かりを確保するのにも一苦労だろうし、それを考えれば理に適った生活リズムなわけか。俺としては朝日がつらいから夜の方が楽だが、パーティーを組むとなればそういうわけにもいかないだろうな。
「私は夜目が利く方だから、別に夜でも問題ないわよ?」
「……それはありがたいな」
なんで今の会話から俺の思考が読み取れるんですかね、シルヴィアさん。
「さて、着いたよ。ここが軍本部だ」
カルティさんが指さした方向は、街のど真ん中に見えていた城のような建物。石造りで重厚感漂うその建物は、軍の施設と言われてもなんの違和感もない。
「元々はこの街を治めていた貴族の城だったんだけど、『混沌の一日』から日本列島での貴族制が事実上崩壊してね。折角だから軍の施設として利用させてもらってるんだ」
「無駄に広いから訓練をするのにも困らないし、いざというときは避難場所にも使える。建物自体の耐久性も申し分ないってんで、取り壊すにはもったいなさ過ぎるからな。一から建てる余裕もないし」
城みたいだとは思ってたが、どうやら本当に以前は城だったらしい。
「まずは受付に行って、エイムに入隊試験を受けてもらおうか」
「坊主、覚悟はいいか?」
「ええ、大丈夫ですよ。いつでもいけます」
一体どんな試験内容なんだろう、不安もあるが楽しみだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます