第6話

 あの後、教室へ行き、メリウス達に授業をしていたのだが、本当にもう教えることが何も無い。


 強いて言うならば、メリウスの面倒を見るくらいだろう。彼女はまだ神童となって日は浅いからか、魔法の威力は一流でも、魔力の扱い方にまだまだムラがある。


 だが、それも彼女が今まで魔法が使えなかったからというのもあるだろう。俺が近くで教え続ける限り、彼女の課題はいずれ乗り越えられる。


 だから、俺は来月卒業するメリウス達に『卒業試験』として、オリジナルの魔法を創ってくることを課題にした。彼女たちならば問題なくこれをクリアしてくれると思っている。


 そして、学校の授業は午前中だけなので、メリウス達とは今日はここでお別れ。生徒を戦争に巻き込む訳にはいかないからな。


 アンナから既に、エリアスはメルジーナ様の家へ向かったと聞いた。だから、俺はアリスとルーナと合流して直ぐにメルジーナ様の所へ転移で移動した。


「なるほど、あのクソ豚は既に手遅れね」


「しかし、人に憑依する悪魔か……」


「あぁ、あれは確かに悪魔の気配だ。まぁ厳密に言えばちょっと違う雰囲気を感じたが……」


「お待たせしました」


 メルジーナ様の部屋に移動すると、そこではエリアス、メルジーナ様、マリナ様、ルドルフ兄さんの四人が何やら話し合っていた。


「あぁ、来たねティルファ。アリスちゃんとルーナちゃんも、ちょっと知恵を貸してほしい」


 ルドルフ兄さんが手招きをするので、とりあえずそちらに近づく。


「義兄さんが知恵を貸してほしいって……それ、私達頼りになるかしら……」


 ルーナの言葉に思わず俺とアリスは頷いてしまう。知識量と知恵で兄さんに勝てる人物は世界を探してもそう居ないだろう。


「いや、僕はティルファ達と違って旅には出てないからね。本で得た知識と実際の物が違うなんてこの世にはざらにある。だから頼むよ」


「……あんまり力になれるかは分からないけど、頑張る」


 ということで、現在四人が話し合っていた内容を教えてもらった。


「ティルファ達は、人に憑依するモンスターか何かは知っているかい?」


「憑依?」


 ルドルフ兄さんに言われたことに急いで脳内の記憶を探る。


「憑依……確か、レイスとかリッチとかアンデッド系の奴らがしてこなかったっけ?」


「ですよね、私もそうだと思いますし、実際に憑依されかけましたからね。ルーナさんが」


「ちょっとそこ!余計なことまで思い出さなくてよろしい!」


 ビシっ!とアリスの頬に指を軽く突き刺す。その際「ふにゅっ」とアリスの口から空気が盛れた。


 あれはそう、確か俺がエリアスのパーティーに加わってから二ヶ月くらい経った時のことだった。


 とある領主の依頼で、呪われた館を調査してくれ!という任務をしていたのだが……そこでまぁなんと出るわ出るわアンデッド系のモンスター。


 そして、なんとびっくりなことにルーナが幽霊が苦手ということも分かった。あの時、なんかやけに震えていたり、どもっていたりしたのはこれが原因だったのかとその時に気づいた。


 叫び、精神が不安定な状態となったルーナはいいカモだったのだろう。なぜなら、憑依は精神が弱かったり、不安定になれば入り込まれやすいから。


 アリス、乗っ取られそうになったルーナの魔法に当たりそうになったもんな。まぁそこは俺が守ったけど。


「あぁ、お前女らしくキャーキャー叫びながら魔法ぶっぱなしてたな」


「女らしくって何よ!しっかりとした女よ私!」


 エリアスもその時のことをちょうど思い出していたのか、そんなことを呟いた。それにルーナが噛み付く。


 ちなみに、どうしてルーナが幽霊が苦手なのかと言うと――――


「あいつら、魔法ぶっぱすれば倒せるけど見た目からして無理。あと触られた時にひんやりとするのすっごい気持ち悪い」


 ――――とのことらしい。


「………コホン、まぁそこまでは僕達も同じ意見だ。本題はここから」


 ギャーギャー言い合うエリアスとルーナを諌めるように、ルドルフ兄さんが咳払いを入れた。


 本題ということなので、俺はルーナの後ろに回り込み、強引に抱き寄せてから片手で口を塞ぐ。そうすると直ぐに静かになった。


「………エリアスくんが言うには、どうやら人に憑依する悪魔がいるらしいんだ」


「人に憑依だと?」


 念の為にここらで悪魔について振り返るが、悪魔とは邪神によって産み出された災厄の生き物だ。


 通常の手段では倒すことは叶わず、ヒヒイロカネで作った封印武器に聖属性を流し込むこむ。そしてその武器で悪魔を弱らせた後に突き刺してやっと封印できる生き物。


 邪神が産み出した悪魔は全部で30体とされており、現在では五体がこの世界で封印されている。


 悪魔については、きちんと纏めてある本が存在しているので、姿形は分からなくても能力はしっかりと記述されている。昔読んだことがあるのでその記憶を頼りにちょっとしっかり思い出してみるが………。


「……いや、いないだろそんなやつ」


 そんな悪魔。どの本にも存在しない。




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『魔王候補として転移させられた俺氏。やっぱ人間がクズ過ぎたのでちょっくら魔王になって滅亡させようと思う』

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