第167話 思わぬ攻撃
ゆっくり休んで、そして次の日。
取り敢えず
「今日はフミノにライ君と魔物の回収をお願いしていい? 魔物を倒すのは私とセレスでやるから」
おっとリディナ、昨日と違う指示だ。
「何か作戦があるんですか」
「作戦という程でもないけれどね。フミノに昨日描いて貰った地図があるでしょ。あれを見ると今日行く洞窟は細いわき道も太い分岐も右方向しかないよね。
だから左寄りをゆっくり走って貰えば、ゴーレムを使わなくても私とセレスで対処できると思うんだ。前の扉を開けたところに私が乗って、後ろの扉の所にセレスが乗って。
真横だけは攻撃しにくいけれど、その辺はゴーレム車の位置を調節して貰って対処するという事で。最悪の場合はフミノにお願いする事になるけれど。
あとは昨日と違って出来るだけゆっくり動こうと思う。そうすれば魔物が寄ってきて、その分倒せるよね。
最初はわき道を過ぎるところまで速めに行って、あとは近くのわき道から魔物が出切るまで止まるくらいのつもりで」
なるほど、妥当な作戦だ。
「わかった」
「わかりました」
そんな訳で今回は前後の扉を開放で固定し、それぞれリディナとセレスが座った状態で移動開始。
「昨日より魔物が少ないね」
確かにそう感じる。私の偵察魔法で感知できる範囲全てからでもそうだ。
「元々こっちの洞窟の方が少な目だからでしょうか。昨日倒した分が減っているのでしょうか」
「両方じゃないかな」
いない訳では無い。前からも避難口と書いてある細いわき道からもコボルトが出てきている。
ただ数は昨日より少ない。こんな会話を出来る程度の余裕がある。
「昨日より疲れないですね」
「数が少ないせいかな、ゴーレムを一緒に操縦しないせいかな、両方かも。
ちょっとお腹空いてきたかな。フミノごめん、片手でたべられそうなテイクアウトお願いしていい?」
まだ朝食から2時間も経っていない。ただ攻撃魔法を使いまくっているから、そのせいかな。それに余裕があるのはいい事だ。
危険そうな魔物は今のところいないのを確認し、
前からだけでない。後ろの細いわき道からもコボルトがちょこちょこと出てくる。ただリディナもセレスもすぐに魔法で倒してしまうから危機感をまるで感じない。
私は今のところ回収専門。一応ゴーレム車もゆっくりと動かしてはいるけれど。
昨日の3倍くらいの時間をかけ、やっと太い洞窟との分岐点まで来た。やはり向こうは魔物が多そうだ。こちらへ向かっている魔物もそこそこ確認できる。
「ここで少し止まってやってくる魔物を倒しておこうか」
「わかった」
「あとある程度後ろからの魔物がいなくなったらセレス、横に移動して貰っていい? 多分この洞窟からいっぱい出てくるから分担して欲しいかな」
「わかりました」
「なら後ろは私が相手する」
「ありがとう、フミノ」
RPGだったらレベル上げに最高な状態だ。一撃で倒せる雑魚が危機感を感じない程度に多発する状態。
いやレベル差がありそうだから経験値はあまり貰えないかな、雑魚すぎて。
そう思った時だった。嫌な予感がした。
「ごめん!」
とっさに私はライ君を走らせる。何かが見えた訳では無い。それでも危険を感じたから反射反応的に。
急な移動だが車内移動中のセレスも前にいたリディナも何とか耐えた。そしてその直後。
ドン! ボワッ!
ゴーレム車がさっきまでいた位置を爆炎が包む。
「何! 今の!」
「わからない」
攻撃は分岐の奥、偵察魔法で見える範囲より向こうからだ。分岐はまっすぐではない。つまりある程度は曲げたり出来る攻撃の模様。
「逃げる。後方警戒お願い。危険を感じたらすぐ
「わかりました」
どんな敵かすらわからない。だから今は安全第一。
火属性は水属性に弱く相対した場合2レベルほど弱体化するから。
今のところ追撃はない。だが危険個所がひとつ、次の分岐だ。これも同じ場所に繋がっている筈。まるで道路の出口と入口の関係のように。
「次の分岐に注意。出来るだけ早く駆け抜ける」
前方の魔物に対し空即斬を最大範囲で起動。魔力消費が激しいが安全にはかえられない。ライ君を可能な最大速度で走らせ、更に縮地も併用。
偵察魔法で見える範囲には危険そうな魔物は感じられない。しかしさっきもそうだった。ただ直感的に危険を感じただけだ。
今回は大丈夫だろうか。そう思いつつ次の分岐の前を走り抜ける。やばい! この速度でも攻撃してきた!
「セレス!」
「
私の知らない強力な魔法防護壁が展開される。私はそれを信じてただ前へ急ぐことだけを考える。更に空即斬を放って前方の敵を掃討、縮地を連続起動し、ライ君を最短最速ルートで走らせる。
ふっと後方の圧力が消えた気がした。それでも気は抜かない。怖くて抜けない。
縮地を連続使用して反対側の入口付近に到着。昨日入った場所と同様、坑口部から土が崩れて侵入してきている。ここからはゴーレム車は使えない。
どうするか。戻るという選択肢はない。圧力は感じないしもう大丈夫だとは思うけれど。
一度ここから出て、どうするか考えるのが正しいだろう。そう思って私は2人に告げる。
「降りて行こう。もう大丈夫だと思うけれど」
「そうだね」
「ええ」
降りてライ君やゴーレム車を収納し、そして外へ。
完全に外へ出てやっと気分が落ち着いた。ただ逃走中に倒した魔物の死骸や魔石を回収するのはやめておく。あの攻撃をしてきた魔物を刺激したくないから、出来るだけ何もしない方向で。
「なんだったのでしょうか、今の」
「わからない。偵察魔法では見えなかった」
攻撃魔法を放って来る敵ははじめてだ。
「いったん街に行こうか。こっちだとラクーラだね。冒険者ギルドであの魔物について報告して、ついでに情報が無いか聞いてみて。それでだめなら図書館で調べて。そうすれば弱点や倒し方がわかるかもしれないから」
確かにリディナの言う通りだ。
「そうですね」
「わかった」
私も頷く。
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