第7話

「ここは……」


 飛ばされたのは、恐らく市民区。目の前には、庭が少しついている二階建ての一軒家。そして、その庭では子供が三人ほど遊んでいた。


「……ジュン!ケン!ヒカリ!」


 そして想像通り、アリスの弟妹たちであった。


「「「お姉ちゃん!?」」」


 三人は息のあったタイミングで、同時にアリスを読んでそのまま視線がスライドして俺を見た。


 あ、これまたなんか既視感。


「「「お、お姉ちゃんが男連れて来たぁぁぁぁ!!!」」」


「こらー!!3人ともー!!」


 ピュー!と何やら効果音が着きそうなスピードで家の中へ駆け込んで行ったアリスの弟たち。そして、その後を追ってアリスも入っていった。


「……なんか見たわね。この光景」


「そうだな。具体的に言うと昨日見たな」


 あと、男連れてきたはやめておけ弟達よ。






「ご迷惑をお掛けしました!」


 あれからアリスが弟たち―――――長男のジュン、次男のケン、次女のヒカリの首根っこを掴んで頭を下げさせていた。三人の頭にはたんこぶが出来ていた。


「「「ごめんなさい……」」」


「いや、別に大丈夫だけど……。コホン、三人ともよろしくな、俺はティルファだ」


「知ってる!お姉ちゃんが送ってきた手紙にいつも書いてある!」


「ねぇねぇ!お兄ちゃんはどうしてお姉ちゃんに惚れたの?」


「お兄ちゃんはお貴族様なのー?」


 三人がわー!という感じで周りに群がってきて質問を投げる。おうちょっと待て。一度に聞くな。


「ごめんな。質問に答えたいのは山々なんだけど、先に済ませておきたい用事があってな。アリス、両親は?」


 ジュン達の頭を撫でながらアリスへ視線を向けると、彼女はゆっくりと首を振った。ん?どういうことだ?


「その、実は家の中には居なかったんですどういうことかと思ったのですが、母はこの時間帯は買い物に、父は仕事です」


「あ、なるほどね」


 そうか。貴族とは違って、一般の人は家で仕事はしないんだったな。


「だからお兄ちゃん!一緒に遊ぼ!」


「私魔法見たい!お兄ちゃん凄い魔法使いさんなんでしょ?」


「俺!空飛びたい!」


「うおおお!!ちょっと待て待て!」


 一度に押しかけてくるな!あと子供めっちゃ元気だな!


 その後は、とりあえずアリスの母親が帰ってくるまでの間、ジュン達の面倒を見ることに。と言っても、子供たちの興味は完全に俺にあるようで、魔法が見たいと凄いねだられた。


 だから軽く魔法を使って遊んでいると、子供たちからは「おお~!」と歓声がでた。


「ねぇねぇお兄ちゃん、俺らも魔法使える?」


「ん?ちょっと待ってな」


 魔法を見て、やってみたくなったのか俺にそう聞いた来た。


 魔法は、遺伝ではなく才能だ。両親が魔法を使えるのに、子供は使えない。その逆もよくあるものだ。


 そして、人によって得意な属性だって違う。例えば、アリスは魔法は使えるが、身体強化しか使えないとか、そんな感じ。


 だから、魔法を使えるという可能性は誰にだってある。まぁ魔力が無いと使えないんだけどな。


「それじゃあ3人とも、目を閉じてみてくれ」


 俺の言うことに素直に従い、目を閉じた三人。本来なら、魔法が使えるかどうかを診断するには神殿に行く必要があるのだが、その程度だったら俺にも出来る。


 そして、今調べるのは体内に魔力があるのかどうか。それだけでいい。何が得意なのかは、個人で試行錯誤しながらやらないと、成長が出来ないのだ。


 腕に魔力を集めて、一人一人順番に頭を触っていく。魔力があるのなら、何かしら反応が帰ってくるのですぐに分かるし、こっちの方が効率がいい。


「……よし、なるほど。いいぞ、目を開けても」


「もう終わったの?」


「あぁ、そして喜べ。三人とも魔法が使える可能性があるぞ」


「ほんと!」


「あぁ」


 ヒカリが嬉しそうに声を上げた。三人の体の中に、しっかりと魔力があるのが確認できた。


「やったぜー!!見ろよケン!ファイアーボール!」


「出てないよ兄ちゃん!」


 俺が使った魔法を真似しようと腕を出したが、勿論まだまだ魔法が出るはずがない。


 だがしかし、なんか凄い微笑ましかった。ここは教師として、三人が火球ファイアーボールを使えるようにしてやるか。


 なに、俺は神童だぜ?初級魔法くらい、ちょちょいのちょいで使わせてやるっての。


「三人とも、ちょっと集まってな」


 こうして俺の、臨時の教師としての時間が始まった。

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