第10話
特別ゲストてして出てきたのは先生だった。
………なんで?
『それではこれより、結界魔法コンテストを行います。皆様、対魔障壁を展開してください』
!のんびりしている場合じゃない。今は、先生に私の成果を見てもらうんだ!
「―――展開!」
無詠唱でイメージ通りの強固な壁が出来上がる。先生は、結界はイメージがどれほど鮮明に出来るかどうかで八割は決まるって言ってた。あとの二割は魔力の力技!
「運営の方からは全力でやっちゃってくださいって言われてるからな……少し、余興に付き合ってもらうぜ、相棒」
先生の全力と聞いて果てしなく嫌な予感がした。先生は、手を前方に向けて何かを唱えだした。
「――――我、神童の名に於いて、母である神との接続を開始する」
「!」
知っている。どうしてか知らないけど、私はこの気配を知っている……?その感覚を不思議に思いながらも先生をじっと見つめる。
先生が唱えだした瞬間に、魔力の衝撃が辺りに撒き散らされるが、この程度だったらまだ大丈夫。
「偉大なる魔法の神であるアテナよ。我の声を聞き、どうかこの手に神殺しの象徴である伝説を」
空が割れる。先程まで曇り空だったのに、先生の頭上だけに光が差し込む。その様子はまるで、天から祝福を受けるようで、とても綺麗。
「――――解放、そして降臨せよ」
瞬間、天から頭上を切り裂き、先生の元に舞い降りたのは美しい装飾が施されている銀色の杖。
その瞬間、ドクン!と私の胸が一際強く鼓動した。
「神器解放――――久しぶりだな、相棒」
『神杖ロンギヌス』。先生に与えられている、未だ存在が六個しか確認されていない伝説の武器の一つ。
「……なんてもの出してるんですか先生……」
というか、既にこの詠唱の余波だけで脱落してる人いますよ。
「まずは小手調べだ。このくらい、耐えて見せろよ?」
ふむ、久しぶりに呼び出した挙句、殆どお祭りみたいなこんな競技の場に呼んで、ちょっとくらい機嫌損ねてるかなーとか思ったけど、別にそんなことないし逆にロンギヌスもなんか喜んでいる気がする。気のせいか?
そして、この詠唱の余波だけで結界壊れてるのは……うん、まぁ一昨日来やがれということで修行し直してこい。
魔力を流せば、確かな返事が魔力を通して帰ってくる。よし、今日も俺と相棒は絶好調。
「まずは小手調べだ。このくらい、耐えて見せろよ?」
右手に持った杖を左側へ持っていき、そこからアーチを描くように右側に振る。すると、杖の軌跡から火の玉が今残っている人数分の数だけ構築される。魔法陣を介さずに発動するロンギヌスだけの特権だ。
「行け」
その言葉を合図に、火の玉が参加者それぞれに襲いかかり、初級の
うーん……割れたのは三つ程度か?思ったよりも耐えるな。俺の予想では軽く二桁は行くはずだったんだが……まぁいいか。
メリウスの方は………うん、まだまだ余裕そうだな。しっかりと練習の成果が出ている。
それじゃ、次だな。
「嵐よ」
会場全体を埋め尽くすかのように魔法陣が浮かび上がると、そこから黒色の嵐が巻き起こる。
中級の
あ、勿論観客席には被害が行かないようにコントロールしてるし、既に脱落している生徒に関しては結界が壊れた瞬間に転移が発動しているのでこの場にはいない。
神器の登場にようやく追いついた観客が、ありえない規模の魔法の行使に対して歓声があがる。まだまだこれで満足して貰っては困る。
さて、これで………うん、大多数が消えたな。残っているのも残りは五人程度………あれ、もしかしてやりすぎ?
少し心配になって後ろをちらりと見たが、大丈夫大丈夫!と俺をこの競技に出て欲しいと言ってきた人が、頭の上で大きく丸を作っていた。なら大丈夫だな。
「まだ余裕そうだなメリウス」
「いえ、そんなことないです先生。実は、結構ヒヤヒヤしました」
嵐が過ぎ去り、俺の言葉に笑顔で返すメリウス。額には微かに汗が見えるが、実際まだ余裕そう。他の参加者は結界の維持に魔力使いすぎて膝ついてるからな。
「それじゃ、次行くぞ。死ぬ気で魔力込めな」
「!」
バチバチ!とロンギヌスの杖から紫電が巻き起こる。
「餞別だ。これが本当の
と、カッコつけて言ったが多分これならメリウスは耐える。五つの槍が発射され、呆気なくメリウス以外の結界が壊れ、脱落。ぶっちゃけ、前までのメリウスならこれで余裕で貫けるはずなんだけどな。
……成長したな。メリウス。
「はぁ、はぁ……」
「成長してるなメリウス。だけど、お前はもっと上を目指せる。その上で、俺は先生としてずっとお前の目標としてあり続ける」
さて、メリウスよ。
「――――太陽が落ちるのを見たことがあるか?」
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