第4話

 メリウスから発せれられる言葉に思わずポカンとしてしまう俺たち。卒業を知らないのか?


「え、メリウス……本当に知らない……?」


「はい……その、あまり思い出したくない過去ですが、色々とゴタゴタしてて禄な説明も受けずにここに来ましたから……」


 あぁ……と納得をした。そういえば、メリウスは追い出されるように故郷を出たからそれも無理はないな……。


「そうだな……簡単に言うならば、この学園で学ぶことは無くなり、去ることだな」


「去る……ということはもう皆さんに会えないということなんですか!?」


「ううーん……」


 なんと説明をしようか思わず首を捻る俺。


「メリウス。卒業は別に悪いことじゃないんだぞ?卒業すれば自由に暮らせるようになるし、学生のうちじゃ出来ないことも出来るようになる」


「じゃあ先生が指輪を渡して結婚してくれないのは私が学生だからなんですか!?」


「まぁそれもある」


 俺がメリウスとまだ結婚していないのはそれが一番の原因である。学生の内に結婚するかしないかは当人――――今回の場合俺とメリウスだが、するとしても色々と気をつけなければいけないことが多いのだ。


 この世界で結婚できる年齢は15歳からと共通で決められている。実際、多くの教育機関が15歳から入学可能となっているので、15歳で結婚する人は少ない。


 学生の内に結婚、若しくは片方が学生の場合は必ず所属している校長へと報告をしなければならない。学生は、学ぶためにその学校へと通っているのだから、恋愛に現を抜かさないように健全なお付き合いをすることーだとか、子供は作らないことーだとか、色々とめんどい。


 俺もそれは例外ではなく、思わずそれを見た時はため息を着いてしまった。こんなん守れるか、と。


 だから俺はまだメリウスと結婚はしていない。指輪は……まぁラミュエールのを買いに行くのと一緒に見繕うとは思っているが。


 そのルールのことをメリウスに話すと、「そ、それ全然先生と触れ合えないじゃないですか!?」と激昂した。本当にそれな。


「だから俺はメリウスとまだ結婚しないんだ……なんで結婚したあとの方が触れ合える機会が少なくなるんだよ。おかしいだろ……」


 誰だよあれ制定したやつ。恨み籠ってるレベルでヤバかったぞ。


「メリウスさん」


 後ろからメアルがメリウスへと声をかける。


「この学園を卒業するということは、とても誇らしいことなのです」


「そうだよね。魔法学園――――それも、ディルクロッドは卒業率が10パーセントっていう頭おかしい数字だから、ここを卒業したってだけで人生かなり勝ち組だよ」


 更に、メリウスは対抗試合でMVP取ってるから引く手は数多だろうな。実際、メリウス宛に卒業したら是非うちに!という勧誘の手紙が多く届いてるし。


 まぁどこにもやる予定はないが。


「あ、勿論卒業は辞退することは出来るぞ。その場合、カレンと同じで四年生スタートということになって、一緒に卒業できるぞ。ちなみに、メアルは今何年生?」


「私もカレンさん達と同じで、四年生に飛び級しましたわ」


「ということで、全員で卒業できる。ぶっちゃけ、俺もそっちがオススメだな」


 まだまだメリウスは神童として目覚めて日は浅いし、神器という新たな力も継承したため、まだまだしっかりと指導していきたい。


「……そうですね。まだ皆さんと一緒にいたいですから、卒業は辞退します」









「お願い……」


 太陽の光さえも届かないどこかの部屋。あかりのみが照らす部屋の中で、少女は床に座り込み何かへ祈るように両手を胸の前で握っている。


 その掌の中で、水色のダイヤモンドが薄く光を放っていた。


「お願い、メルジーナ様……どうか……っ」


 両目から落ちる雫が、宝石に触れて更に光が満ちる。


「どうか、どうか異変に気づいて……メルジーナ様……っ」


 開戦の時は近い。


 一方その頃、謁見の間ではアレシオンの王はとある二人の人物を招待していた。


「何か用か」


「ゆ、勇者様!?」


 その人物の名はエリアス。そう。なんやかんやあり少し丸くなったけど女漁りはやめてない勇者エリアスである。


 王に対しても不遜な態度を辞めないエリアスに、レジーナは焦る。


 エリアスは黎明の塔にて大量の魔物相手に訓練をし、自身のレベルアップを図っていた。ドラゴンがうじゃうじゃ出てきたり、どこかの神とかを名乗る訳の分からん存在に何十回も殺されたりしていた。トレーニングとかいう謎空間のおかげで死んでも生き返ったりする。


 そんな中、突如としてエリオスへと命令。一応、エリアスはアレシオンの民である。その王となれば命令は無視できない。


 しかし、トレーニングを中断されたため機嫌はすこぶる悪い。


「構わん。こいつの態度は今に始まったことではない……さて勇者よ。今回呼び出したのは理由がある」


「とっとと話せクソジジイ。俺は訓練を中断してここにいるんだ」


「そうするかの……。勇者エリアスよ。我等アレシオンの勝利のために、ディルクロッドとの戦争に参加せよ」


「………あ?」

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