第782話「怒り心頭!?マモンとヘカテイア残酷無比の一撃」
僕は狙いをすまして魔法を放つ……
『水槍撃!!』
『ズドドドドド………ズドン!!』
「ギ!?ギィィィ……ギエェェ…………ギギ!!ギエェェ………………キゥゥ……グギュゥ…………ク………ゥゥ……」
久々の大技だったが、此処がすでにダンジョンの壁では無くなったことを忘れて撃ってしまった。
魔物は見事に巨大な水槍の槍衾で粉々になったが、その槍が爆散することを僕は計算に入れてなかった。
敵が爆散し居なくなり、的を撃ち漏らした水槍は天井に突き刺さり爆散する……
『ズドン!』
『ズガン!!』
その様を見たマモンが苛立ち始める……
「何やってんだ!?契約者……皆を巻き込んで自殺する気か?………大馬鹿モンが………」
そしてマモンと僕達の連携を見かねたヘカテイアが、持ち場を離れてすっ飛んでくる……
「何をチンタラやってんの?マモン!アンタがいながら………ってヒロ?そんな大技使ったら天井がもたないわ!!マモン貴方が居ながら何をしてるの?」
「チィ……やっちまったもんは仕方ない……天井が崩れないことを祈るしかねぇ!!ヘカテイア手伝え!その精霊はお前が担いで………うぉぉ?」
「何?マモンどうしたの?………く!?………ふわぁぁぁ…………」
マモンとヘカテイアが顔を見合わせてお互いの状況を確認した……
お互いの体に巻き付いている触手……『グレーターミミックは天井だけではない!』と判断するには時間がかからなかった。
しかし気がついたとしても、既に遅かった……二人は左右別々の方向の壁に引き寄せられ、叩きつけられた……
「ぐ!?………クソ雑魚が!壁にもいやがったのか?」
「痛いわね…………それに鬱陶しいわね!このヘカテイアを怒らせるやつは久々だよ!!バラバラになって消し飛びな!!」
マモンとヘカテイアは、珍しく怒りに身を任せ接近戦に入る……
『ビギャァァァァ!?………ギシャァァァァ!!……ギギ!?ギエェェ!ギエェェ!!」
マモンの腕は穢れを纏い、真っ黒な腕になる。
その腕を壁に突き刺すと強引にグレーターミミックを壁から引き剥がす。
「バラバラにしてやる!雑魚風情がこの俺を壁に叩きつけやがって……後悔しながら死んでいけ!!」
ほぼ力技でグレーターミミックを引き裂き、内臓を引き摺り出すマモン………
「苦しいか?内臓を全て引き摺り出してバラバラにしてやる!!……お?……見つけたぞ?お前の核……ホラ?此処の魔石だ…………コレを身体から引き千切って……お前はおしまいだ!!」
「ギエェェ!!ギィーーー!!ギエェェ!!」
マモンは拳大の魔石を掴むと、力技でミチミチと音を立てつつ身体から魔石を引き千切ぎる……
すると今まで大暴れしていたグレーターミミックは、急激に枯れた木の根の様にシワシワになって崩れていく………
「雑魚が………面倒かけやがって………最後までこの俺に巻き付いてんじゃねぇよ!!鬱陶しい……」
そう言ってマモンは、自分の腹部に巻き付いているグレーターミミックの枯れ果てた触手を引きちぎった。
◆◇
マモンの攻撃のタイミングと時を同じくして、ヘカテイアも怒りに任せてグレーターミミックに攻撃を仕掛けていた……
「どういつもコイツも……調子に乗り過ぎなのよ!!たかだかミミック種の上位種風情がこの私を壁に叩きつけやがって!!」
ヘカテイアは力技で触手を引き千切ると、穢れを1箇所に集めて引き延ばす……
その穢れのナニカを一振りすると、巨大な漆黒の大鎌が現れた。
「私はとっととこの穴蔵から出て、目的地に行かないとならないのよ……。無駄に時間はかけないわ……今すぐこの大鎌でその醜い中身を引き裂いてやるわ。それでお前はおしまいよ!」
それを見たグレーターミミックは、ヘカテイアに危険を感じたのか、無数の触手を棘状にして突き出す……
まるでその様は、ウニの針の様だが太さがまるで違う。
経験の乏しい銀級冒険者であれば、その棘一本が突き刺さっただけでも致命傷になるくらい凶悪だ。
