第273話 冒険者ギルドへ
いよいよ卒業の当日だ。
卒業と言っても卒業式みたいな事をする訳では無い。
いつも通りの勉強会をやった後、カラバーラの冒険者ギルドへ6人を連れていって冒険者登録をするだけだ。
冒険者登録をしてもいきなり旅立つ訳ではない。
1ヶ月の間、この村から日帰りできる範囲の依頼をこなしていく事になっている。
サリアちゃんとレウス君も、夜にはこのお家へ帰ってくる訳だ。
◇◇◇
いつものように勉強会をやって昼食を食べ、質問受け付け等も終えた後。
「それじゃカラバーラの冒険者ギルドへ行くよ。私達3人はこっちのゴーレム車で行くから、サリア達はこっちの大きいゴーレム車に乗ってついてきて」
私、リディナ、セレスはバーボン君&小型ゴーレム車。
サリアちゃん達6人と、冒険者ギルドを見てみたいという4人はライ君&大型ゴーレム車で聖堂前を出る。
お家の留守番はイリアちゃんにお任せ。夕方には帰るから問題無い。レイナちゃん、リード君、そしてエルマくんもいる事だし。
サリアちゃんはTシリーズだけではなくライ君を操縦する事もある。だからゴーレム車を任せても問題ない。
勿論新しいゴーレム車も、新しい牽引用ゴーレムも用意してある。それ以外の卒業祝いの自在袋も持ってきている。
しかしまだ出さない。6人が冒険者登録を終え、此処へ戻ってきてから出す予定だ。
私達の村からカラバーラの街まで、バーボン君牽引のゴーレム車でも
カラバーラの街に入るのに身分証の提示はいらない。ここの衛兵さん達は必要なステータスを読む事が出来るから。
あっさり街へ入り、そして冒険者ギルドの前へ到着。
「いよいよだな。腕がなるぜ」
この言葉は勿論カイル君。他の皆さんは冒険者ギルドの建物を見回したり、中の様子をうかがったり、手をぎゅっと握りしめたり。
「それでは中に入るよ。登録する6人は私についてきて」
「見学は私についてきて下さい」
ここで連れてきた皆さんが2組に分かれる。リディナ率いる冒険者登録組とセレス率いる見学組に。
単独行動の私を含めると3組かな。
冒険者ギルドの中はそこそこ人がいた。もうすぐ領地成立から10年経つとは言え、北部や中部よりはまだ新しいし未開拓地も多い。新天地を求めてやってくる冒険者はまだまだ結構いる。
その中には
しかしそういった冒険者がいるのは想定内。だからこそ私やリディナ、セレスが来ているのだ。
「おっと、ガキどもに……」
私達にケチをつけようとした冒険者の口を仲間と思われる冒険者が慌てて塞ぐ。
どうやらそっちの冒険者の方は私達を知っているようだ。よしよし、なら面倒がなくていい。
私達は月に1度はここの冒険者ギルドに討伐した魔物の死骸や魔石を持ち込んでいる。だからそこそこ顔を知っている人もいる訳だ。
勿論ただ魔物を持ち込んで褒賞金を受け取っているだけではない。やむをえずの軽い示威活動なんてのも3回やった。2回はセレス、1回はリディナが。
静かになったのはそっちの影響だろう、多分。
「それじゃリディナ、セレス、それぞれ頼んだ」
「わかったわ。フミノはまず褒賞金の方をお願い」
この3人は仲間だよ、そう分からせるためにあえて聞こえるように会話をした後、私とリディナ達はそれぞれ別の窓口へ。
セレスが率いる見学組は掲示板にある依頼を見に行く模様。
さて、それでは私は私のお仕事をするとしよう。
『3番 討伐証明受付』と書かれたカウンター内から顔なじみの受付嬢さんが私に声をかけてくる。
「こんにちはフミノさん。今日は討伐した魔物の提出ですか?」
「そうです。今回の大物はオーク2頭と
「わかりました。用意します」
もう10年近くここにはお世話になっている。だからギルド側も私に慣れている訳だ。
そして今の私は男性の冒険者も怖くない。他人とこれくらい自然に話せる。この世界に来たばかりの頃と比べるともう雲泥の差だ。
対人恐怖が消えたのはアルベルトさんのおかげだなと思い出す。あの人の甘い物好きのおかげで、ごっつい男性も中身は普通の人と同じなんだなと気付いたから。
アルベルトさん、元気かな。まあ魔法を色々使えるみたいだし、いざとなっても縮地で逃げられる。だから魔物に襲われてなんて心配はないだろう。
それに後で調べてわかった事だけれど、騎士団の小隊長というのはそこそこエリートな地位らしい。だからまあ、生活的な心配も無いとは思う。
受付嬢さんが自在袋と籠を持って戻ってきた。
「お待たせしました。魔石はこの籠の方へ、大物は自在袋の方へ御願いします」
「わかりました」
魔石は相変わらずおはじきにしたい位に在庫がある。ただここで出すのはあくまでこの周辺に出没してもおかしくない魔物だけだ。
だからメインはゴブリンの魔石。アークゴブリンやゴブリンメイジも少し混じってはいるけれど。
魔石約200個を籠に出し、オーク2匹と
オークを2匹出したところで周囲が静まりかえった気がするけれど気にしない。いつもの事だから。
「以上です。あとこれが冒険者証、功績はパーティ登録してある方でお願いします」
「わかりました。手続きしてきます」
そうだ、一応言っておこう。
「今、5番のカウンターで手続きしている6人がC級試験を受けると思うので、そちらを見てきます。ですので計算はゆっくりでいいです」
「わかりました。それでは5番カウンターの皆さんの冒険者証とあわせて計算書と褒賞金をお渡し致しますね」
「お願いします」
よしよし、それでは皆さんの様子の見学といこう。
私はカウンターから立ち上がって、5番のカウンターの方へ。
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