第2話
ティルの偏りすぎた知識にツッコミを入れながら一日は終わり、いよいよ帰る時間となった。
転移魔法を使えば一髪だが、せっかく旅行だったんだから魔法で帰るのも味気ないので帰りは飛行船に乗ってディルクロッドまで帰った。
そして、魔法学校の長期休みが終わるまで二週間を切るのだった。
「ティルファ」
「兄さん、ただいま」
「えぇ、おかえり」
家に帰ってきた俺たちを出迎えたのは、ディルソフ家長男であるルドルフ兄さんだった。
「魔神討伐、どうでした?」
「そうだなぁ……手練が多かったっていう理由もあるけど、そんなに大したものじゃなかったよ」
「そうなのですか?」
「うん」
権能無くなればただ攻撃が効きにくいでっかい生物だったし。結局全員無傷の勝利だった。
「そうなのですか。それなら私が出向いても良かったですね……。所でティルファ。1つ、お手合わせしませんか?」
「……いいね。久しぶりにやろっか」
でもちょっとまってて。カレン連れてくる。
二週間が経ち、またもや教師としての仕事が始まった。この二週間、各々が自分の実力を高めようと訓練をしていた。ルーナとアリスはメルジーナ様達の元へ行き訓練。メリウスとカレンは俺が面倒を見て、ラミュエールはマックイーン家に行って回復魔法を教えて貰っていた。
姉さんは何やら事務仕事の方が本当に忙しいらしく、この二週間の間で数える程しか合わなかった。まぁかなり濃い時間を過ごしたけど。
教室へと続く階段――――ではなく、今回は登らずにそのまま廊下を真っ直ぐに歩く。今日は教室に行く前に姉さんに呼び出しを受けているため、現在特例クラスには俺の助手としてこの学校に就任したラミュエールが代わりに教室にいる。
学園長室に辿り着き、ノックをすると中から「はーい!」という声が聞こえたのを確認してから部屋へ入る。
「あ、来たね!いらっしゃい!」
ねぇさんは俺を見ると笑顔を浮かべる。そして、自身が座っているソファの隣をトントンと叩く。
普通はその対面に座るべきではなかろうかと思いながらもねぇさんの隣に座った。別に断る理由はないし、俺もねぇさんの隣に座りたい。
すると、ねぇさんがそれとなく俺の腕に抱きついてきて肩に頭を預けた。
「ごめんね。急に呼び出したりして」
「大丈夫、気にしないでいいよ。それで、用は何?」
「うん、まずはこれを見てほしいんだけど」
どれどれ、と思いながらねぇさんが用意していた紙を手に取ってそれを見る。
内容は、メリウスとカレンに関することだった。
「……なるほど、カレンの進級と、メリウスの卒業について」
「うん。ティルファはこの条件を知っているよね」
「そりゃもちろん。なんせこれで俺は卒業したしな」
前にも説明をしたが、魔法学校は飛び級という制度があり、実力があれば入学規定である15歳よりも早く入学することができるし、四年学ぶよりも早く卒業できる。
飛び級入学はむちゃくちゃ難しい試験問題をクリアするだけで事足りるが、特別進級と特別卒業は内容が違う。
主な内容としては二つある。学園が認める実績があるか、授業のテストで物凄くいい点をとるかである。
後者についてはそのまんまの通りで、筆記試験、実力試験の両方でその学年の平均を大きく上回る必要がある。
例えば筆記試験。魔法学校ではどこもテストの内容は同じで、その範囲は一年の時に習うものから四年の時に習うものまで幅広くあり、それは全生徒共通である。
だから、一年生なのに二年生の範囲をバッチリ解いていたら来月からは三年生。と言った感じとなっている。
実績については一番わかりやすいもので言うなら全世界魔法学園対抗試合か。そこで一定の成績を残したものは学園長―――――ディルクロッドの場合はねぇさんが直接判断する。上位や、競技で優勝をすれば飛び級でき、MVPを取れば卒業と言った感じ。
後は新しい論文を発表したりとか、新しい魔法を開発したり、何か強い魔物を倒したとか。そこら辺が来るが、カレンとメリウスは対抗試合の方を評価された感じか。
「そこに書いてある通り、メリウスちゃんとカレンちゃんは卒業と進級ができるよ。でも、わざとこの進級とかを断る人もいるから、きちんと確認を取っておくこと」
「わかった。しっかり伝えるよ」
「よろしい」
とりあえず、この紙は空間魔法で作った異空間の方に取り込んでおくことにする。
「それじゃあ最後の用になるんだけど……あのね、特例クラス……ううん。この学園に転校生が来るんだ」
「………転校生?」
「うん。この学園始まってから初めてだね」
基本、入学した魔法学園から転校なんてする自体は余程の事がないと起きない。何せ、学園は全寮制だから家の都合でとかそんな心配はないし、設備はどこ一緒である。まぁ立地条件は違うけど。
どこでも魔法使いならば満足以上の設備が揃っているから、転校するなんて考え自体がまず起きない。
「私もびっくりなんだけど……アイセーヌから来るんだよね」
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