しかしヘカテイアは、大鎌を自分の周りでぐるぐると回して、その全てを一瞬で切り裂いた。
「あなた……舐めてるの?こんな攻撃でこの私を仕留められるって本気で思って攻撃してんのかい?雑魚の癖に攻撃まで雑魚なんだよ……マッタク……」
そう言ってからヘカテイアは、クルリと身を翻して僕の方に歩いてくる。
「ヘカテイアさん……まだ敵は動いてますよ!?……ホラ!!またさっきと同じ攻撃を…………」
ヘカテイアに注意を促すつもりで僕は言ったが、戻ってくるヘカテイアの手には何故か大鎌が無かった。
僕が周りを見回すと、黒い大鎌は不思議な事に空中に浮いており、その形は歪に変わり果てていた……
その大鎌には目玉や口があり、周囲をギョロギョロ見回すと『ギヒヒヒ!』と笑いながら空中を舞う。
大鎌が、その気味の悪い目玉をギョロリと動かしてグレーターミミックを見つけると、攻撃のために伸ばした触手諸共全てを切り刻んでいく……
ヘカテイアの攻撃は、大鎌を出した時点で既に終わっていた……
グレーターミミックより遥かに脅威なる魔物……特A級クラスの『イブリースシックル(悪魔の鎌)』を召喚していたからだ。
「あら?マモンも珍しくもう終わってるのね?もう少しはかかると思ってたけど……お互いちょっと苛々してたのね?何にしても早く出ましょう?あまりこの場所にモタモタしていると、彼等にとって墓石要らずの集合墓地になってしまうわ……」
「ああそうだな……ヘカテイア。今回は少しばかりやり過ぎた……正面の壁が完全に崩れるくらい力込めちまった。出る事には俺も賛成だ!早く逃がすぞ?このダンジョンが崩れて全員が埋まっちまう前にな!」
マモンとヘカテイアはお互い皮肉を言うかと思ったが、意外にも同じ意見だった。
しかし僕は、天井と左右の壁に擬態したミミックがいた時点で気がつくべきだった……まだ終わってないと。
本来ミミック種は、宝箱に擬態する事が多い。
その多くは油断を誘い、開封しようとした者を襲うためだ。
だがミミックの中には、それ以外の物に擬態する奴等もいるのだ。
大きい物だと本棚や机そしてベッドや暖炉で、小さい物だとツボや本そして樽などだ。
しかし相手がグレーターミミックの様な上級種ともなれば、擬態の大きさも大きくなるのは当然だ。
三匹も壁や天井に化けていたのだ……ならば僕は、もっと早く床も注意するべき場所に入れるべきだった。
その事に気がついたのは、戦いが終わったと勘違いした『感知』を持っていない貴族お抱え冒険者が切っ掛けだった。
「やったぞ!階層主……ダンジョンの主をファイアフォックスのメンバーが倒したぞ!精霊様も助けた様です……マックスヴェル侯爵様!!」
「ああ!そうだな。実に素晴らしい結果だと思う。それに精霊様を宿す武器ともなれば、それを所持する彼等ファイアフォックスの名は帝国まで届くだろう!是非今のうちに精霊様の宿る武器を拝見させて貰おうではないか!」
冒険者の言葉に呼応する様にマックスヴェルも喜ぶと、それは入り口を死守していた貴族の護衛冒険者に伝播していく……
そしてマックスヴェルは目線を僕に移した時、その先のマモンが崩した壁の先にある財宝を目ざとく発見した。
「ざ……財宝!?あの壁の向こうにあるのは財宝ではないか?それも箱の手前にある巨大なあの剣………王都魔術院の資料で見た事があるぞ?……どう見ても『マルミアドワーズ』ではないか!?火の神が鍛えたとされる名刀……まさか……失われたとされる旧王都で管理されていたのか!?」
「マックスヴェル……王都の資料には旧王都で管理していたという事実は一つも書いてなかったぞ?……だが……アレはどう見てもマルミアドワーズで間違い無い……伝説の剣の一つだ……何とこんな場所に……」
マックスヴェルとソーラーはエクシアが許可を出していないのに、部屋の中央部に向かおうとする。
しかし僕はそんな事など知らないので、炎の精霊アリファーンと話していた。
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