色彩の大陸3～英雄は二度死ぬ

プリブレジヌイの戦い３

　大陸歴1660年11月26日・ブラミア帝国・プリブレジヌイ

　翌日、朝。

　帝国軍の指揮官たちに歩哨からの報告が入った。

　第四旅団だった兵士たちが、当初の予想通り約三千名が反乱軍に合流したというのだ。

　予想をしていたとは言え、正規の軍が敵の仲間になったのは、帝国軍として不利な点だ。

　しかし、ルツコイは、昨日決めた通り、出撃して様子を見ようことになった。

　望遠鏡で反乱軍の位置を確認する。そして、彼らは南の方角、かなり後方まで退いて野営をしている。南西の方向には着ている制服から帝国軍の第四旅団であろう部隊が野営しているのが見える。それらが出撃したら、それとは戦わずに退却することになっている。

　昨日同様、ルツコイ率いる重装騎士団三百人とユルゲン・クリーガーも一緒に出撃する。

　城門を開かれると、部隊はゆっくり前進を始めた。三十分ほど進み敵陣に近づいた。反乱軍は歩哨も監視も出していないのか、今のところ動きが全く見られない。

　ルツコイは剣を抜いて号令掛けた。

「よし、突撃だ！」

　鬨の声を上げて重装騎士団が突撃を開始する。

　ようやく反乱軍がこちらに気が付いたようだ。剣を抜いて立ち向かってくる者、逃げ惑う者が入り乱れて大混乱となった。

　ルツコイ達はその中で次々に敵を倒していく。ユルゲンは火炎魔術で近くのテントに火を放っていく。しばらく敵陣のなかを移動した後、重装騎士団の一人が報告に来た。

「第四旅団が動き出したようです」。

「よし、今日はここまでだ、退却を」。

　重装騎士団は手柄を焦らずに素早く城に撤退を開始する。

　第四旅団の騎兵が追いかけてくるが、何とか追いつかれる前に街壁の中に逃げ込むことができた。街壁の上の弓兵から矢が浴びせかけられ、第四旅団の騎兵はそれ以上近づくことなく、撤退していった。

　夕刻、再度、ユルゲン、ルツコイ、イェブツシェンコが集まって今日の戦いの経験から、今後の作戦をどうするか打ち合わせた。

　ルツコイは発言した。

「やはり反乱軍は敵ではない。現状、南西に控える第四旅団の三千人だけがまともに戦えるだろう。こちらは六千の兵があるので、戦っても勝てそうだ。しかし、念のため、公国軍五千が到着してから、一万の数で攻撃をしたいと思う」。

　さすがルツコイは慎重だ。ユルゲンもイェブツシェンコもその方針を了承した。

　一方の人民革命軍のナタンソーンは、打ち取られた百数十名の遺体を見て地団駄を踏んだが、これももう少しの我慢だ。首都で捕らわれている司令官が味方に付けば風向きは変わるだろう。

　そして、もう一案。

　人民革命軍に今、降伏すれば、寛大な処置をとり、厚遇で人民革命軍に迎えるというビラを作り、街壁の中へ矢に括り付けて射るという言うものだ。

　効果があるかはわからないが、何もやらないよりはましだ。

　そして、第四旅団の陣地をナタンソーンの本隊の陣地の前に展開させ、直接帝国軍の攻撃を受けないようにその日のうちに移動させた。