第258話 準備はそこまで必要ない

 リディナの部屋から1階リビングに移動して出かける準備を開始。


 この家は私が居なくても今まで通りの生活が普通に出来る筈だ。

 魔法使いが充実しているから。


 リディナとセレスの他、

  ① サリアちゃんが地属性レベル6、空属性がレベル4

  ② レウス君が火属性・風・水属性がレベル4、空・土属性がレベル3

  ③ イリアちゃんは水属性がレベル4で空属性がレベル3

まで使う事が出来る。


 レベルを見ればわかる通り、サリアちゃんはほぼ私の代役が出来る。地属性だけでなく、偵察魔法で周囲3離6km以内の魔物を見回って空即斬で倒すなんて事まで可能だ。


 流石にサリアちゃんでもアイテムボックス収納は持っていない。しかしゴーレムに縮地を使う事は出来る。

 だから3離6km程度なら60数える間にTシリーズのゴーレムが現場に到着可能。自在袋収納も勿論ゴーレムを使って出来る。


 牧草についてもTシリーズ用の牧草収穫用カッターは開発済み。何度か使っているので問題ない。


 強いて言えばマスコビーの卵集めが難しいかもしれない。アイテムボックススキルがないと自分かゴーレムで採集する必要があるから。

 これだけは何とか皆で頑張って貰うしかない。


 収入は農業だけでも問題無い位に稼いでいる。それでも貯金のほとんどは置いていくつもりだ。実はこれだけでも11人が5年暮らすのに充分以上の額がある。


 食料は共用自在袋に入る程度の量をアイテムボックスから移しておけば問題無いだろう。食材庫や半地下の保冷庫にもそれなりの量を保存しているし、家庭菜園も順調だから。


 建物はまだまだ部屋が余っている状態。増築に次ぐ増築を重ねた結果、住居棟は寝室だけで20室あったりする。つまりまだ半分ちょいしか埋まっていない。


 お風呂というか温泉ハウスもこの人数なら問題は無い。もっと増えても時間を分けて入浴すればいいだけ。

 パイプのメンテナンスは、詰まり取り程度ならセレスの水属性魔法で充分可能。


 偵察魔法で講堂とか体育館とか呼んでいる大きな建物を含め、建物全般を確認してみたが、修理の必要があるような場所は無さそうだ。


 要するにこのまま出て行ってしまっても基本的には問題無い。

 だから準備するのは『やらなくても大丈夫だけれどもやっておいた方がいい』ような細々こまごまとした事柄だけ。


「何か手伝う?」


 だからミメイさんがそう言ってくれたけれど問題無い。


「大丈夫。基本的にアイテムボックスから自在袋に食料等を移す程度」


「私の方も大丈夫よ。フミノが食事を抜かないよう、料理を作るくらいだから」


「わかった。なら戻ってカレンとメレナムに伝える」


 やはりこの情報、カレンさんかメレナムさん経由で来た模様。


 さて、それではアイテムボックスから自在袋に必要なものを移そう。

 食べ物はすぐに食べられるものを除き、自在袋へ移し替え。幸い共用自在袋は400重2,400kgの大型で8割以上空きがある。だから野良オーク肉3匹分なんてのを入れても問題ない。 


 ゴーレムはTシリーズ5体とバーボン君を置いていく。

 本当はライ君サイズの馬ゴーレムを作っておけば良かった。でも今からでは間に合わない。


 一応バーボン君&大型ゴーレム車の組み合わせでも時速7離14km程度は出せる。これでも通常の荷馬車よりは速いから大丈夫だろう。


 なおゴーレム車は大型の方を置いておいて、小型の方を持っていく。お家の全員が乗る機会があるかもしれないから。

 

 お金も勿論移し替えておく。私の分は正銀貨50枚50万円もあれば充分だ。


 アコチェーノエンジュの丸太千本単位は収納したままでいいだろう。あとは私物や金属材料類も基本そのまま。


 ここ2年イオラさんから注文を受けたゴーレムは、年始にローラッテまで直接配送している。代わりに木材や金属を購入して帰ってくる形だ。

 だからこれらの資材は大量にアイテムボックスに入っている。でも私以外は使わないので出す必要はないだろう。


 家はどうしようか。2階建て、最小限サイズ、作業用兼元リビングの平屋があるけれど。

 此処では使わないだろうし、かえって邪魔になる。シンプローン迷宮ダンジョンで何かに使うかもしれないし持っていくとしよう。


 これで荷物の整理と移し替えは完了だ。他に必要そうなのは……そうだ、勉強会の準備だ。


 教師の方はリディナとセレス中心で心配ないだろう。今では教会の人やサリアちゃん達も手伝ってくれるし。


 ただ皆さん、複写魔法は苦手なままだ。これと工作関係はサリアちゃんに引継ぎできていない。


 出る前に魔法の勉強会用のプリントの在庫を目一杯にしておこう。偵察魔法で確認し、どのプリントも専用棚に充分あるように。


 何気にこの作業、結構手間がかかる。魔法を使っても1枚ずつしか複写できないから。


 機械的に複写しながら他に教材が必要かどうかを考える。

 数字をはじめて覚える子供用のおはじきは充分な数がある。かるたやトランプ、UNOもどきといった文字や数字を使う遊び道具も結構作った。だから初学者用は多分問題ないと思う。


 問題は今あるプリントのレベルを越えて勉強したい子供達用。これだけ長い事やっていると週1回の勉強会でもレベル4以上の属性を持つ子が出てくるのだ。


 ただそういう子供は文字の読み書きも算数も出来るようになっている。だからそれ以上は自分で魔法書を読んで勉強して貰う事にしてもいいだろう。


 魔法書はどの属性もそれなりに在庫がある。だから持ち出さないという約束で読んでもらえばいい。駄目な親が本を売ってお金に替えようとする可能性があるから持ち出しは禁止で。


 なら必要なのは今やっているプリントの複写だけかな。でも一応リディナに聞いておこう。


「出る前にやっておいた方がいい事、何かある? 勉強会用のプリントは今、在庫多めになるように作っている」 


「なら他には特に無いかな。それにちゃんと帰ってくるんでしょ。それなら何かあっても帰ってきてからでいいしね」


 そうだ、帰ってくるんだ。だから大丈夫。


 ◇◇◇


 買物から帰って来たセレスにはリディナと私から事情を説明。

 更に皆がそろった夕食の席で、私が今夜からしばらく出かける旨を簡単に説明。

 なお子供達の中では年長のサリアちゃんとイリアちゃんには後でリディナ達がもう少し詳しく説明してくれる予定。


 夕食を食べた後、皆に見送られて私はお家を出発した。

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