昔出会った魔女の話

 今日は、とある【魔女】のお話をしよう。


 僕は小学生の頃に、1人の【魔女】に出逢った。

 小学生の頃に【魔女】に出逢う人間は多いと思う。特に女の子なんかは、憧る人も多いんじゃないかな。

 男子でも、【魔法使い】や【陰陽師】なんかの真似事をして遊んだりしていたよ。

 わかっているさ…君の言いたいことぐらい。【魔法使い】や【魔女】なんて架空の存在だって言いたいんだろう?

 否定しておきたいところだけど、僕が出逢った【魔女】は、近所の図書館で借りた小説の中で出逢ったから難しいな…。

 僕が出逢った【魔女】は、薬草を煎じたり魔法が使える訳ではなかった。

 見た目は極々普通の女の子。それでも、とても魅力的な【魔女】だったんだよ。


 そんな【魔女】が僕に教えてくれたことがあるんだ。


 この地球上には、生命の数だけ世界が存在するらしい。


 あ…その顔は信じてないね?

 そういう表情ばっかりどこで覚えてくるんだろうね…まったく。


 ちょっと目を閉じて…そう。


 僕は椿の背後に移動した。


 さ、目を開けてごらん。

 あぁ、ほら…顔は動かさず前だけを見てごらん。どんな景色だい?


『誰もいない書斎です』


 うん。正解。

 椿の目の前に移動して、目線を一度合わせてから頭をなでる。


「僕の視界には椿が居たけど、椿の視界には誰も居ないんだ。…少しは、僕の言いたい事が伝わったかな?」

『観ている景色が違うのは理解できますが、世界が違うというのは…?』

「あんまり難しい話では無いんだ。【世界】の定義なんてものは、人それぞれだよね。【地球】【大陸】【国】【家】…本当に様々だね」

『そういうものなんでしょうか』

「…でもさ、そんなわざわざ大きく括らなくても、いいんじゃないかなって思うんだよね」

『えっと…あの、やはり一度データを強化してもらった方がいいのでしょうか』

「そんなことないよ」


 心配そうに見つめてくる椿の頭を撫でる。

 君にはどうか、ずっとそのままでいて欲しいから。



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