第272話 用意した品々

 卒業記念品が揃ったので深夜、リディナ、セレスと屋内運動場の床に並べて確認する。


「こうやって見ると何というか、冒険者っぽいよね」


「そうですね。これなら冒険者ギルドでも浮く事は無いと思います。ただ鑑定できる人が見れば使用素材が強烈過ぎると思われるでしょうけれど」


「大丈夫だと思うよ。鑑定しても見間違いだと思うから、きっと」


 リディナの言うとおり『冒険者っぽい』見てくれを心がけた。だからじっくり鑑定しない限りスルーして貰えるとは思う。


 しかし実際はセレスが言う通り。そういった素材の在庫が大量にあったから仕方ない。余らせておくよりは使った方がいい。


 結果、これらの装備は市販品よりは高性能に出来ていると思う。中には市販されていない物があるけれど。専用ゴーレム車とか。

 

「この自在袋、いいですよね。こんな小さいのにいっぱい入って」


「フミノがいないとアイテムボックスが使えないからね」 


 自在袋は私特製の結構チートな逸品。

 革製で形はショルダーバッグ形(ザックとして背負うことも可能)とポーチ形(ベルト取り付け可能)の2種類。これは普段持ち歩きやすいようにと考えた結果だ。


 収納許容重量はどちらの形も500重3tにした。実験では600重3.6tまでは使用者の魔力を奪わなかったけれど念の為、余裕を持たせた形だ。


 これでも通常市販されている大型自在袋より容量が大きい。通常市販されているものの最大容量は400重2.4tで、それ以上は一気に値段が跳ね上がるから。


 作ってみれば市販の自在袋の値段の妥当性がよくわかる。容量が多くなるほど魔石を多く使うのだ。容量が2倍になれば、使用魔石は4倍は必要。


 しかし私のアイテムボックスには魔石が大量に在庫している。枕の詰め物にしても余る位に。だから問題無い、私が作る分には。


 武器や防具の金属部分にはコボルトキングの魔石を溶解して加えた鋼を使用した。

 コボルトキングの魔石は在庫が10個ある。だから5個を使用して強化した鋼を作ってみた訳だ。


 この鋼で武器を作ると攻撃時に自分の魔法を乗せた攻撃が出来る。例えば火属性の火球ファイアボールの特質を付加し、標的で爆発するようにした矢を作ったり出来る訳だ。


 盾は防御に使う分には魔法攻撃を弱める働きをする。また武器と同様に攻撃魔法を乗せて敵を叩くなんて用法も有りだ。


 渡す装備を個人別に分けるとこんな感じになる。

 なお自在袋は1つは共用装備用、もう一つは個人装備用のつもり。

 

 ○ サリアちゃん

   サリアちゃんの共用装備はゴーレム関係がメイン。攻撃時に使用する魔法は射線を考える必要が無い空即斬が中心なので、敵の近くにいく事はほぼ考慮していない。


  ● 自在袋1(ショルダーバッグ型・ザックとしても使用可)

   ・ ゴーレム車

     8人まで乗車可能。軽量化の為に屋根や外壁は木製フレームにトロルの裏革を張った形式。重量80480kg

   ・ 牽引用ゴーレム

     ライ君より一回り小さいロバ程度のサイズ。6人乗ったゴーレム車を山道で時速15離30km程度で牽引可能。ゴーレム単独でも2人までなら乗馬可。

   ・ ゴーレム修理用金属セット

   ・ 工具セット

   ・ Tシリーズゴーレム5体

   ・ Tシリーズ用装備(大楯・剣・槍それぞれ5体分)

   ・ 小型天幕(日本の規格では2~3人用サイズのドームテント)


  ● 自在袋2(ポーチ・ベルト取り付け可能)

   ・ 全員共通の個人装備(サイズは各人専用に調整済)

     ・ 冒険用の服 2着

     ・ 革製冒険者用の靴

     ・ 短剣(自衛用)

     ・ 革手袋・雨具セット(フード付きマント、コート、手袋)

     ・ 寝袋(アークトロルの毛を使用)

     ・ 毛皮マット(アークトロルの毛皮)

     ・ ナイフ(料理その他用)

     ・ 個人用食器(コッヘル2、スプーン1)

     ・ ロープ20腕40m

     ・ メモ帳/紙30枚/筆記用具一式


 ○ レウス君

   レウス君の装備は身軽さと運動性能を考えた結果、道無き場所でもルートを作れそうな感じになった。

   火、水、風の属性がレベル4という万能型で攻撃魔法もこの3属性が使用可能。個人装備も癖の無い基本形の装備で揃えている。


  ● 自在袋1(ショルダーバッグ型・ザックとしても使用可)

