第10話
急に全員に見つめられて放心するメリウス。そんな彼女に大罪武器は歩み寄る。
「私が元々異物だからなのかしらないが、お前の中にある力とご主人様の中にある力は非常に敏感に感じ取れる……本当に、ご主人様程の実力がある人物がなぜ気づかなかったか逆に気になるな……」
「先生とおなじ……?」
未だに話を飲み込めていないメリウスは、目を点にしてうわ言のように呟く。
「まぁ、今の実力程度ならば、目覚めるのは当分先だろうが」
「……実力不足なのは私が一番よく分かってますよ」
メリウスはまだ力に覚醒して間もない。そんな彼女に神童の力とずっと付き合ってきた俺を基準にするのは、まだまだ酷だろう。
「心配するな。そなたがこれまで通りに、ご主人様の元で力を磨けば、いずれその力はそなたのものとなるだよう――――ということでご主人様」
「ん?」
大罪武器がくるりとこちらを見る。一体何事?と思い俺も彼女の目を見つめる。
「このエルフ。少々私が訓練をつけてもいいか?」
「ヴェ!?」
声の出所は勿論、急な訓練を言い渡されたメリウスである。俺はしばし顎に手を置いて考えると―――
「よし。行ってこい」
「先生!?」
―――GOサインを出した。なんとなく勘が告げるが、多分この訓練はメリウスにとって必ず後に役立つ。
それに、俺も貰った武器の能力を実際に使って確かめてみたい。魔神との戦いまでにある程度は使いこなしたいし。
「アリス。俺もこの武器を使いこなすために訓練をしたい。付き合ってくれ」
「了解です!」
「なら、カレンは私に付き合ってくれるかしら?」
「分かりましたルーナ先生!」
ラミュエールが戻ってきた時のために、書き置きを残してからホテルをもう一度出て砂浜にやってきた俺たち。ここ一帯を使える客は俺たちだけなので、他の客の迷惑を考えずに暴れることが出来る。
「行くぞアリス。お手柔らかにな」
「分かりました!」
20m程先には、憤怒の剣サタンを構えているアリス。俺は手に持っている暴食の大剣ベルゼブブを見つめた。
大きさはおよそ1m80cm程と、俺の身長よりも少し大きい。武器に大きさで負けたことに気づいた時は、少しだけムッとしたがまぁそれはいい。
俺がこいつを選んだ理由は、『暴食』の権能が俺に一番マッチしていたからだ。
そんなベルゼブブの能力は『全てを喰らい尽くし、食べたものを全部エネルギーに変換して放出する』というもの。
ぶっちゃけ聞いた時、何それ無敵じゃんと思ったが、大罪武器曰く、ため込めるのにも限度があると。だから魔神も同じ権能を持っているけど倒すことは可能なんだとか。
聞けば聞くほど、魔神という存在はヤバい。この暴食の他にも同じくらい強い能力があと六つも残ってるんだろ?過去の人はよく封印まで持っていけたよと本当に思う。
意識を訓練の方に戻そう。今更何を当たり前なと思うかもしれないが、俺は基本的に剣術や武術は習っておらず、無理やり身体強化をかけてぶっ飛ばすという戦闘スタイルを取っている。それで、前にディルクロッドに侵入してきた勇者を肉弾戦でぶっ飛ばしてるし。
だから、今回もアリスから剣術は習わず、身体強化で純粋に速く重くぶん殴ることを目的にこの大剣を扱おうと思う。今更剣術を身につけても所詮付け焼き刃だしな。
一通りの件が終わったら、後日ゆっくりアリスから習えばいい。
「……!」
「!」
右足を引き、走り出す直後に身体強化をありったけ自分にかける。それと同時に、ベルゼブブの方にも俺の魔力を注ぎ込ませて喰わせる。
魔力をベルゼブブに注ぎ込み事により、剣自体の性能が上がり、重さと攻撃力が増していく。まぁエネルギーを放出したら全部元通りなんですが。
なんの捻りもない横凪。これを選んだ理由も、縦よりかは避けにくいんじゃない?という素人考えからだ。
ガキン!とベルゼブブとサタンがぶつかる。アリスは防御を選んだようだ。
「おっ―――もっ!」
あまりの重さにアリスの顔が歪む。しかし次の瞬間、アリスは飛び跳ね、踏ん張っていた力がなくなりベルゼブブはそのまま振り抜かれ、その勢いを利用したアリスが剣を斜めにしながら力を受け流し、そのまま回転をする。
「むっ」
「ハッ!」
そしてそのまま回転を利用した縦斬り。ベルゼブブは左に振り切っていて防御は見込めない。
ふむ、これはまず俺の一敗か。
ピタリ、と俺の首に寸止めで置かれる剣。
「流石に、魔法以外では勝てないな」
「何言ってるんですか。初心者とも言えないティルファさんに剣術で負けたら、私の存在意義無いですからね」
とりあえず、少しは大剣の振るい方を大罪武器から習おうと思った。
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『モンスターテイマーに憧れて~とりあえず全員魔物っ娘にする~』
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