第741話「問題児ミミと隠れ問題児エルカーヤ」
しかし命令に忠実なのか、それとも暴れたいだけなのかわからないが、マモンとヘカテイアはヒョイヒョイと敵の背中を跳び歩きながら奥へ進むと、マモンが何かを発した途端、突如甲虫の群れの真ん中で大爆発が起きる……
マモンがいた場所で起きた爆風は凄まじく、周りの甲虫もぐちゃぐちゃになってこちら側まで飛んでくる。
マモンはまた奥へ進むと何かを叫ぶ………
『フローガ・ウズルイフ!!』
『ズドォォン……』
「さっさと燃えて灰になれ!!……さっきから虫の分際で俺様に噛み付くんじゃねぇよ!!クソ虫が!!『マカニ・シュナイデン!!』………ワラワラと鬱陶しいぞ……虫どもめ!!『フローガ・ウズルイフ!!』」
その様を見たエクシアは周りに指示をしつつ、近場にいる甲虫の首を斬り払うとすぐに僕のそばに来る。
「アンタ!マモンとヘカテイアに指示を出したのかい?」
「すいません……流石に余裕がなくて。この魔物の数ですから、猫の手も借りたくて………」
エクシアは『確かに仕方ない……少しでも数が減らせれば御の字だ』と言って目の前の魔物を斬り払う。
「くそ……肉食甲虫だから防御が高え……。戦士隊良いか、お前たちは乗り越えてくる魔物を確実に仕留めろ!!盾隊の隊列崩されたら終わりだ!」
タンクのテイラーとロズそれにソウマが混じった騎士団部隊が必死に魔物の突撃を防ぐが、防がれたその仲間を足場に盾隊の後ろに回り込む魔物たち。
昆虫だけに知能などほぼ無く、本能で行動する。
足場にしても、仲間であろうと容赦なく踏み台にして乗り越えてくる有様だ。
「エクシアさん、俺たちもマモンやヘカテイアと同じように戦います……此処で数をちまちま減らしててもこの数は流石に不味いです」
僕がそう言うと、待ってましたとばかりにカナミとミサが剣を抜き、颯爽と騎士団を飛び越えて魔物を斬り払い始める。
「ユイナさんにミクちゃんとあーちゃんはあまり奥に行かないようにして!私達は自分の役目を果たすから。行こうミサちゃん!」
そう言った後、流れる様な体捌きで敵の上を駆け抜けつつ、カナミは的確に魔物を仕留める。
対照的にミサはアーマー・ロックビートルの目の前で歩みを止めて、力技で大きなクレイモアを振り回しアーマー・ビートルである事など気にせずに叩き斬っていく。
「私とカナミは戦闘に慣れているから任せておいて!これでも数多くの魔物を仕留めてきたんだから!!」
ミサは笑顔でそう言うとクレイモアを振り上げて力一杯振り下ろし、上下に重なる二匹をまとめて縦方向に両断する。
「なんか……アンタの後ろにいるからあの二人を忘れていたけど……考えてみると化け物パーティーなんだよね……アンタのところ……って!!アンタ今度は何してんだい?」
僕もカナミやミサの様に出来る事をやろうと思い、水魔法を使おうとしたら召喚魔法を思い出した。
数多くの『餌』があるのだから、絶対に大喜びするはずだ……
エクシアの話を聞きながら、僕は魔法の準備をしていた。
『クワンダ・エストルァテス・ラ・ローボア……アクアパイソン』
魔法を唱えるとそこに現れたのは9メートルを優に超えるアクアパイソンだった。
前召喚した際に大量に捕食したせいで、かなり大きく育った様だ。
その上、天井も高く遮る壁もないので、他の個体ではなく前に呼んだ個体が応じた様だった。
マダラ模様の青い大蛇はチロチロ舌を僕に絡ませて『合図をくれ』と言っている様に思えた。
しかしエクシアが叫んだ問題は別にあった……魔法陣がいつもの大きさでは無かった。
理由は分からないが、大きさにしていつもの3倍は大きく、召喚されたアクアパイソンは2匹だったのだ。
もう1匹は側にいたのか、偶然呼ばれた様だ。
その個体周周囲をクルリと見回すと、すぐ側に自分より巨大な同種がいるのに驚いている様だった。
「アクアパイソン!アーマー・ロック・ビートルを捕食しろ!!」
