第244話 今しか出来ない夕食?
裏庭へとゆっくり歩いて行く。イオラさんの言う通り空いていた。邪魔にならないよう端の方へ2階建てのお家を出す。
このお家を出すのも随分と久しぶり。農場を作ってからは3階建てしか使っていない。移動していた頃も周囲が充分広ければ3階建てのお家を使っていたし。
取り敢えず疲れたから風呂で一休みしよう。このお家にも私が足を伸ばして入れるお風呂があるから。
面倒なので服はそのままアイテムボックスへ。魔法でお湯を入れ、身体を洗わずそのままお湯に浸かる。今日は疲れているから手抜きだ。あとで掃除しておけば問題ない。
うーん、ぬるめのお湯が身体の節々までしみわたる。
温泉ハウスと比べると浴槽は狭いしお湯も温泉ではない。それでもこれはこれで悪くはないなと感じる。両腕で浴槽の横枠部分をひじ掛けみたいに使ってだらんとするのもいい感じ。
ただ静かだなとも感じる。いつもなら風呂に入る時はエルマくんが必ずいるから。
エルマくん、誰が風呂に入る時も必ずついてくる。うちの誰よりも風呂好きだから。
エルマくんだけではない。いつもなら誰か一緒に入っていたりするし、そうでなくとも魔力を感じる範囲に皆がいるのを感じられる。
でも今日は違う。強いて言えばイオラさんが事務所にまだいるけれど、それとはまた違うのだ。
もう一人に戻るのは難しいのだろうな。そんな事を思う。いいか悪いかは別として。単独行動1日目にしてもう皆が恋しくなっている。
それでもあと2日でまた皆のところへ帰れる。それがわかっているから大丈夫だけれど。
さて、今は私1人だ。
だから前々から思ってはいたけれど出来なかった行儀の悪い事をやってみようと思う。
浴槽の幅ぴったりになるように、アイテムボックス内の適当な木材で板を作る。これはテーブル代わりだ。多少動かしてもこの板が落ちないように浴槽の内側の縁にひっかかる出っ張りをつけてと。
この板を浴槽の上、私の前に出したら両手を浴槽から出して、アイテムボックスから出した布で拭く。
ちょうどいいものはないかな? アイテムボックスの中を見てみる。リディナ特製海鮮丼があった。これがいいだろう。
さっき作った板をテーブル代わりにして上に海鮮丼、海鮮丼のタレ、ホースラディッシュすりおろし、麦芽茶、スプーンを並べる。
うむ、悪くない。たまにはこんな行儀の悪い事をするのもいいだろう。
それでは入浴しながら美味しいリディナ特製海鮮丼、いただきます……
◇◇◇
翌朝。
以前と同じようにイオラさんに河原へ案内される。
「シーズンは冬だと前に聞いた。今は夏なのに、冬より在庫が多い気がする」
「前はアコチェーノエンジュの森のうち3割程度しか資源化していなかったけれどね。人が増えたし需要も多いから、今は8割近くまで手を入れているの。人が入れるところはほぼ整備が完了した状態よ。
だからその分間伐材も増えている訳。成長が早いから冬だけ伐採という訳にもいかないしね」
なるほど。それで夏でもこれだけ在庫がある訳か。
「ところで前にも結構買って行ってくれたけれど、どんな風に使えばそれだけ早くなくなるのか、聞いていい?」
ええと……何に使ったかを思い出す。
「山羊小屋を2軒と、3階建てのお家の増築と、あと温泉用の小屋と、牧場の柵と……あと魔物退治にも使った」
「そういえばカレン姉様から聞いたわ。巨大なクラーケンを倒したって」
私は頷く。そうそう、その件だ。
「そこまで使えば無くなるのも仕方ないよね。
右側の山が5本
値段と在庫本数をメモでもくれたのでざっと頭の中で計算する。全部で1,050本、
しかし他のお客さん等は大丈夫なのだろうか。そこが心配だ。
「できれば全部欲しい。でも他のお客さん、大丈夫?」
「大丈夫よ。予約なしでこんな単位で買っていくお客さんは他にいないから。それに明日になればまた20~30本位は出ると思うわ。第3地区の木材を流してくる日だから」
なら心配も遠慮もいらない。
「わかった。なら全部」
「それじゃ収納お願いね。お金は事務所で受け取るから」
そんな訳でいつもの通り全部収納。これだけあれば当分持つだろう。それに本気になれば1日でここへ来ることだって出来る。昨日で実証済みだ。
事務所へ戻ってお金を支払い、当初の目的は達成。でもこの後、鉄や銅も買うからお家につくのは明日かな。でも出来れば早く皆に会いたいな。
「それじゃまたね」
イオラさんに頭を下げて事務所を出る。ではローラッテへ行くとしよう。
ただトンネル経由の道は人が多い。この道で縮地+を使うと突然現れてすぐ消えるなんて姿が目撃されてしまう可能性がある。
ならば山越えルートかな。サンデロント回りは遠すぎるし。ライ君に乗って縮地+をかけつつ行けば問題無い。
昨日はライ君で飛ばしすぎたから筋肉痛になった。でも全速力でなければそこまで疲れる事もないだろう。
私はライ君を出して、そしてまたがる。
それでは出発だ。ライ君を小走りさせつつ私は縮地+を起動した。
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