   ・ 小型天幕

   ・ バイル

   ・ ピッケル

   ・ ザイル20腕40m

   ・ カラビナ30個(うちロック付3)

   ・ テープシュリンゲ20本


  ● 自在袋2(ポーチ・ベルト取り付け可能)

   ・ ショートソード(片手用剣、フミノがおぼろげに覚えていた日本刀の原理で作製したもの)

   ・ 短弓

   ・ 矢100本

   ・ 革鎧

   ・ ほか全員共通の個人装備一式


 ○ カイル君

   火・風属性がレベル5なので、戦闘でも基本的には攻撃魔法を使うだろう。しかし魔法が効かない敵を相手にした場合を考慮し、装備は典型的な攻撃担当の戦士をイメージ。武器も強力なものを用意した。


  ● 自在袋1(ショルダーバッグ型・ザックとしても使用可)

   ・ 大型天幕

   ・ 小型天幕

   ・ 共用大型マット


  ● 自在袋2(ポーチ・ベルト取り付け可能)

   ・ 両手用槍

     (2番目に倒したコボルトキングが持っていたものを修理・改造したもの。最近たまにリディナが使用しているものとほぼ同型)

   ・ 両手剣(日本刀と同様に芯材と刃部分に異なった性質の鋼を使用)

   ・ 投槍12本

   ・ 革鎧

   ・ ほか全員共通の個人装備一式


 ○ レズン君

   持ち魔法は土属性と水属性のレベル4が最高という防御型。

   武器も防護役タンクをイメージしたものになっている。


   共用装備は料理関係。毎週、勉強会の前に昼食の料理を作る会をやっているのだけれど、レズン君はこれによく参加していたから。どうやら作るのも食べるのも興味があるようで、通い続けた結果、調理の腕もかなり上達している。


  ● 自在袋1(ショルダーバッグ型・ザックとしても使用可)

   ・ 鍋置き用五徳 3個

   ・ 大鍋、中鍋、深鍋セット

   ・ まな板

   ・ 包丁 3種類

   ・ おたま、長しゃもじ

   ・ ボウル 3個


  ● 自在袋2(ポーチ・ベルト取り付け可能)

   ・ 両手/片手兼用大盾

   ・ スパイク付突撃盾

   ・ 片手剣

   ・ 革鎧

   ・ ほか全員共通の個人装備一式


 ○ ヒューマ君

   彼の場合は冒険商人志望という事で、自在袋は商材収納用に空き容量を多めにした。

   武装は典型的な軽戦士をイメージしているけれど、彼の魔法属性で最大なのは空属性のレベル5。なので武器は多分使わないだろうと思う。

  ● 自在袋1(ショルダーバッグ型・ザックとしても使用可)

   ・ 小型天幕

   ・ 大型敷布

   (商品になる物を入れられるよう、荷物は少なめ)


  ● 自在袋2(ポーチ・ベルト取り付け可能)

   ・ 片手用盾

   ・ 片手剣

   ・ 革鎧

   ・ ほか全員共通の個人装備一式


 ○ アギラ君

   風属性と水属性がレベル4なので、射線を確保しつつ魔法で攻撃というスタイルを想定した。

   討伐した魔物をできる限り収納する事を考えて、装備点数そのものは少なめ。

   あと6人の中では治療魔法が最も得意だ。教会の農場で育った為、司祭等が治療・回復魔法を使うのを見て覚えたらしい。


  ● 自在袋1(ショルダーバッグ型・ザックとしても使用可)

   ・ 小型天幕

   ・ 応急用担架

   ・ ポーション・薬草類各種

   (討伐した魔物を入れられるよう、荷物は少なめ)

  ● 自在袋2(ポーチ・ベルト取り付け可能)

   ・ 長弓

   ・ 矢100本

   ・ 片手用盾

   ・ 片手用盾(ラウンドシールド)

   ・ 片手剣

   ・ 革鎧

   ・ ほか全員共通の個人装備一式


「何というか、これでもかという装備ですね。戦わずに換金するだけで一財産になると思います」


「まあそうだけれどね。この辺のギルドでは換金しにくい素材ばかりだから、フミノ的にはきっと問題ないんだよね。

 それに装備がしっかりしている方が私達も安心できるから」


 そう、この装備は彼らの為ではなく、私達の安心の為なのだ。

 だからきっと問題無い。


「あとTシリーズの代わりのゴーレム、Pシリーズも作った。当分は私かリディナ、セレスが使うと思うから、Wシリーズと同じ形で同じ性能」


 新しいPシリーズはWシリーズとほぼ同一の設計だ。

 名前はゴールド、ウォーター、ファイアー、ウインド、クラウド。別名はそれぞれアン、サリィ、ノイン、ゼクス、チャン。

 由来はまあ言わないし聞かない方向で。どうせこの世界でわかる人はいないし。

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