第9話
その後も徐々に徐々に人が減っていき、残りはカレンとメアル、二人の一騎打ちとなった。これまで何回か変わり種や、純粋に発動する難易度が高い奴と出てきたが、この二人は難なくそれをこなしていき、遂に最後。
これで、一瞬でも遅く魔法を発動した方が負けとなる。泣いても笑ってもこれが最後。果たして一体どんな魔法が―――――
「え?」
「はぁ?」
空中に浮かび上がったその名前に、会場にいる誰もが言葉を発しなくなった。あれを最後に持ってくるこれの出題者は性格が悪いと思う。
「「!」」
しかし、メアルとカレンはそれに臆する事無く魔法陣を構築する。このコンテストは威力ではなくどれだけこれを抑えられるかが大事である。
「「全てを破壊する凶器の渦よ――――」」
流石にここまで来ると無詠唱は無理なので、二人分の詠唱が会場に響く。
「「―――今!全てを壊せ!
彼女達の手の先にある巨大な魔法陣が一度発光するのをやめると、そこから破壊の煙が的に向かって勢いよく噴射される。
発動タイミングは殆ど同じ。果たして、勝利の女神は一体どちらに微笑んだのか――――
「また負けましたわー!!」
「お疲れお疲れ。ほらほら、今日は俺の奢りだから食え食え」
無事に、勝利を収めたのはカレンだった。コンマ何秒の違いだったが、それでもカレンが早かったのだ。
「はぐっ、ふぐっ……アイセーヌの代表として面目たちませんわ……」
「ま、ディルクロッドの牙城はそう簡単に崩せねぇよ。ま、とりあえず食いな」
「メアルちゃん凄い食べるね……」
「うぅ、勝った手前、すんごいここ居づらい……」
三日目、勝者カレン。ディルクロッド三勝。
四日目は模倣コンテストだ。二日連続のカレンが出場となったが、疲れを感じさせないコンディションで決勝まで駒を進めたが、対するのは同じディルクロッドの生徒で、ディルクロッド三位通過の生徒だった。
あと一歩の所で惜しくも知識の差で負けてしまい、カレンは二位。だがしかし、ディルクロッドで見たら勝利なのでこれで四勝。既に序列一位は決定した。
五日目、魔法精度コンテスト。
そして六日目。メリウスが出場する結界魔法コンテストが始まるのだが――――
「あれ、先生がいない……」
「ティルファ様?」
俺は、観客席に姿を現さなかった。
(……先生がいない)
結界魔法コンテストに出場する予定であるメリウスは、既に会場入りし準備をしていたが、いつもいる場所にティルファがおらず、カレンとメアルしか居ないのを見て首を傾げた。
いつもなら定位置に並んでいるのだが、居ないことに少しメリウスは眉をひそめた。
(……先生、私の頑張り見てくれないのかな…)
しょぼん、とやる前から少しだけやる気の下がったメリウス。だがしかし、このままじゃ行けないと自身のほっぺたをペシペシと叩いてから「よしっ」と気合いを入れた。
『それでは只今より、結界魔法コンテストを行います。選手の皆さんは定位置に着いてください』
結界魔法コンテストは、生徒一人ずつではなく、一斉に行われるため、比較的に時間が短くなる傾向がある。予め貰っていた紙に書いてある番号と、同じところにメリウスはその場に立った。
『それではこれより、今回魔法を放っていただく特別ゲストを紹介致します』
その言葉に、会場が盛り上がる。今までこの場に現れたのは世界中にその名を轟かす有名な魔法使いばかり。今年は一体誰なのかと期待が高まる。
『第265回の試合にて、歴史上最年少で出場し、歴史上初の同時MVP賞を取った神童の片割れ――――』
その言葉で、心当たりがありまくりのメリウスとカレンの眉がピクリと反応した。
『圧倒的実力から、齢9歳で世代最高とまで言われたその腕前はまさに神の御業。歴代最強が氷の女帝なら、歴代最優の称号は彼の物――――』
こつ、こつ、と選手たちの目の前にある入り口から、一人のシルエットが浮かび上がった。
『魔法三家、万能の代名詞。
それは、普段メリウス達の目の前で教鞭を取っているティルファの姿だった。
「せ、先生!?」
「よ、メリウス。お前の成長を見るなら、ここが特等席だろ?」
そう言うと、ティルファは不敵に笑った。
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