第9話
エリアスが聖剣を一振する。
「俺たちの役割は?」
「お前が突貫。アリスが隙をついて、ルーナが魔法攻撃で俺が支援―――だが」
その時の俺は手を抜いていたからその程度だが、本来ならば攻撃だって支援だって可能である。
しかし、今回はルーナも一時的に神童化しているということもあり、どちらかが片方を担う必要は無い
「今回は神童二人だ。どっちも支援、どっちも攻撃で行けるぞ、勇者」
「任せた!」
「行きます!」
エリアスとアリスが邪神に向かって突撃する。先にはまだ、肉弾戦を仕掛けているティルがいる。ティルは、エリアス達が仕掛けているのを見て、一度邪神から距離をとると、そのまま後退し、俺の隣まで来た。
「すまないご主人様。大罪の権能が聞きづらくなってきてな……助かった」
「いや、腕一本取っただけでも大金星だよ、ティル」
「そうよ。私たちで二本とってあげるから、暫く休んでて」
「感謝する」
ルーナがティルにそう言うと、片膝を着いた状態で座り込んだ。どうやら色々とギリギリだったようだ。
「よし、ルーナ。ティルがこれだけ頑張ってくれたからな、絶対に一本斬り落とすぞ」
「もちろんよティルファ」
俺とルーナは魔力を練り上げ、二人に対して支援魔法をかけていく。掛ける魔法は、『身体能力強化』、『斬れ味上昇』、『自動物理攻撃反射』、『思考加速上昇』。
それが、俺とルーナの二人分。単純計算で二倍の効果がエリアスとアリスの身を包んだ。
「……!これなら―――っ!」
普通なら、最初は強化された肉体に少し慣れないなんてことがあるが、流石は勇者と言うべきか。一瞬で普段と今回のギャップを理解し、一瞬にして邪神に肉薄。
「よぉクソ野郎。殺したかったぜ。とりあえず死ね」
そして、勢いよく聖剣を振り下ろすが、それは邪神の二本の腕で止められる。
「……チッ、これも止められるか」
「あの時の雑種か。あの時に我が軍門に下っていれば、楽に死ねたものを」
「寝言は寝て言っとけやカス……それと、今の俺は一味も二味も違ぇんだよ……っ!!」
「
「
勇者が止めている間に、俺とルーナはそれぞれ魔法を発動。ルーナが空気を極限にまで圧縮し、高速で飛ばすことで肉体ごと吹き飛ばす空気圧縮弾《エア・プリッツ》。
そして俺が、アテナ様の加護のおかげで極限にまでオリジナルに近づいた
空間から飛び出た金色の鎖は、エリアスの剣を掴んでいる腕や、足に絡みつき磔のような格好にさせられる。
「これは……っ!あの忌々しい鎖か!」
「お前も全然本調子じゃねぇんだろ?なら、この鎖はお前はどう足掻いても解けねぇだろ」
全盛期だった頃の邪神の動きを封じ込めた鎖だ。タダの欠片程度じゃオリジナルに近づいた俺の
拘束された邪神に、
あれなら、殺れる。
「アリス!エリアス!今のうちに殺れ!」
「死に晒せぇぇぇぇぇぇ!!!」
「やぁぁぁぁぁぁ!!」
真正面からはエリアスが、後ろからはアリスが剣を邪神へとロックオン。このまま行けば、エリアスの剣は邪神の胸を貫き、アリスは腕を三本纏めて斬るだろう。
「舐めるなよ雑種ぅぅぅぅぅ!!」
「なんだとっ!?」
「キャア!!」
「ハァ!?」
「クッ………」
突如として、邪神の体から発生した威圧に全てが吹き飛ばされた。それと同時に、邪神から漏れ出るオーラも強いものとなっていく。
これは一体………。
『我が愛し子!聞こえる!?』
「っ!?アテナ様!」
突如てして、脳内に響くのはアテナ様の声。思わずキョロキョロと目線を動かしてしまうが、姿はどこにもない。
『疑問には後で答える―――どうやら、私は間に合わなかったようだ』
「アテナ様……?」
『大丈夫。必ず壊すから安心して欲しい……だけど、ちょっとだけ持ち堪えてくれないかなぁ』
はは、とアテナ様の乾いた笑いが聞こえた。
「アテナ様……一体何が……」
『簡単に言えば、生贄だよ。この国にいる全員の生命力を吸い取っているんだよ、邪神は』
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