第106話 そして冒険者ギルドへ
セレスに魔法を教えるのは、リディナやミメイさんに教えた時より少しだけ手間がかかった。
ただこれはセレスの頭が悪いという事ではない。むしろセレスの方が普通なのだろう。年齢も若いというか幼いし。
リディナやミメイさんの出来が良すぎただけだ、きっと。
それでも3時間程度で無事全属性のレベル1の魔法を教える事が出来た。私が優秀だからではない。大事典の記載がわかりやすいからだ。
「すごい、水が出ます。本当に私でも出来るんですね」
「本当はもっと出来る。今日はここまでだけれども」
ふと思う。誰でも魔法を使える事は公になった。しかし新規に魔法をおぼえようという人はどうやるのだろうか。
冒険者ギルドで講習でもやっているのだろうか。それとも何か別の方法があるのだろうか。
この国は識字率が2割程度。教本を作っても読めない人の方が多い。その辺はどうなっているのだろう。
ステータスだっで文字が読めなければどう説明していいかわからない。だからセレスにはまだ教えられないでいる。
明日、街へ行ったついでに調べてみよう。
どうせ冒険者ギルドに行くし図書館にも行く。だからある程度はこの疑問の答えもわかるかもしれない。
「フミノはお風呂まだだからそろそろ入ってきたら。
あとセレス、私は寝るけれどもし読みたい本があったら部屋に持って行っていいからね。もう灯火魔法は問題ないよね」
「大丈夫です。でもそれならフミノさんが私を教える時に見ていた本、あれをお借りしていいですか?」
あれは日本語で書いてあるから読めないだろう。そう思ってすぐに気付く。セレスは文字が読めない。だから日本語もスティヴァレ語も同じだと。
「勿論文字は読めないですけれど、図も多いですし、薬草や魔獣の絵も多いので見ておけば少しは役に立つかなと……駄目ですか」
確かにそうだな。
「問題ない」
これは神様から貰った本だ。しかし他の人に読ませてはいけないとは言っていなかった筈。
だからアイテムボックスから出してセレスに渡す。
「ありがとうございます」
「薬草も毒草も載っている。だから注意」
「わかりました」
さて、それでは私は風呂へ入ってくるとしよう。
なお私の風呂時間は小遣い稼ぎの時間でもある。
実はセレスを教えながらこの家に近づいてきたスライムを5匹倒していたりもする。しかしスライムは安い。3人になったしこれでは足りない。
明日は冒険者ギルドに行くのだ。昼寝をしたからまだまだ眠くない。ここは長風呂を楽しみながら狩りまくるべきだろう。
本気でやってどれくらい稼げるかな。楽しみだ。
◇◇◇
若干の寝不足状態を回復魔法で誤魔化してゴーレム車を操縦する。
寝不足になった理由は簡単、スライム討伐に熱中してしまったせいだ。
大きな街の近くだから元々
スライム発生にはある程度の光が必要だと本には書いてあった。しかし実際には夜でも大量に出てくる模様だ。とりあえず私としては大量に狩れる方が小遣い稼ぎ的に助かる。
そんな訳で狩って狩って狩りまくって、風呂から出て寝室へ行き横になった後も狩りまくって。ふと気付いたら空が白みかけていた。慌てて自分に短時間睡眠魔法をかけたけれど時遅しという奴だ。
なおスライムやゴブリンだけではなく大物も狩っている。クラーケンと呼ばれるタコの魔物だ。
海側に強めの魔物反応があったので偵察魔法の視点を近づけてみた。でっかいタコだった。
足の先まで含めると
ちょうどいいので殺らせて貰った。スライム退治用の槍、なかなか便利だ。動きが遅い敵なら重力だけで倒せる。一撃では倒せなかったので穴だらけになったけれども。
本当は試食してみたかった。しかしやめた。毒があったらまずいから。
冒険者ギルドに出したらいくらくらいになるだろう。今から楽しみだ。
バーボン君を操縦して街へと入る。雨だから人が少ない。ゴーレム車の運転が楽でいい。
「冒険者ギルド、どっち?」
「もう少し先、大きい交差点があるから左に曲がって」
リディナは既に場所を把握している模様。そう言えば昨日審判庁で冒険者ギルドの場所を聞いていた気もする。私は意識が逃亡寸前だったからおぼえていないけれど。
冒険者ギルドの看板を発見。ついでに中も偵察魔法で確認、ガラガラだ。
雨の日は討伐系や運送系の冒険者は普通働かない。濡れる上、スライムがやたら発生して面倒で移動に手間取るから。
私達みたいに濡れずに移動可能で、かつ遠隔でスライムを倒しまくれる装備があれば話は別だけれど。
冒険者ギルドの真ん前にゴーレム車をつける。降りた後バーボン君ごとゴーレム車を収納してギルドの中へ。
「おはようございます。どのような御用でしょうか」
「冒険者登録と、魔物討伐をしてきたので引き渡しをお願いします」
「わかりました。どうぞこちらへ」
正面の広いカウンターへ案内される。
「それではまず登録から致しましょう。何方でしょうか」
「私です」
「それではこの用紙に必要事項を書いてください。代筆でも構いません。何でしたら私が代筆致します」
「ありがとうございます。私が代筆するから大丈夫です」
人間相手は全てリディナにお任せだ。
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