第3話
「それじゃあお客さん方………私は今からものすごく周りの方に集中していますので………私のことはお気になさらず」
「何言ってんすか!?」
話を無理やり切りおわらせ、馬車に戻った瞬間、御者さんがそんなこと言ってきた。
「いえいえ、大して何も………何やら声が響いても私は何一つ聞いていなのでご安心を」
「いや違うんで、ほんと違うんで話をーーーー」
あー!御者さん消えやがった!
結局、二人は顔を赤くしながら俺の腕を握っている…というか、アリスに至っては腕に抱きついている。
「えへ……えへへ……ティルファさん好き……」
というかこの子、全くもって俺への好意を隠さないようになっており、俺への気持ちをストレートに伝えてくる。
「むぅ……わ、私だってティルファのこと……」
「待って。張り合わないでいいから」
張り合ったら死ぬぞ?俺が。死因が嬉死とかダサすぎて嫌なんですけど。
「………アリス、一旦離れてくれないか?」
「嫌です」
「即答しないで……大事な話をするから」
と言うと、アリスは渋々と言った感じだったが、離れてくれた。良かった。これ以上続いてたら俺の精神衛生上良くなかったから。
俺は、頭をガシガシとかきながら二人に向かって言う。
「あー……まぁ、俺が無意識の内に漏らしたように……俺は、二人のことがどうしようもなく好きだ。これだけは断言できる」
「ティルファ………」
「ティルファさん………」
二人の顔が嬉しそうに頬が赤くなる。
「はい!私もティルファさんのことがどうしようもなくーーーー」
「でも、返事は少し待って欲しい」
俺は、アリスの言葉を途中でぶった斬る。これだけは譲れないのだ。
「あんな告白じゃダメだ。俺はきちんと………ちゃんとした場所で、もう一度二人に告白したい」
これでも俺は貴族だ。こんな野原と馬車で一世一代のプロポーズしたとか言う事実が流れれば、かなり恥ずかしい。
ほろ……もっと……こう、なんかロマンチックな場所とかさ?夜の噴水前とかでしたいじゃん!分かる!?
そう俺が言うと、ルーナとアリスは顔を見合わせ、こくんと頷いた。
「……分かりました。ティルファさんがそう仰るなら、私はその意見を尊重します」
「ティルファって、意外とそういう雰囲気とか大事にする性格だもんね。だから、いいわよ」
「ありがとう」
さて、そうと決まったら俺は色々と今夜の告白に向けて考えときますか。勿論、今はまだ恋人ということになるだろうが、俺は結婚を前提にお付き合いさせて頂くつもりだ。
貴族ならば、もう俺の歳で婚約していないと行き遅れとか言われる……というか、もう幼い頃から婚約者がいるやつはいるしな……兄さんも七歳の時には既にいたし……。
俺?俺は次男だからそう無理に決める必要は無いしな。姉さんの方は長女だが、家督は兄さんが継ぐので、婚約者を探すということはなかったし、姉さんも欲しがらなかった。
いくつか姉さんを婚約者にー!とか言うのは何件かあったけど、姉さんが全てビリビリに破いてたよな。「ティルファよりもいい男がいないからダメね」って。
……あれ?今思えばこんな時から姉さん俺の事好きだったのん?
あっちこっちに思考が行っていると、左右から何やら暖かい感触が伝わってきた。勿論、正体は当然ルーナとアリスだ。
俺に密着し、俺の腕を抱きしめて完全に俺に寄りかかっている。
「お、おい……」
「あら、別に相思相愛って分かってるなら、キスはまだだけどこれなら大丈夫じゃないかしら?」
「返事はまだって言われましたけど、態度で表すなとは言われてませんから!」
と言うと、アリスは俺の手にまで腕を伸ばすと、そのまま指を絡める。それを見たルーナもアリスと同じように指を絡めた。
………おいおいおい。俺ほんとに大丈夫か?これ。ジャパニカ着くまでにうっかり告白しない?理性がなんかゴリゴリ減っていってる音が聞こえるんですが……。
「お客さん。そろそろジャパニカに着きますよ」
あれから、昼休憩として、アリスとルーナが頑張って作ってきてくれたという弁当を食べ、その後も雑談をしたり、アリスの膝枕を堪能したりしていると、御者さんがそろそろ目的地に着くことを教えてくれた。
「んっ……何かいい匂いがするわね」
「なんでしょう……嗅いだことないのに……とても美味しそうです」
「まだ街の中に入ってすらいないのに、ここまで匂いが来るとは」
流石は国一番の美食街と言った所か。外を覗いてみると、魔物侵入防止用のために築かれた防壁が見えてきた。
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選挙の演説がうるさい。
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