第138話 土木工事は得意です
この図面、ほとんどの部分はわかりやすい場所を直線で結んで区画に分けている。しかし一部に真っすぐに引けていない線を発見。何故だろう。
「この湾曲した部分はどういう意味でしょうか」
「ここから北側は坂になっているのです。
ある程度なだらかなら平らに均します。しかしここの状態ですと平らにするにはかなりの量の土を移動させなければなりません。
ですので坂が緩やかな場所で止めてあるのです」
なるほど。
「坂をそのまま耕す訳にはいかないのでしょうか」
「開拓してから数年はそれでも大丈夫です。しかし徐々に耕作できる土が移動して畑としての使用ができなくなります。そのまま放置するとそこから土砂崩れ等が起きたりもします。
ですので畑にする場合は平坦でなければなりません」
そう言えばローラッテはかつて開発し過ぎて山が荒れたと聞いた。あれはそういう事だった訳か。
しかし私は容量ほぼ無制限のアイテムボックス魔法を持っている。そして土属性魔法という便利なものも存在する。
「それなら、もし平らにする事が出来ればこの先も畑に区画して良いという事なのでしょうか。無論山側との境界は崖なり急坂になりますが、そこは土留めなりなんなりするとして」
「ええ。崖の土留めそのものは難しくありません。1対2斜面程度の傾きならば土魔法で1枚岩にしてしまえばいいですから」
ヴィラル司祭もミメイさんと同程度以上の土属性魔法を使える模様。根を掘り起こしたり埴輪型ゴーレムを量産していた位だから当然だろう。
ちなみに1対2斜面とは1腕横方向に進むと2腕上下方向へ上がり下がりする角度だ。アコチェーノで土壁作業をする前に百科事典を読んで覚えた。
ならば私のアイテムボックスで土を削り取ってしまえばいい。幾らでも平らな場所を作ることが出来る。
その際、収納する土は表面ではなくやや深い部分にして、表層を下方向へ落とす方がいいかな。表層土の方が栄養も豊富だろうし生物も多いだろうから。
「ならばこの区画のこの部分も真っすぐにしてしまいましょう。そうすれば他の区画と面積が同一になります。その方が輪作をするにも便利でしょうから」
「そんな事が出来るのですか」
「ええ、問題ありません」
ふっふっふっ。これがアイテムボックススキル極の威力だ。ついでだからもう少しサービスをしておこう。
「あとここの線は水路ですか」
「ええ。おそらくこの線にそって深さ
よし、これも掘ってしまおう。あとついでに図面上のこれも確認。
「これは道路で、こっちは建物用地でしょうか」
「ええその通りです。ここには物置小屋を追加で建てる事になっています」
よし、これで図面は把握した。なら出来る事は全てやってしまう方針で。
さて、イーノック君は3人目との話をつけた模様だ。受容体が銀製なのに結構動きがいい。バーボン君と違って重いものを牽引する必要がないからだろう。
ならこれはこれで使えるかもしれない。後で自分用を作ってみようかな。
「同僚3名との話が終わりました。それでは申し訳ありませんが、お願いして宜しいでしょうか」
「わかりました」
よし、それでは遠慮なく。
図面に無かった土地完全平坦化。偵察魔法で厳密に測定して、深さ
ドン! 地震が起こった。当然だ。大規模に土が動いたのだから。
「今のは貴方ですか」
「ええ」
問題ない。なら次の作業。
次は緩衝地帯部分。風属性の魔法で動物を追い出した後、土ごと丸々収納。木や草を残して他は元の場所に戻す。少し地面の高さが低くなってしまった分は、他に収納した土を使う事でカバーだ。
次は畑になる区画の見える木々の処理。微生物を殺さないよう見ながら1本ずつ収納する。これは少しだけ手間がかかる。
それでも見た一瞬後には収納可能。なので普通に土魔法でやるよりはよっぽど早い。1秒に1本は処理できる。
なお収納した跡はそのままでは大穴状態。やはり此処は埋めておくべきだろう。この処理も1箇所につき1秒程度あれば充分。
よし、畑部分は終わった。残りの草本類については火属性の魔法持ちに燃やして貰えばいい。
道路部分にとりかかる。これは緩衝地帯と同じように動物を追い出した後土ごと収納、そして土だけ戻してやればいい。高さが低くなった分は土の他にストックの砂利等を加えておこう。
堀部分は一番簡単。収納してやるだけ。
よし、これで図面に描かれているうち、私が出来る事はほぼ終了。後はそれぞれの魔法のエキスパートに任せればいい。
魔力はちょうど半分くらい減った。まあこんなものだろう。問題無い。
「私が出来るのはここまでです。畑部分の草木を焼く事と耕す事、道の舗装、堀の護岸処理と山側に出来た土の斜面の法面加工はお願いいたします。
また土を動かす作業で不備等があったら修正できますので教えて頂ければ」
そこまで言って、そして思い出す。
「あと樹木や草類を大量に収納してしまいましたけれど、これはどうしましょうか。積んで肥料にするならそこに出しますし、邪魔なら私がそのまま処分します」
そう告げて確認すべくヴィラル司祭の方を見る。
あれ? ヴィラル司祭が固まっている。何かあったのだろうか。ひょっとして身体の方に異常が出たのだろうか。
「大丈夫ですか。ひょっとして昨日の治療で何か問題がありましたでしょうか」
「え、いえ、そういう事ではありません。ご心配なく」
なら良かった。でもそれなら何故固まっていたのだろう。
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