第8話
広場に着いた途端、やつの速度が急激に加速したのを感知し、しかも狙いが俺一直線だったこともあり、殆ど反射の要領で、限界まで硬度を上げた障壁を直ぐに展開。そして、次の瞬間には、俺は吹き飛ばされていた。
「ティルファさん!?」
唯一、剣士であったからか、俺と謎の勇者の動きを終えたアリスの声が響く。
「んにゃろ……!」
障壁を貼っていてもかなり強い衝撃に舌打ちを打ってから、俺は今にも障壁をぶち破らんとしている謎の勇者を睨みつける。
「吹き飛べ!!」
「!」
「そっちが近接戦をお望みなら―――」
こっちだって近接でやってやるよ。そのご自慢の勇者の鎧がひしゃげないといいな!!
ちなみにだが、こうも大口を叩いた俺だが、そもそも近接なんて得意じゃないし、俺は魔法使いだから、わざわざこうやって近接で戦う必要は無い。
だが、なぜ俺がこんなことをするのか。そんな理由ただ一つ。
ムカついたし、姉さん達を狙っている。だから、本職じゃないやつにボコボコにされて、心折ってからこいつは殺す。実力的に、クズ勇者よりは弱いしな。わざわざ秘術を使うまでもない。
俺は、体全体に身体強化の魔法を満遍なく、惜しみなく使い、先程の不審者よりも早いスピードで飛び、肉薄。
「墜ちろ」
武術を嗜んではいないから、ただ普通のかかと落とし。だが、その威力は当たれば強烈だと思う。うん。
空中に飛ばされながらも、俺のかかと落としを防ごうと剣で守ろうとするが、それよりも早く俺のかかとが鎧に突き刺さった。
ドン!とかかと落としではまず出ないような音を響かせながら落下し、地面に突き刺さる不審者。
「ティルファ!大丈夫!?」
「姉さん、このとおり無事―――だけど」
パッ!と姉さんが俺の目の前にテレポートしてきたのを横目に、さっき不審者が墜落したところをジッ、と見つめる。
「アリスとルーナは?」
「住民の避難の方をさせてる。私もやってたんだけど、二人から様子を見てきてって言われたから来たんだけど――――」
ドンッ!と何かが吹き飛ぶ音と同時に、土埃の中から特に傷を折っていない不審者がパラパラと鎧に着いた汚れを指で落としていた。
「…………一応、全力だったんだけどな、流石勇者の鎧というわけか」
「神童の全力でもダメなんだ………ちなみに、何したの?」
「蹴った」
「どうして物理でいっちゃうの……?」
いや、だって魔法でやったら流石にマズイし、あと個人的な理由でムカついたし、イラついたから。
「とりあえず、私も頑張るね。神童としての実力はティルファには及ばないかもだけど、戦力にはなるよ」
「うん、助かる」
さて、俺だけでも時間稼ぎ自体は問題は無いが、姉さんが来てくれたからめちゃくちゃ楽になった。
兄さん、早くマリナ様連れてきてくれ!
ダンっ!と不審者がこちらに急接近、と同時に俺はもう一度障壁を展開する。あくまでも狙いは俺ってことか?
『…………レーヴァテイン』
その無機質な呟きが聞こえた瞬間、嫌な予感がした俺は咄嗟に障壁を爆発させる。硬い衝撃に押し返された勇者は距離を取らざるを得ない、そして、その間に姉さんが構築した見た目は地味だが、その威力は充分に人を殺せる威力の魔法が10以上も飛んでいく。
しかし―――――
「………斬ったな」
不審者が聖剣の真名を解放したと同時に、奴の刀身から出てきた焔。全てを燃やす、業火の焔。
まさか、魔法をも斬ってしまうとか……魔法使いキラーやないかい!
圧倒的に相性が悪い。いや、別に斬られないようにする対策は普通にあるし(障壁限定)、負けることは無いんだけどさ……あのまま咄嗟の判断で障壁を爆発させてなかったら、障壁は燃やされてて少しピンチだったな。
さて、あれの焔を受けきれる剣なんて、同じ聖剣位しかない。つまり、どれだけ早くマリナ様がここに来てくれるかが重要で――――!
「私、参上!!」
「マリナ様!」
空中から現れた、白緑色の髪を靡かせながら、聖剣を不審者へと斬り掛かるマリナ様。ガキン!の一瞬の鍔迫り合いの後、クルンと一瞬にして体を回転させたマリナ様は、強烈な蹴りを浴びせ、吹き飛ばした。
良かった。昨日の闇オーラはきちんと消えているみたいだった。きっと昨日の夜はお楽しみだったんでしょうね。見ただけでとても気分が絶好調だということが分かる。
「お待たせ!ティルファくん!フィアンちゃん!ルドルフくんのを聞いて応援に来たよ!」
「助かります!」
これで、こちらが負ける確率は0になった。マリナ様の実力はあのクズのよりも一回りも二回りも上手だ。逆に負ける理由を教えて欲しい。
「さぁ行くよ二人とも。この街を荒らす輩はギッタンギッタンのけちょんけちょんにしてやるんだから!」
もうちょっと気合いの入る言い回しをして欲しかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
こいつら、うまぴょいしたんだ……っ!
昨日、やっと育成でマルゼンスキーのスピードがSSになりました。余裕でうまぴょい出来ました。
そして、最近pixivよりもハーメルの方がウマ娘の二次創作が盛り上がってることに気づいた俺氏。pixivもハーメルンも楽しめるから本当に嬉しい。もっと増えて。
それと、新作の方も投稿中ですので、覗いて行ってください。
『侵食魔界都市東恐』
作者の好きな設定盛りだくさんです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます