第274話 試験官と試験説明と
実はギルド内に知っている人の魔力反応を感じている。それも2人。
私だけで無くリディナやセレス、サリアちゃんとレウス君も気づいている筈だ。
2人のうち片方の魔力反応はサリアちゃん達以外の子供達のうち何人かも気づいているだろう。
片方は元々冒険者ギルドの職員で、もう片方は冒険者。だから此処にいても不思議では無い。
今は気にしないことにして、まずはカウンターの方を偵察魔法で確認。
冒険者申請の6人はカウンターで書類作成中。さっと作成中の書類を確認。
皆、ちゃんと書類を書けている。6人とも読み書きや四則演算が出来るから当然だけれど。
全員、最初は文字を読むことすら出来なかったんだよな。そう思うとなかなか感慨深い。
しかし書類作成にはもう少しかかりそうだ。ならば見学組の方へ行こう。私は掲示板の方へ向かう。
今回見学組で来ているのはファビオ君、ミケーレ君、ルチアちゃん、カリンちゃん。4人とも12歳以上でレベル4以上の魔法属性があり、文字の読み書きと四則演算が出来る。
つまりはサリアちゃん達の次に卒業する可能性がある子達だ。
なお今日留守番のイリアちゃんも実力は見学組と同等以上、というか実力は卒業組並みだし年齢だってサリアちゃんと同じ。
ただ彼女は冒険者を希望していない。それにセレスと一緒に週に1度はカラバーラの街に来ているし、冒険者ギルド内にも入った事がある。
だから今日はお留守番役をお願いした。少しばかり申し訳なかったけれど。
さて、掲示板の方では4人がセレスに説明されながら依頼や連絡の掲示を見ている。
「級によって結構褒賞金が違うんですね」
「ええ、C級までは概ね時間あたりの褒賞金額が倍になっていきますから。
E級ですと
「何故そうなっているの?」
「各級で討伐できる魔物の褒賞金を基準にしているんです。
E級だと魔物の討伐依頼を受けられません。ですから依頼も街の中でのお手伝い的な仕事だけになります。
D級でも討伐依頼を受けられるのはゴブリン、コボルト、魔鼠など、1種の魔物や魔獣までです。褒賞金で言うと1匹
時間給は概ね2時間で該当する魔物を1匹討伐するという計算になっています。ですので強い魔物を倒せる上級の冒険者を必要とする依頼は、その分褒賞金が高くなっているんです」
「薬草も結構いい値段で買い取ってくれるんだね」
「ええ。これは冒険者でなくても買い取ってくれます。でも村の役場で買い取ってくれる額と同じですから、わざわざここに来る必要はあまりありません」
「村の近くでも薬草って生えているの? 村の中の草地には?」
「よく探せば草地にも、畑の近くの森部分にも生えていますよ。ただ根こそぎ全部取ってしまうともうそこには生えなくなってしまいます。だから取り尽くさない程度にして下さい」
うーんセレス、先生しているなと思う。
「こっち、申請書類書き終わったよ」
リディナの声がした。
セレスが軽く頷いて口を開く。
「なら全員でC級試験を見学に行きましょう。試験中は邪魔にならないよう私語厳禁で。質問があれば後で聞きます」
私はセレスや見学組と一緒に掲示板前から移動。リディナ達と合流し冒険者登録の受付をしてくれたお姉さんの後ろをついていく。
冒険者ギルドの裏口側に、ラツィオの冒険者ギルドで見たのとよく似た広場があった。
広さはテニスコートくらいで、周囲を魔法陣が描かれた壁で囲まれている。
そして来たときから感じていた知っている魔力の持ち主2名がギルド内を通ってやってきた。
もう間違いようがない。
「お久しぶりです。どうされたんですか、此処で?」
「本日の試験官です。これでも元冒険者ギルド
「試験の手伝い担当。標的を30個使うよりは私が1時間ここで手伝いした方が安い。それだけ」
セレスの問いかけにそう返答したのは、勿論カレンさんとミメイさん。
言い訳っぽい事を言っていたけれど、実際は私達の教え子が冒険者試験を受けるというので応援に来てくれたのだろう。
ミメイさんの方は子供達も知っている。私が
カレンさんの方は、サリアちゃんとレウス君は知っている。時々ミメイさんとうちの温泉ハウスに入りに来るから。その時の会話で身分もわかっている筈だ。
ただ2人以外の子供達は知らないだろう。領主夫人として表に出てくる事はほとんどないから。領騎士団の式典なんかを見に行っていれば別だろうけれど。
「それでは皆さん、私が本日こちらの試験を担当させていただきますカレンと申します。これから本日の試験について説明致します。
内容は簡単です。そちらにある赤い線の右側に立って、はじめという合図が出たら左側に立っている土製の魔物像に攻撃して下さい。
魔物像は5体です。全部の像に対して本物の魔物のつもりで攻撃して下さい。攻撃の速さ、正確さ、威力、全てが採点の対象となります。
倒し方は問いません。魔法でも剣でも槍でも弓でも構いません。開始時点で赤線の向こう側に居れば、開始後は線から前に出ても、魔物像の前まで行って攻撃しても結構です。
ただしできるだけ遠方から素早く倒した方が高評価になります。ですので魔法を使えるのなら使った方がいいでしょう。
やめという合図で魔物像への攻撃をやめて下さい。試験終了となります。結果は全員の試験が終わった後、発表します。
以上、何か質問はありますか?」
カレンさんは全員の表情を確認して、そして頷く。
「無いようですので次、試験の見本を見て頂きましょう。フミノ先生、赤い線のところに立っていただけますか。ミメイは試験位置に魔物像をお願いします」
私は試験開始線の少し後ろに立つ。ミメイさんが土属性魔法でさっと魔物の像を作る。手前側にゴブリン3匹、奥がアークゴブリンとオークだな。
1秒くらいでこれだけ精巧な土の像を造れるとは流石ミメイさんだ。私にはちょっと出来ないなと思う。
「それでは試験、はじめ!」
空即斬を5回起動する。ゴブリンとアークゴブリンは袈裟懸けに、オークは首部分をさっくり切断。
「やめ。
とまあ、こんな感じです。特にこちらに対して挨拶はいりません。はじめで攻撃してやめで終わり、それだけです。
それでは試験に移りましょう。まずはカイルさん、試験開始位置へお願いします。ミメイ、また標的の方をお願いします」
いよいよ試験開始だ。
全員実力は充分あるし、大丈夫だとは思っている。それでも心配ないかというと、やっぱり……
自分がやる方がよっぽど気楽だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます