第20話 孤独の雨
そんなことを考えているうちに、それなりに時間が経ったのだろう。カーテンを片手でちょいとめくると、少しだけ空が白んでいるのが見えた。
私は、ベッドから跳ねるように身体を起こし、そこから崩れ落ちるように床に降りた。なぜだか、こうしてはいられないと思ったのだ。体中で感じた床の硬さに、私はベッドに戻りたくなったが、とにかく腕や足を動かすことだけに集中して、私を捕えようとする布団から逃げるように、身体をもがき進ませた。
しばらくすると、私は家のドアの前に着いていた。ここまで家族の誰にも出くわすことはなかったみたいだ。
私は冷たいドアに張り付いた。心臓の激しい鼓動が、体中に響き渡り、私を苦しめる。心臓よ、私の代わりにこのドアを押しておくれ……。だめだ、無反応。私の心臓は内弁慶だ。仕方がない。
私は意を決して、そのままドアを押し開けた。私の身体は、外気に放り出された。
不思議と今まで気づかなかったが、外は雨が降っていた。大雨でもなければ小雨でもない、サーサーという心地よい雨。私はくつもはかずに、びしょびしょになっている道路に飛び出し、全身でこれを受け止めた。空から無数の水滴が、私目掛けて降り注ぐ。
雨は私の存在を際立たせ、私がここに独りでいるということに気づかせてくれる。私は、しばらくここに居たいと思った。この世界はなんだか安心する。
けれど、その一方で、違和感も感じていた。空気が、真夏にしてはひんやりしすぎているし、空は、思ったよりも暗い。私はそのことに一抹の不安を覚えたが、そんなものは、この雨が微塵も残さずに流してくれた。
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