僕の指示を待っていたかの様に9メートル超のアクアパイソンは大口開けてビートルを一気に捕食していく……
ついでに呼ばれたアクアパイソンもキョロキョロしてから、他の群れにあたりをつけて襲いかかる。
「エクシアさんこれで『此処は』どうにかなりましたかね?」
「この広い空間にこんな甲虫の群れが居たことにおどろいたが……弱肉強食って怖いもんだね。どんどん喰われていくよ。でもアイツら昆虫だけに恐怖って物を知らんのかねぇ?あのドデケェパイソンに挑んでやがるぜ?」
エクシアにそう言われて見てみると、必死に周辺に群れてアクアパイソンに噛みつこうとする。
しかし巨大な尻尾で『ビタン』と打ち潰される……するとアクアパイソンは長い舌を器用に絡めて潰したアーマー・ロックビートルを貪っていく。
そして、その間を縫う用にマモンがスタスタと歩いてくるが、どうやら見るからに怒っているらしい……アクアパイソンに獲物を取られて怒っているのだろうか……。
「おい!契約者………どういう料簡だ?俺たちに指示しておいてあの蛇どんどん食い散らかしてやがるじゃねぇか!それにあのアシュラムって言うアンデッド何者だ……それにミミって小娘が指示するたびにアンデッドが増えてやがる!!」
マモンがそう言うと、指さした方向には何故かスケルトンが群れていた……
そして、その後方にはアシュラムとギルメンに守られたミミがいる。
僕とエクシアはミミ達が何をしているのか説明を聞きにダッシュする。
しかし僕達の背後で悪寒がする………頸がゾクゾクする感じ
「サモン・スケルトン!!サモン・スケルトンキング!!サモン・ガスト!!サモン・デス・ナイト!!行くであります!!死んだ人達ーーー!!」
ミミだった………アンデッドの群れが魔法陣を通じて呼び出される……
それを見たエクシアがすっとんで向かう……
「ミミ!?アンタ………何やってんだよ?」
「え?何って……お師匠様がアシュラムさんを呼べって言ったんです!折角だからさっき知り合った、他の知り合いさんも呼ぼうかと……てへ?」
『てへ………じゃねぇ』……とエクシアがキレているが、呼び出されたアンデッドの群れが魔物に襲いかかる。
「アンタ!そもそもそんな呪文どうやって覚えたんだよ!」
「へ?エルカーヤさんが……本くれました。『使者の紹介』と言う本です……。さっき階段降りるときにアンデッドの知り合いの、アシュラムさんの話をしたんですー。そうしたらもう暗記して使わないからあげるって……。だから貰っちゃいました!」
ミミはそう言った後、『ジャジャーン!!』と効果音を自分でつけて本を前に突き出す……
「も………貰った!?そんなキモい物を?」
「結構珍しいからあげたり、売らないでくれって言われましたので……いくらお師匠様の師匠のエクシアさんでも……あげませんよ?」
「いらねぇよ!そんな気色の悪い本!!アンタ……も……貰ったってマジかよ……眼玉が動いてこっち見てるよ……気持ち悪りぃなぁ……。あの馬鹿!ニコニコしてたから油断した。よりにもよってミミなんかに……どう見てもこんな危険物を!!」
僕はその見るからに怪しい表紙の本を手に持つミミの精神を疑った……
苦悶の表情を浮かべる本は文字通り苦しみを『言葉に出して』訴えている……。
僕とエクシアは顔を見合わせてから、再確認の為に本を見る……
本と視線が合うと……『絶対にぃ………許さないぃぃぃ…………』と言っているが、その瞬間ミミはポケットから干し肉を取り出して、その口に突っ込んでいる。
「はい!お腹すいたんですねー!干し肉ですよー美味しいですね〜?」
「絶対にぃぃ……もぐもぐ………もぐもぐ………絶対にぃぃぃ………許ぅふがハグ……むぐ………」
ミミが細かく裂いた干し肉を、ど次々に口に詰め込むため『許さない』が言えない様だ。
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