第5話

「それじゃあ、カレンはメリウスを押さえつけて」


「わかりまし――――え"!?」


「なんなら、抱きつくでもいいから、メリウスが暴れなようにして」


「あ、暴れる危険性があるんですか!?」


 いや、別にそういう訳では無いけど、これやるのって世界中探しても俺が一番最初なのよね。体に埋まっている鉱石を摘出するのって。だから何か会った時の保険だよ保険。


「いや、分からん。だが念には念をだ」


「先生でもいいんじゃないですかそれ!?」


「教師が生徒を押さえつけるとかダメだろ。倫理的に」


 いくら姉さんが学園長でも、俺の首が飛ぶわ。


「ほら、いいからいいから。はよ抱きつけ」


「うぅ……メリウスちゃん、失礼しますね」


「ど、どうぞ……」


 二人とも、抱き合うというのが恥ずかしいのか、やや頬を赤く染めながらウズウズと抱きしめ合う。


「ほら、もっと強く抱き合え。それじゃまだ心配だ」


「ま、まだですか!?」


 まぁ保険だし。何も無かったらなかったで良かったねぐらいだから、別にデメリットはないと思うのだが。


 二人とも、強く抱き合ったのを見てから、俺はメリウスの後ろに移動する。


 まずは、メリウスに自分の体がどうなっているのかを確認するのが先だ。


「メリウスの体の中――――正確に言えば、体全体から、鉱石反応が確認されている訳だが、これを摘出するということは分かっているな?」


「はい。恐らく、子供の頃からその鉱石を粉末状にしたものを飲まされ、それが成分として体の中に溶け込んでいると………」


「その通りだ」


 手順はこうだ。まず、錬金術の応用で、体に解けている鉱石成分の抽出&結合で、ひとつの塊にする。そしてその後、出来上がった鉱石を転移魔法で俺の掌に移動させる。それで終わりである。


 1つ、懸念があるとすれば、どこで鉱石を結晶化させるのが問題だ。別に、無理やりすれば俺の手のひらの上でできないことも無いのだが、時間もかかるし効率も悪い。


 だから、どこかそれなりのスペースがある内蔵でやらなければいけないのだが、もしかすると内蔵を傷つけるかもしれない。


 念の為、安全に安全に安全を重ねて、メリウスの体の中まで結界で守る。怪我をしないで成功する確率は、理論上なら100パーセントであるが、何が起きるか分からない。


「それじゃ、始めるぞ」


「……お願いします」


 勿論、この危険性はメリウスにもきちんと伝えている。メリウスは、それを分かった上で俺に身を任せてくれているのだ。


 ――――一瞬で終わらせる。


 メリウスとカレンの真下に、魔法陣が現れる。


 結界発動!内蔵が傷つかないように最大硬度で展開して、直ぐに錬金術で、体中に散らばっている鉱石成分を凝縮させて結晶化!それを転移で回収!


 最後の工程を終わらせると、手のひらに冷たくて、何やらゴツゴツとした感触が生まれる。手を開くと、そこには紫色に光る鉱石が――――


「終わったぞ」


「……………え?」


 いやー、何事もなく終わって良かったわほんと。


 しっかし、これ形状は魔力石に似てるな。兄さんは新種かもとか言っていたが………俺には全くそんな風には見えない。


「せ、先生……?本当に終わったんですか?」


「うん、終わった」


 ギュッ!と目を瞑って未だにカレンに抱きついているメリウスの代わりに、カレンが聞く。俺は、先程まで目にちかづけて見ていた鉱石をカレンに見せつけた。


「無事終了。鉱石の反応は教えたろ?解析アナライズで見てみ」


「…………解析アナライズ


 鉱石の反応については、昨日既にカレンには教えてある。その反応を頼りに、カレンがメリウスに魔力を流していくが――――


「……ほ、本当にない……嘘……あんな一瞬で終わるものなんですか……?」


「まぁ、俺は神童だしな」


 普通の人には出来ないことをやる。時間がかかるのならば、一瞬で終わらせるように工夫に工夫を重ねる。存在しない魔法があるのならば作り出す。


 それが、神童だ。それができるから、神童なのだ。


「あ、あの!先生!ま、まだ終わらないんですか!?」


「終わってるぞ既に」


 緊張とか不安で俺達の声が聞こえていなかったのだろう。まぁ仕方がないといえば仕方ない。


「そ、そうですか!もう終わって――――え?終わってる?」


 パチリ、とメリウスが目を開けて俺の方へ振り返る。俺は、メリウスに証拠として先程まで摘出した鉱石を見せた。


「はい、これ証拠な」


「―――――え?」


 そして、やっとメリウスが現実を認識した。


「体調はどうだ?変な倦怠感とか無いか?」


「え……私……本当に……」


 メリウスが、震える口で「火よフレガ」と唱える。そして、手のひらにはキチンと火の玉程度の大きさの魔法が発動した。


「――――っ!」


 そして、メリウスは目を見開かせ、涙がたまる。


「わ、私っ……!やっと――――」


「メリウスちゃん!?」


「メリウス!?」


 言いかけて、途中で体が横に倒れそうになるが、カレンが抱きついていたため、倒れることは無かった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

無事、第一ラウンド突破!


いやー、本当に良かったです。マックイーンとライスちゃんがめちゃくちゃ頑張って4勝出来ました。タイシン?まぁゴルシによく付いていたよ。


ゴルシまじ怖すぎだろ。いるだけで恐怖感じるわマジで。作者以外ゴルシ出てくると絶望感が凄かった。でも、マックイーンが頑張ってくれました。


新作の方もよろしくお願いします。

『俺達が『家族』になった次の日、義妹が厨二病に進化していた』

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