第75話 謁見
謁見の日
俺が宿にしていた郊外の屋敷から出ると其処には鎧姿の軍勢が・・・
「なにこれ?」
「アベルさま、御覧ください。アベルさまの登城を祝い馬揃えを打診した所、近隣のみですがこれ程の者が集まりました。総勢八千にございます。」
「・・・ドウセツさん、何処かに攻め込むの?」
「御冗談を皆アベルさまの初登城に同行する栄誉に預かりたいだけにございます。」
「これって、国王からしたら問題じゃないかな?」
「既に通達しております。その際、陛下は、まだサチを慕う者がこれ程いてくれたのかと泣いてお喜びになられたとか。」
ドウセツは誇らしそうに語るが、
「おかしくない!普通は警戒する数だよ!」
「まあまあ、それより出立致しましょう。陛下がお待ちです。」
俺は用意されていた馬に乗り。
「はあ、仕方ない、なるようになるさ!いざ出立だ!」
俺の合図で軍勢はゆっくり城を目指す。
連絡されているので門もそのまま通過して町を歩くと歓声が響き渡る。
「アベルさま!」
「御子さま!」
町の人の歓声に隣にいるドウセツさんも驚く。
「これは・・・」
「あ~昨日、町に来て治療してまわったら顔が売れちゃってね。」
「流石にございます。これ程の初登城は伝説になるでしょうな。」
ドウセツは笑う。
ゆっくりと町を進むと腕のたちそうな男達が前にいた。
「道を開けろ!」
先頭を進むムナシゲが男達をどけようとするが、
「アベル殿の軍勢とお見受け致す、我等、柳生一門同行を許可されたい!」
「なに?暫し待たれよ!」
ムナシゲは報告に俺の所に来る。
話を聞いた俺は柳生一門の元に。
「えーと、柳生殿、これは登城するだけの軍勢ですよ、一緒に来ても特に何かがあるわけでは無いと。」
俺は事情を説明してみるが。
一人の老人が代表で出てきた。
「アベルさま、我等の剣を受け取ってくださらぬか?このソウゴンを含め、この場にいる多くの者が昨日アベルさまに命を救われた者じゃ、今この時のみならず、我等は生涯アベルさまの元で剣を振るう所存であります。どうか我等の忠誠をお受け取りください。」
「わかりました。それならば我等と共に参りましょう。」
「おお!」
俺は柳生一門を傘下に加えて城を目指す。
「アベルさま、柳生を傘下に加えるとは、アベルさまの人徳は素晴らしいですな。」
「ドウセツさん、柳生って凄いの?」
「おや、知らないのですか?彼等は剣豪集団で名をはせておりましたが、昨年魔物の大群と対峙した際に多くの者が傷つき壊滅状態だったのですが・・・」
「あー昨日、治した中にいたんだね。まあ、剣豪集団なら戦力になるし、問題ないよね。」
「ええ、問題になりません。」
そして、城に着く、
流石に城内にこの軍勢のまま入る訳には行かないのでショウウンに軍を預け、主だった者達で参内する。
「アベルよ、良く来た、顔を良く見せてくれ。」
国王ヨシテルに会うとヨシテルはすぐに俺の傍にやって来て、顔を見てくる。
「うむ、サチの面影がある、良く似ているな。」
「俺は母親・・・サチさまの事をまったく知りません。」
「おお、聞いておる、孤児として育ったとか・・・しかし、だなサチが理由なく子供を手放すとは思えん、何か仕方のない理由があったと思う。どうかサチのしたことを許してやってもらえんか?」
ヨシテルは深々頭を下げる。
「いえ、許すも何も、育った孤児院では良くしてもらいましたし、先日映像ですが如何に子供が大事かを語られてました。今の私に思うところは何もないです。」
「おお、良かった。サチも息子に恨まれたままというのは辛かろうと思っておったが、わだかまりが無いのならそれで良いのだ。」
「はい、それよりは母サチさまの事をもっと知りたいと思います。」
「うむ、ワシを含め何でも聞いて良い、皆もアベルにサチの事を聞かれたら答えるようにな、どんな失敗談でもだぞ。」
ヨシテルは笑いながら周囲の家臣に告げる。
「陛下、甥に会えたのが嬉しいのはわかりますが、ここは謁見室ですぞ、玉座を離れて面会者の所にいるのは如何なものかと。」
「フジタカ、固い事を言うな!今日だけじゃ。」
「それに今後の話もありますので一度玉座にお戻りを。」
「・・・仕方ない、すまんのアベル。一応形式らしいから玉座に戻るとする。」
ヨシテルは残念そうに玉座に戻る。
玉座に戻ったヨシテルは改めて、
「アベルよ、そなたにサチの領地の継承を認める。」
ヨシテルはそう宣言したが、ヨシテル家臣の一人フジナガが反対する。
「陛下お待ちを、事前の話だとアベル殿が継承する領地は半分の筈では!」
「あーお前達が言っていた話か?若いから統治が出来んから半分にしろとか、都市を没収しろとか、却下に決まっているだろ。サチの家臣も付いている、統治が出来ん筈がない。」
「しかし、既にその地は他のものに渡す予定が・・・」
「俺が認めたか?何を勝手に領地を切り分ける話をしている。誰かある、このフジナガの取調べを行え、賄賂を受け取っている可能性がある、関係者一同捕まえるように。」
ヨシテルは兵士に命じてフジナガ連れていかせた。
「アベルよ、すまんな。サチの土地はかなり裕福でな利権を求める者が後をたたんのだ。」
「いえ、それよりも宜しいのですか?私は他国の子爵でもあるのですが、領地を与えても?」
「知っておる、だが、そもそも他国の王族を勝手に子爵にするのが悪い。」
「いや、その時は王族と知らなかった訳ですし。」
「知らん。」
「知らんって、陛下あまりに乱暴では?」
「なに、文句があれば言ってくるさ。まあ、文句など聞く耳ももたんが。」
ヨシテルは大きく笑う。
「陛下・・・」
「アベルよ、その陛下はやめろ。ワシはお前の叔父なんだ、叔父さんとでも呼んでくれ。」
「しかし、プライベートはともかくせめて謁見とかの公式の場とかでは公私を分けるべきかと。」
「必要ない、ワシを叔父と呼んで困るもの等おるまい。ここに重臣も揃っておるのだ、お主ら文句はあるまいな?」
ヨシテルは家臣の質問をするが、
「陛下、それは決定でございましょう。ならば我等も従うのみでございます。それに呼び方など御家庭の話にございます。お好きになされるべきかと。」
家臣を代表して、フジタカが答える。
「うむ、そのとおりだ。ほら、アベルよ。叔父と呼んでくれんか?」
「・・・叔父上、些か強引では?」
「うん、いいな。少し強引かも知れんがワシにとっては唯一の甥なのだ、誰に何を言われても止めたりはせん。
まあ、家臣ならそれぐらい主の心を思ってくれても良かろう。」
「わかりました。叔父上、今後そう呼ばせていただきます。」
「うむ、頼むぞ。」
ヨシテルは上機嫌で俺の承諾を聞いていた。
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