第271話 記念品の話し合い
次の勉強会で卒業予定の皆にはそのことを話した。冒険に必要なものは一通りあるから買う必要は無い、という事も念を押しておいた。
さて、それでは卒業記念品? の開発・作製だ。もちろん日常生活の傍らで、サリアちゃんやレウス君に気づかれないようにやる予定。
ただリディナとセレスの2人とは相談した。そうしないとお互いの卒業記念品がかぶる可能性があるから。
「私は寝袋を用意します。素材はフミノさんからいただいていいですか? 軽くて保温性が高そうなものとなると、この辺りではなかなか売っていませんから」
セレスは縫製も得意だ。子供達の服を仕立て直したりなんて事をやったりもしている。
そして素材、ちょうどいいものがある。この辺の冒険者ギルドでは出所を説明出来なくて出せないままになっている代物が大量に。
「トロル系の素材が大量にある。幾らでも使っていい」
「なら毛部分は寝袋に使って、残った強靱な革部分を肩や肘、膝の補強に使った冒険用の服を作ればいいですね」
「サリアは別として男子5人は革鎧にしてもいいと思うよ。トロルの裏革なら軽くて強くてよく曲がるから。高価だから普通の冒険者じゃ買えないけれどね」
トロル素材は高価だ。そもそもトロル、洞窟や
その上分厚い毛皮と強靱な腕力のおかげで無茶苦茶強い。上位種ではないただのトロルだって普通の冒険者ではまず倒せない。
もっともサリアちゃん達はそこそこ強力な攻撃魔法を持っている。だからトロル程度では問題ないだろうけれど。
「ならサリアの冒険用の服も多少革鎧に近づけましょうか。そこそこ動けて防御力もあるセミロングのスカートで、さりげなく各部を革で強化した状態にして」
「確かにそれがいいかな。私達は冒険者ギルドでは浮いていたからね。それらしい格好というのは重要だと思うよ」
浮いていたのは仕方ない。私達のパーティは平服を着た十代の女の子3人だったから。
「天幕とマットはどうしようか? マットはまあ、トロルの毛皮があれば必要充分以上だと思うけれど」
「でも天幕、必要ないんじゃないでしょうか。フミノさん、ゴーレム車も作るつもりですよね。内装を変化させれば寝ることが出来るようにして」
その通りだ。でも実は天幕、作りたいという気持ちがある。日本時代の知識でちょうどいいものがあるのだ。吊り下げ式ドームテントという代物が。
「天幕はあった方が便利だと思うよ。今回は男子女子混合のパーティだから、着替えたりする場所がある方がいいし。それに人数が増えたり作業する場所が欲しかったり、他のパーティと合流なんて事もあるだろうしね。
だから全員が余裕で入って食事が出来る広い天幕と、2~3人が寝ることが出来る程度の天幕、2種類あると便利かな」
よし、それならちょうどいい。
「天幕は新しい構造のものを考えている。丈夫で広くて自立するタイプ。ただ素材の縫製等は私には無理。協力して欲しい」
「どんな構造でしょうか? あまり複雑ですと私の腕では間に合わないかもしれませんけれど」
「大丈夫、構造そのものは簡単」
ここは模型で説明した方がいいだろう。
ほどよく曲がるワイヤーをさっと作って説明。
「そういえばこんな形の日よけ、どこかの海であったよね」
「構造そのものは単純ですし、これなら材料さえあれば私が布部分を作る事が出来ます。ただ強風が吹いた時等、強度は大丈夫でしょうか?」
「骨組みを金属にすれば強度は多分大丈夫。しなる分、風にはむしろ強いらしい」
日本のWeb記事で読んだ記憶がある。
「なら良さそうな布は私が手配しておこうか。カラバーラになくても取り寄せれば大丈夫だよ」
リディナ、どうやら天幕用の布についてのあてがあるようだ。
「フミノが作るのは天幕の骨組み、ゴーレム車、ゴーレム車用のゴーレム、自在袋でいいかな?」
リディナ、そう聞くという事はやっぱり気づいているのだろう。まあリディナとセレスに隠すつもりはないので言ってしまおう。
「武器も作ろうと思っている。護身用の短剣の他、槍や剣、弓と矢も。魔法が通用しない敵の他、万が一の魔力切れの際の事も考えて」
使える手段は多い方がいい。
実は新しく作らなくても、アイテムボックス内に武器はそこそこ在庫がある。上級の魔物が持っていた槍とか剣とか。
例えばリディナが訓練で使っているコボルトキングの槍。あれはなかなか強力だ。リディナ用を除いても在庫は9本あるので、提供してもいいだろう。
大量にあるエルダーコボルトの短剣あたりは溶かして材料にしてもいい。普通の金属材料よりもいい材質だから。
それに金属系の加工で試したい事があったりする。金属に魔法属性を付与する事だ。
魔石を適切な金属に加えると、魔力を帯びやすい特殊金属を作る事が出来る。この前読んだ本にそんな事が書いてあった。
私のアイテムボックス内には未だ換金していない魔石がゴロゴロ転がっている。これだけあれば数十個くらいは実験用に使ってもいいだろう。
使用者がうまく魔法を乗せれば炎を纏う槍とか、冷気を帯びた刀なんて厨な武器だって作れる。魔法攻撃を受けても魔力を散らして被害を防ぐ盾なんてのも可能だ。
そんなのを作れると思うともうワクテカが止まらない。
「それじゃ必要な素材等の手配について話そうか。魔物関係はフミノの手持ちの方がこの辺で購入するよりいい物がありそうだから、それ以外で。
天幕の布の他、カラバーラで手に入りにくい物で発注した方がいいもの、あるかな?」
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