第261話 お客様の訪問
ウーフェイ君側からも
そのままぐっすり眠るつもりだった。しかし眠っている最中も起動している偵察魔法が私を叩き起こした。
このお家に人が近づいてくる。男性が1人。
この人、単独で大丈夫なのだろうか。起きがけの鈍った頭でそう思いつつ、ささっと服を着て髪型を整える。濡れた布で顔を拭いてとりあえず支度はOK。
外は明るい。光の加減と太陽の位置から見て朝9の鐘くらいの時間。鐘を聞いていないし時計も無いので正確な時間はわからないけれど。
さて、その間にも男性は近づいてきている。道のない森の中を歩いてくるので歩みは遅い。しかし危なげない足取りで着実に近づいてくる。
私は気付く。この人は魔法使いだ。足元の草や雑木を熱分解し、踏み固め魔法で固め、更に遭遇しそうになったゴブリンを土属性の岩石落下魔法で倒している。
よく見ると服装も騎士団の服だ。鎧等を着装していないから気付かなかったけれども。
そうなると思い当たる節もある。間違いなく
何せ
偵察魔法で周囲を調べると把握していない怪しい家があった。なら調査するべきだ。
騎士団がそう判断するのは当たり前。
どう説明しよう。そもそも私に大人の男性と一対一で会話が出来るのか。いっそ逃げるか。
いや逃げるのはまずいだろう。状況を説明するしかない。うまく説明できる自信は無いけれども。
勿論指名依頼から逃げてきた事は言わない。けれど
仕方ない。ならばいっそ。私は靴を履いて外に出る。男性の足取りは遅い。だから間に合うだろう。
今使っている2階建てはリビングが2階で、かつリビングの部屋にベッドが作り付け。人を招いて話をするには向かない。
だから、これから話をする為の場所を作る。
木を4本ほど収納し、土を収納して平地を作る。踏み固め魔法や熱魔法でいつものように宅地造成をして、そして収納してあるリビング・作業室用の平屋を出す。
いつもは座卓だけれど、今日はこの国では一般的なテーブルと椅子というスタイルで。ついでにお客様用の飲食物も出せるようにしておこう。
こういう場合でも出すべきなのかは私にはわからない。でもリディナは来客が来るとドリンクとおやつを必ず出す。その真似だ。
ドリンクは冷やした蜜柑葉茶、おやつはチーズケーキでいいだろう。アイテムボックス内でカップや皿に入れておく。
更に顔を合わせてからの会話や動作を何度も頭の中でシミュレートする。自然に言葉が出るなんて私には無理。だから必要と思われる台詞を考えて頭の中にたたき込んでおく必要がある。
そろそろ到着だ。怖いけれど仕方ない。私は平屋の前で彼が到着するのを待つ。
パチパチという雑草を熱分解する音が近づいてきた。
魔法の使い方がなかなか上手い。最小限の範囲だけを綺麗に熱分解させ、その熱で土も乾燥させている。更にさっと踏み固め魔法を使う事で、最小限の魔力で歩きやすい道にしているようだ。
騎士団の魔道士ならこういった場所にも慣れているだろうし、当然なのかもしれないけれど。
年齢は案外若そうだ。ステータスは見ていないけれど外見は20代半ばくらい。階級章みたいなものもあるけれど、私には読み方がわからない。
最後の雑草の壁が熱分解して向こうが見えるようになった。男性は私の姿を見て一礼する。
「失礼致します。第六騎士団シンプローン分遣隊、第一魔法偵察小隊のアルベルトと申します。
現在、シンプローン
割と紳士的な人のようだ。勿論大人の男性だから怖いことは怖い。でもこの態度なら恐怖耐性で充分耐えられるだろう。
「わかりました。私は冒険者のフミノと申します。立って話をするのも何ですから、何もありませんがこちらへどうぞ」
事前に考えた台詞通り口にして頭を下げ、そして平屋へと案内する。シナリオ通りにいかなかったらどうしよう、そう思ったけれどとりあえずはスムーズにテーブルに着くところまで出来た。
お茶とケーキを出して勧めてから、私は話を切り出す。
「シンプローン
彼は頷く。
「どのような魔法で
ですので仰る通りなのでしょう。そう判断致します」
あっさり。彼は正直これでいいのだろうかと思うくらい簡単に、私の言った事を認めてくれた。
勿論騎士団にも魔法使いがいる。
そして偵察魔法持ちなら地中に沈んだ
だから
しかしそうやって
だから思わずこう言ってしまった。
「信じて頂けるのですね」
「ええ」
彼は頷いて、更に続ける。
「私は6年程前、第四騎士団の魔法偵察小隊でグランサ・デトリア地区に新たに出来たという
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