夕焼けを思い出す

『先輩、お元気ですか?』

結局既読すらつかなかったトーク画面を開いていた。ささやかに執り行われた葬式も火葬も終わり、黒い服がまばらに背を向けて散っていく。

先輩は自殺をしたそうだ。過労気味だったこと、職場の人間関係が上手くいってなかったことが原因じゃないだろうかと誰かが話していた。きっとメッセージを見る暇もないぐらい追い込まれていたんだろう。もう少し早く僕が連絡をしていたら何か違っただろうか。




——生きて欲しいって言うのは簡単だよね。

ふと夕焼けが目に入る。

もしかしたらあの時から、死ぬことを考えていたのかもしれない。漠然とではなく、身近な未来として。

それを止めるのは勝手なことかもしれない、無責任なことかもしれない。

「それでも生きていて欲しかったですよ、先輩……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る