第4話

「……ふぅ、危ないところでした」


 パリン、と空間がひび割れ、切り裂かれる。その中からウルゴスとラプラスの体が出てくる。


(勇者……あのにっくき奴の息子、あれだけの強敵とは)


 ティルファの勇者を巻き添えにするような援護(?)があったとはいえ、あそこまでラプラスの悪魔が押されるなんてこと、全くもって想像をしていなかった。


 ほとんどワンサイドゲームのようなやられ方に、ウルゴスはチッ、舌打ちをして、ラプラスを見る。


(今頃、ラプラス様は我々が勝利をする未来を見て、因果律を操作していらっしゃるはず……ならば、私はラプラス様の力をさらに強化するために、供物を与えるべきですね)


 最近で、ラプラスのオーラは日に日に強くなっていたのだが、ある日を境にそれがぷっつりと無くなった為、あの大量の供物は無事に、ラプラスに取り込まれたということだろう。


「ラプラス様」


 ウルゴスは、ラプラスの前に跪く。


「私は、これからまた、あなたの供物を探しに行きたいと思います、退屈かと思いですが、準備が整うまでここで待っていてくださると………」


 伺うようにラプラスを見る。相変わらず黒い影しか見えないが、ウルゴスには、ラプラスが頷いたかのように見えた。


「……ありがとうございます。準備が出来次第、またあの憎き勇者を討つために……宜しくお願い致します、ラプラス様」


 そして、ラプラスはもう一度頭を下げた後、立ち上がると影の中に沈んでいった。


「……………」


 ラプラスは、それさえも黙って見送り、未来を見通す。


「…………」


 見える未来は、どう足掻いても自分たちが負ける未来のみ。因果律も操作しているのだが、やはり負けてしまう。


 今までもそうだ。実は今日だって、ラプラスが勝てる未来は無かった。最悪、ラプラスはあの場で封印されたので、今回の未来はラプラスからみて三番目くらいにいい未来だろう。


 ウルゴスが捧げる供物にも期待したいが……それでも勝てる未来は見えない。


「…………」


 ラプラスは、影の中で冷や汗を垂らした。


 魔界に帰りたい、と。











「良かったんですか?勇者様」


「何がだ」


 夜、ディルクロッドの高級宿にて、一組の男女が肌を重ねあ合わせている。当然、クズ――――珍しく勇者やっていたエリアスと、お付のレジーナである。


「いえ、あの女勇者様に家に招待されていたではありませんか。あの勇者は勇者様好みではなかったのですか?」


「好みに決まってるだろうが。しかし、あれはダメだ」


「ダメ?」


「あぁ……あの女、心の中にやべぇもんが巣食ってやがる……いくら外見がよかろうが、あれは御免だ」


「うわぁ、勇者様が一番言っちゃいけないセリフ」


「黙れ」


「あぁん♡」


 一瞬、レジーナの嬌声が響くが、それだけ。今日はヤる気が起きないのか、エリアスはため息をついた。


「やめだやめだ。なんか今日は気になることが多すぎて集中できん……今はあのクソ商人を倒すことに集中しよう」


「中身クズなのによくいうわね」


「俺は勇者だからな。女を困らせる悪は倒さないといけないからな」


 やはり、こいつはこいつだったか。レジーナもやっぱりと言った反応なのか、はぁとため息をついた。


(……それに、奴とはもう一度協力して戦わないといけないからな)


 特にそう決めた訳では無いが、エリアスの勇者としての勘がそう告げる。


(それに、あの実力……俺と一緒にいた時は手加減していたということか……生意気な)


 手加減というより、全力でコイツの足を引っ張っていたのだが……まぁ手を抜いていたことが分かったのなら上出来だろう。


(そして、あのウルゴスが俺を見てきた時の目………復讐を考えているような感じだったな。声的にも、身体的にもあんな奴に見覚えはねぇ)


 ゴロン、と横になり、思考の海に沈む。


(……となると、あの関連か……チッ、勝手に殺された癖して、息子にまでこんな迷惑かけやがって……)


 エリアスの父親も、また勇者である。しかし、彼の父親は既に殺されていた。


 このクズ勇者の性格からお察しの通り、こいつの父親も中々のクズムーブを発揮しており、エリアスは上手く外面を使い分けていたが、こいつの父親はそんなこともしなかった。


(厄介だな、本当に………)




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なんか物足りないなぁと思ってたらあとがき書くの忘れてました。でもまぁいっか

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