第132話 開拓村内臨時拠点
朝食の片づけが終わった。
外に出てゴーレム車を収納し、そして3人で聖堂へ。
昨日も見た埴輪似のゴーレムが待っていた。
「お待ちしていました。それでは行きましょうか」
「こちらの聖堂の管理や他のお仕事は大丈夫でしょうか」
今回はリディナではなく、私が主に質問する形だ。この話を司祭に持って行ったのは私だし、此処でなら、またはヴィラル司祭相手なら私も普通に会話できるから。
「ええ。開拓には別のゴーレムを行かせております。それにこちらにはまた別のゴーレムがおりますので」
奥から全く同じデザインの埴輪ゴーレムが出て来た。何体あって何体動かせるのだろう、ヴィラル司祭は。
もっとも私も偵察魔法の視点2個とバーボン君を自由に動かせる。同じ事なのかもしれない。
しかしゴーレムの数の方は気になる。そんなに簡単に作れる代物なのだろうかという意味で。
埴輪ゴーレムは床や石畳の場所は滑るように、段差があるような場所は跳ねるような感じで動いていく。
「その動き方でゴーレムは大丈夫なのでしょうか」
「このゴーレムなら土属性の魔法で修理できます。それでも屋外作業で酷使すると壊れたりもしますので、足りなくなると土属性の魔法でまとめて作っています」
ゴーレムをまとめて作るか。
またまた気になったので聞いてしまう。
「そんなに簡単に作れるものなんですか」
「ええ、この程度なら魔法で量産出来ますから。ただ手足が動かないので作業はできませんけれどね。ですから魔法を使って開拓をするか、聖堂で受付をするかくらいしか出来ません」
それを1人でこなすだけでも充分だと思う。というか普通の人よりよっぽど働いているだろう。
ゴーレムは道路から見て聖堂の奥側と村壁の間の場所へと案内する。
「他の者と話した結果、ここが良いのではないかと。日当たりもいいですし馬車置き場の石畳経由で道にも出る事が出来ます。
唯一の欠点は共同水路から離れている点です。この辺は地下水脈もかなり深いので井戸を掘るにも適していません。
ですが昨日タチアナさん達と面談した結果、貴方方はおそらく水属性の魔法を使えるだろうと判断しました。ですから問題はないでしょう」
まさにその通りだ。2人にも聞いてみよう。
「私も此処でいいと思う。どう?」
「私もいいと思います」
「そうだね。あまり他の人の目につかないところもいいし」
こっちの意見も一致。ならこれで決定だ。
いつもはリディナが音頭をとるところ。だが今回は私が応対したので私が言うべきだろう。
「ありがとうございました。それではこちらの場所をお借りいたします」
そう言うとともに3人で頭を下げる。
「わかりました。それでは私はこれで失礼いたします」
埴輪が石畳の上を滑るように去って行った。ちょっと異様な風景だ。既に若干慣れつつあるけれども。
さて、家を出そう。
雑草が生えている部分を収納を使って丸々整地。汚水処理用の穴をあけた後3階建ての家を出す。
よし、これで今日から風呂も使える。この辺がゴーレム車や一番小さい小屋とそれ以外の大きな違いだ。
この国で毎日風呂に入るなんてのは王侯貴族や大商人くらい。
しかし私は一日の終わりには絶対風呂に入りたいタイプ。
別に元日本人だからという訳では無い。洞窟拠点の頃からの習慣だ。
リディナが私とセレスの方を見る。
「さて、家も出したし、私は周囲の魔物討伐をしてこようかな。2人はどうする?」
「私も一緒に行きます」
確かにそれも大事な仕事だなと思う。周囲の農場に魔物が出たら危険だし。
此処は魔法が使える修道士がいる。だからある程度は大丈夫だろう。しかし魔物はいないにこしたことはない。
しかし私はやりたい事がある。
リディナも偵察魔法を使えるから索敵には困らない。そしてリディナとセレス両方とも攻撃魔法を使える。
私が出向く必要はないだろう。
「私はここで作業する」
「わかった。それじゃ行ってくるね。夕方位までには戻ってくるから」
リディナとセレスは門の方へ。
さて、私は早速やりたい事に励むとしよう。
やりたい事は幾つかある。此処の開拓の手伝いとゴーレム製作だ。なおゴーレムは私用ではなくヴィラル司祭用。
取り敢えずはゴーレム製作の方から行こう。埴輪型ゴーレムでは手足が動かず不便だろうから。
私はゴーレムを完全に作る事は出来ない。ゴーレムをゴーレムとして認識させ起動する魔法を知らないからだ。
実のところそのような魔法があるかどうかすらはっきりしない。ゴーレム研究書やバーボン君の構造から、そういう魔法が存在するだろうという推論をしただけだ。
しかし構造そのものは既にわかっている。だから製作そのものは問題ない筈だ。
起動するようにするのはヴィラル司祭なら出来るだろう。何せ埴輪型ゴーレムなんてものを自作して使っている位だから。
さて、それでは作ろう。
材料は黄銅と木と、あと銀を少し。
本当は黄銅より鉄の方が頑丈だし軽い。しかし鉄は錆びる。そしてプロでなければ修理が難しい。
このゴーレムは私が此処を去った後でも補修できるようにしたい。そう考えると加工しやすい木材と入手性が良く錆びない黄銅で作るのがベターだろう。
フレームそのものは木製で、傷んだら同じ大きさの板材や角材へ簡単に交換できるような構造で。
関節部分は黄銅で、ある程度放っておいても調整だけで長期間使えるように。
大きさは私基準。見本がある方が製作しやすい。
それではまずは足部分から作ろうか。黄銅のインゴットを出す。
私の足がこれくらいだから、膝部分のジョイントは……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます