第4話

「ほぉ……ここがヌワイか」


 対抗試合も終わり、学校は約一ヶ月半の長期休校に入ったということで、俺達はメリウスがMVP賞で取ったリゾート券を使い、南にある高級リゾート地『ヌワイ』にやって来ていた。


「流石は年中暑い島……暑いわね……ティルファ。私にも魔法かけてちょうだい」


「はいよ」


 飛行船から出てくるルーナに向かって手を翳し、魔法を掛ける。


 今回、二週間の旅行となるが荷物は全て空間魔法で作った異空間の中に放り投げているためは手ぶらでこの島に来た。


 ん?六人というのは、俺、ルーナ、アリス、メリウス、カレン、そして――――


「なるほど、ここがヌワイ……初めて来ました」


 ラミュエールである。フィアン姉さんは「流石に二週間も学校を留守にできない」と言ったためお留守番である。そして、何故か俺の助手として魔法学校に教師役としてやってきたのである。


 聖女の嫁入りということで当然、世間―――というか、アイセーヌのお偉いさん方は荒れに荒れた。俺のとこに直談判する人(主にアルフレッドさん)とかいたが、全員ラミュエールが追い返してた。ちなみに、俺はまだラミュエールの事を嫁と認めていないが、どうせまたアリスとルーナが外堀をガツガツ埋めてくると思うので時間の無駄だとは思っている。このことをメルジーナ様と偶然部屋にいたマリナ様に報告したら――――


「………私が言えることじゃないけど、あなたも大概よね」


「あと何人増えるんです?」


 というお言葉を貰った。ちゃうねん。好きで増やしてる訳じゃないねん。なんか気づいたら外堀埋められてて責任取るしかないねん。


 メリウスの逆プロの返事ははとりあえず卒業するまで待ってもらった。いや、責任は撮るつもりでいるし、メリウスの事は嫌いじゃないし、かなり好きの部類には入るが……ほら、まだ教師と生徒だし。


 別に禁止されてるわけじゃないけど、色恋に現抜かして魔法の制御疎かになると大変だしな。メリウスはまだ神童として目覚めたばっかりだから、とりあえずは生徒としてもうちょっと神童の力を高めて欲しいというのが俺の本音である。「これからガッツリアタックしていきますね」という言葉は貰ったが。


「す、すご……これが……」


「うわぁ……綺麗な景色ですねぇ……」


 飛行船から降りたカレンとメリウスが景色を見て感嘆の声を上げる。確かに、海とか中々見る機会ないからこうして目を奪われるのも無理ないよな。俺もそうだったし。


「よし、全員揃ったから宿泊施設に先にチェックインしとくか。遊ぶのはそれからで」


「案内は私にお任せ下さい、ティルファ様」


 すると、自然とラミュエールが隣によってきて俺の腕を抱きしめる。それに対抗心を見せ、慌ててメリウスが反対の腕に抱きついてきた。


 とりあえず、俺は今回この二人の行動に関してはあまり反応しないことを心掛ける。いやほら……なんか反応したらそのまま押し切られそうな感じがして……。


「参りましょう。こちらですよ」


「ちょっと待て」


 案内しようとしたラミュエールを一旦引き止めて、俺は魔法をかける。ラミュエールは聖女として、メリウスは今回の対抗試合MVPもということで、かなり顔が知られている。そのため、このまま行くと絶対に騒ぎになること間違いなしなので、認識阻害の魔法を俺たちにかけた。


「よし、これでひとまず大丈夫だな。じゃ、案内よろしく」


「あ、はい……こっちです」


「……あぁいう所よね」


「はい。あぁいう所ですよね」


 後ろからルーナとアリスの囁き声が聞こえた。え、何が?








 ラミュエールは、多少赤くなった顔のままティルファ達に場所の案内をする。


(……どうしてでしょう。ティルファ様のお顔が見れません)


 ティルファの人生を夢で追体験し、心底ティルファに惚れているラミュエールであるが、恋愛に関しては経験値ゼロなので、こうしたティルファのさり気ない心遣いにやられていた。


(こ、これが嬉しいということなんでしょうか……!腕に抱きつくだけでもかなり緊張しましたのに……私、これ以上ティルファ様に溺れたらどうしちゃいましょう!)


 平気そうに見えていたのは、頑張ってポーカーフェイスをしていたからである。

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