第249話 聖堂の移築(2)
それでは移築現場へ向けて出発だ。
場所はうちの敷地を出てすぐ。昼間なら歩いて行っても問題無い場所だ。
しかし今は夜。両側に木々が茂っている真っ暗な中、お家から私達の敷地外へ出るまで
私やリディナ、セレスは暗闇だろうと問題はない。偵察魔法や監視魔法で昼間同様の視界を得る事が出来るから。
しかし今回はサリアちゃんとレウス君がいる。一応2人とも監視魔法をある程度使えるようにはなった。でもまだ常時発動させる事には慣れていない。
それでも2人を連れて行くつもりだ。魔法を使えばどういう事が出来るのかを体験してもらういい機会だから。
それに皆が動けば必ずついてくるおまけもいる。
だから今回は全員ゴーレム車に乗って現場の領役所支所近くまで移動。ライ君の足音やゴーレム車の車輪の音はリディナの風属性魔法で消している。
「こんな夜に出かけるのは初めてで少し怖いです」
「本当は夜は出歩かないというのが原則なんだけれどね。暗くて見えにくいだけじゃ無くて、魔物が出やすくなるなんて事もあるから。
でもこの村周辺は常時フミノが魔法で監視して倒しているから大丈夫だよ。ある程度魔法が使えれば暗くても何処に何があるのかわかるしね」
「僕ももう少しすれば魔法で魔物を倒せるようになるかな」
「そうですね。レウスはあと半年くらいで攻撃魔法も使えるようになるかもしれません。火属性は攻撃魔法が比較的簡単に使えるようになるらしいですから。
ただ無闇に使うと火事を起こしてしまいます。だから充分訓練してからですね」
そんな話をしているうちに現場へ到着。領役所支所の隣の、雑草と雑木が茂っている場所の前でゴーレム車を停め、全員降車。
なおエルマくんは胴輪を装着して引き綱をつけている。エルマくんは走りたいと引っ張るが、飛び出して作業の邪魔になると困るから仕方ない。
昼間のうちに現場に行って、何処まで造成するかの目印となる杭を打ち込んである。改めての測量はいらない。
だからこのまま作業開始だ。
「それじゃ始めようか。サリアとレウスは監視魔法を使って見ていて。実際に見れば魔法をどう使うのか、使うとどれくらい便利なのかがわかると思うから」
「うん」
「わかりました」
リディナは頷いて私の方を見る。
「それじゃまずフミノ、お願い」
よしやるか。私は造成範囲の草や雑木を根っこまで含んで全てアイテムボックスに収納する。
あとは根っこ分減った土をアイテムボックスから出してと。
「えっ!」
レウス君が驚いた声。
「フミノさんがスキルで雑草や雑木を収納したんです。これは魔法ではなくスキルですから真似は出来ません。
次は私が土を平らに均します。これは土属性では割と基本的な、移動魔法と踏み固め魔法です。魔力でどう変わるのか見ていて下さい」
セレスはそう説明した後、魔法を起動。セレスもリディナもここへ来てから畑作業で土属性魔法を鍛えている。このくらいは簡単だ。
10数える位で縦横
「……こんな広いのに、すぐに出来るんですね」
サリアちゃん、今の魔法の動きをしっかり見ていたようだ。
「そうだね。サリアは土属性のレベルが高いからそのうち出来るようになると思うよ。それじゃ雨が降ってもドロドロにならないよう、土属性の土壌改質魔法で上の土を小石に変えるね」
リディナが土壌改質魔法を起動する。地面が小さい粒の揃った小石に変わる。
「表面だけじゃなくて、
「本当だ! 凄い!」
「こんなに広いのに、深くまで……」
2人とも監視魔法で確認出来たようだ。よしよし。
「大丈夫。そのうち2人とも出来るようになるから。特にサリアは土属性が得意な筈だから、今と同じような事なら案外簡単に出来るようになると思うよ。これが出来れば畑の土をちょうどいい具合にするなんてのも簡単だから、頑張ってね」
「わかりました」
「それじゃフミノ、上の舗装と建物をお願い。まずはフミノの土壌改質魔法で今作った小石の上部分を岩に固めるから見ていてね」
私は土壌改質魔法を起動する。岩盤化はまだリディナやセレスは出来ないから私の担当。ただリディナが土を小石にしておいてくれたので、土から変えるよりは大分楽だ。
「平らになった」
「そう。これは土属性がレベル6ないと無理。結構難しい魔法なの。
でも出来ると建物を作ったり直したりも出来るし便利だよ。サリアは出来るようになる可能性が高いと思う」
「頑張ります」
「うん、でも無理しないで大丈夫だからね。それじゃフミノ、建物をお願い」
「わかった」
聖堂を出すだけだ。位置と方向さえ間違わなければ問題無い。聖堂の基礎部分を土壌改質魔法で固定すれば完成だ。
「完成」
「魔法を使えればこんなに簡単に出来るんですね」
「凄い!」
セレスは2人に頷く。
「この聖堂を移動させたのが私達という事は他の人には内緒です。
でもフミノさんのスキルは例外として、それ以外の整地作業、土を平らにしたり石に変えたり、固い岩盤にしたりは魔法を使って出来る。実際に何人もの人が作業するよりもずっと早く簡単に。
そのことは覚えていて下さいね」
「わかった!」
「わかりました」
うんうん、いい反応だ。
さて、それでは確認したくてうずうずしている奴を放してやるか。
エルマくんの胴輪に接続していたロープを外す。奴は猛ダッシュで新しく出来た平らな広場を走って行った。
うーむ、夜中の暗闇では黒犬、本当に見えない。目ではどこに居るか全くわからない。
足音や息づかい、魔力反応でどこに居るかはわかるけれども。
「エルマくんが落ち着いたら帰りましょうか」
「そうですね」
これで移築作業は無事終了だ。明日、セドナ教会や領役所支所に移築が完了した事を報告して、魔法教室の募集をお願いする。
予定では3週間後から開始する予定だ。上手く集まってくれるといいな。
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