第10章 私はわかった ~フェルマ伯爵領・4~
第68話 間伐材は安かった
丸太を数えたり構造を再確認したり、その辺をメモしたりしているうちに9半の鐘が鳴った。出発の時刻だ。
3人で家を出た後、家ごとアイテムボックスや自在袋に収納してから歩き出す。アコチェーノへ来た初日のように疲れ切っていなければ冒険者ギルドはすぐそこだ。
リディナに先に行ってもらって、私とミメイさんは少し離れて待つ。
「大丈夫だよ。人は少ないから」
リディナが入口からこっちへ顔を出してそう伝えてくれたので安心して中へ入り、そのまままっすぐカウンターへ。
「まずは魔石の方をお預かりしますね。報告書の方は少しお待ちください」
最初の時と同じ受付嬢さんにゴブリンの魔石3個を渡す。流石にこの数だと処理は早い。目の前ですぐ計算書を作って褒賞金を出してくれた。
「報告書の方は説明も欲しいという事なので少しお待ちください」
そう言って受付嬢さんは立ち上がり、事務所の方へ消える。
説明か。大勢の前とか知らない人の前とかだとまずいよな。その辺大丈夫なのだろうか。
そんな事を考えたがすぐに杞憂だとわかった。やってきたのはカレンさんだったから。
「それでは上で話を聞きますから。ここまでミメイと一緒に来てくれてありがとうございます。
この後ミメイには調査の依頼を入れます。帰りは夕方になると思います。その時は私が送っていきますから」
どうやら今日はここでミメイさんとお別れのようだ。
「なら今日はカレンさんはこちらで泊まられるんですか」
「今日はその予定です。このギルドに部屋を借りています」
「もしお時間があるなら今日はこちらで一緒に夕食を食べませんか」
おっとリディナ、いきなりカレンさんを誘った。
「それは申し訳ありません。ミメイもお世話になっているようですし」
「2人も3人も4人も作る手間は変わりませんから。それに少しお話もしたいですし」
「いいのでしょうか、本当に?」
今度はカレンさん、私の方を見る。でもカレンさんなら問題ない。だから私は頷く。
「ありがとうございます。それではどれくらいの時間に行けばいいでしょうか」
「カレンさんはどれくらいでお仕事が終わりますか」
「今日はミメイと一緒ですし、夕方5の鐘くらいで終わりにするつもりです」
「でしたらそのくらいで」
「わかりました。それではお言葉に甘えさせていただきます」
よし、今日はカレンさんもくる訳か。なら準備をしないとな。そう言いたいところだが私が準備するようなものもやるべき事も特にない。せいぜい料理を作るリディナにあわせて早めに帰る事くらいだろう。
「それではまた後ほど」
「よろしくお願いします」
そんな感じで冒険者ギルドを出る。
「ごめんね。フミノに断りなしでカレンさんを誘ってしまって」
「問題ない」
カレンさんなら私も大丈夫。リディナもそれをわかっているから誘ったのだろうし。
それに話をしたい事があるのも確かだろう。トンネルの件とか。実際は私ではなくリディナが話してくれると思うけれど。
更に言うとカレンさんが来てくれればミメイさん依頼のカレンさんの魔法属性診断もその時に出来る。診断する事を本人に了解とれるから、ギルドみたいな場所よりうちの家でやった方がいい。
その辺を全部含めて問題ない。そういう返答だ。
「さて、次はどうする?」
「買い物は大丈夫?」
「そうね。大丈夫だけれど、野菜くらいは買っておこうかな。フミノは何か買いたいものってある?」
そうだ、そう言えば買いたいと思ったものがあった。
「木、買いたい」
「木?」
確かにこれだけではわからないよな。説明が必要だ。
「森で収納した木はまっすぐではないし太さもバラバラ。利用するのに手間がかかる。だから此処で真っすぐで太さの揃った木材を買いたい」
「わかった。ならまたあの森林
多分そうだろう。だから私は頷く。
「それじゃまずは市場に行って、その後は森林
私は頷く。買ってきた木材を試してみたい。それに読んでいない本もまだあるし。
◇◇◇
間伐材は思った以上に安かった。
枝打ちもされていて真っすぐだし太さもそれなりに揃っている。
それなのに長さ
ざっと手持ちの金額から買える本数を計算してしまう。うん、あの小屋は確か丸太80本で作っていた。だから2軒分160本でも
ならば多少広い場所に行った時用にリビング専用の小屋なんて作るのもいいかもしれない。トイレや風呂は今までのを使う事にして。
他にミメイさんのような客人が来た時用に別棟なんて作ってもいい。ああ夢が広がる……
しかしここで私は自分を抑える。今はあくまで丸太を買う事だけにしておこうと。
取り敢えず今日は丸太を買うだけ。失敗分も含めて小屋1軒80本を2つ分で160本。ならきりのいい200本にしてしまおう。これでも
ならもう一声、300本で
更に蝶番やドアノブ部分、釘や丸棒等の金属部品も購入。自作するとかなり面倒な事がわかっているので買える時に買った方がいい。これがしめて
気分よく買って帰る途中、リディナに言われてしまった。
「そんなに丸太を買って大丈夫なの?」
「収納的には問題ない。安くて嬉しい」
本なら10冊買えない額だ。なのに木材なら山のように買える。これは嬉しい。顔が思い切りにやけてしまう。
「どれだけ入るのよ、フミノの収納は」
「私にも不明」
無事河原に到着して家を出す。
「それじゃまずはお昼を食べようか」
私は頷く。
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