第674話「敵ではありません!?空から落ちてくる魔物」



「そ!そうじゃぞ?こんなところに置いたら邪魔じゃろう?もっと開けた場所に置いて通行の邪魔に……『それも違う!』……じゃそうじゃぞ?」



 バラスは頑張って話を逸らそうとしていたがデーガンもお怒りの様だ……



「良いですか?連日では流石にギルドの資金も尽きてしまうのですよ?せめて前の素材の買取先が決まってから………『それも間違ってる!!』………そうですよ?」



 貴重な収入源と言いたかったデーガンだったが、目が『金』・『貨』になっているのでテカーリンが怒り出す。



「ポンコツしか居ないのか!この街のやつは!!………げふぅ………」



 テカーリンが怒り出したので、ミオの鉄拳が飛んだかと思ったがマッコリーニとハリスコそしてフラッペの『猛突撃』を喰らい吹き飛ばされる………



『ゴロゴロゴロゴロ……ぐしゃ……』………と聞こえた気がする……



「ゼェゼェ……ヒロ様!この素材もお分けを!このマッコリーニ王都や帝都、そしてその先まで行って参ります!必ず満足いく価格で売ってきて見せましょう!!」



「は……はぁはぁ……狡いですわよ!町人に金をばら撒いて私の足止めをさせるなんて!!マッコリーニ。私だって………この素材があれば貴方と同じ行程くらい販売経路を作って見せます!ヒロ様私にもチャンスを!!」



「お前たち……壊れた荷車を……毎度毎度丁稚に運ばせおって!!だがお前達なんぞ出来てその程度だ!ヒロ男爵様、ワシに任せてください!このハリスコ実は王都の先にある大帝の住う地の販売許可を持っています!なのでコレさえあれば、大帝様にお目通りが出来ましょう!」



 もはや君たちの好きにやってくれと言いたい。


 しかし事はうまく収まらない……ゼフィランサスだ。


「貴方達……これは私の娘が狩ってきた獲物よ?勝手に人の手で何かをしようとしている様だけど……肉は渡さないわよ?」



 3人はゼフィランサスの尻尾の『バチン』と鳴る地面への打ち込みの音で縮み上がる……



「ゼフィランサス様……この様なものを……空から落とされては…………困ります!!」



 猛突撃を受けたテカーリンはボロボロのふらふらになりながら、執念でゼフィランサスに物を言う……



「な……なんか悪かったわね………分かったわよ。でも貴方……なんでそんなにボロボロなの?もしかして……ケルベルスの下敷きにしちゃったの?娘が落としたから?」



「パパ!ママ!一応注意したんだよ?誰も潰さない様に……でも潰れたのが丈夫なテカちゃんでよかった〜」



 勘違いって素晴らしい……ゼフィと龍っ子は反省している。



 テカーリンがボロボロだったために、何故かゼフィランサスとの話がスムーズに進んだ。


 ぼろぼろにした相手が、マッコリーニたちだと言う事実は隠蔽しておこう。



 ちなみに翌日以降もし狩りをしても、離れた場所に起き僕へ知らせマジックグローブに片付ける事になった。


 そしてそもそも僕がいない時は、狩りをしても持ってこないと約束をした。



 そして最大の注意として、くれぐれも空からだけは『落とさない』と約束させられたゼフィランサスだった。


 しかし適当な火龍だ守るかどうかは明日の狩次第だろう……たとえ二人のご機嫌が良くても悪くても覚えているかどうか次第だ。



 狩りは火龍の習性もあるので、テカーリンは勿論僕でも止める事はできない。


 お互い共生するための方法で手を打った感じになる。



 僕はマジックグローブにしまい、薔薇村から帰ってきたら解体する事になった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 僕は宿へ戻り自室へ向かう。


 倉庫にしまってある食材調査と、火焔窟に閉じ込められた場合の非常食の注文をするためだ。


 倉庫を開けて中に入るが、珍しくアナベルもポチも居なかった。



 僕はスマホの時計を見ると時間は『8:14』となっている。


 まだ色々忙しい時間で、来ても話せる時間では無いのかもしれない。



 とりあえずポチが来た場合目的も熟せなくなると思い、肉まんとカップ麺を鑑定する。



 しかし何方も『変質中……完了まで24H』のままで時間は過ぎて無かった。



 『何故だろう?』と考えても答えは出ない……推測は出来ても正解は無いのだ。



 何故ならば、僕が知る人の中で誰も正解を知らないからだ。



 しかし見る限り倉庫とマジックバッグで明確な差があるとしか思えない。



 『此処は……狭間?まだ異世界に来る前って事か?』そう思いつつ僕は別に事に考えがいく……



 もしこの『食品を拡張』したらどうなるんだろう?と思ってしまったのだ……


 試したいが流石に危険だ。



 変質前の物を拡張して、それが変質したらそれこそ『食べるには危険』なのだ。



 ならばこのスキル『倉庫』を『拡張』できないか?と考えた……何か帰るための機能が増えたりしないかと……


 そして変質が止まるきっかけにならないかと……



 僕はマジックグローブに全ての食材や注文品をしまう。



 注文したテントも既に納品されていたので、どうやらポチは既に早朝に来た後の様だった。


 仕事は的確で早いなぁ……と思いつつ準備に勤しむ僕。



 どうなるかわからないが拡張はレジェンドスキルだし、かなりレアな物だ言う不確かな情報で自分を納得させる。



 そして意を決して『拡張』をすると……



 拡張をかけた瞬間、一瞬で倉庫の外に弾き出された。



『ドガン』



『ゴン……ゴロゴロ……』



「い……いってぇ……一体何が!?やっぱり『ユニークスキル』を『拡張』は不味い事だったか………」



 吹っ飛ばされた勢いが凄かったので、体に怪我がないか確認する。


 そのあと部屋を確認すると、目の前に設置した筈の倉庫のドアが消えていた。



「おい?大丈夫か?何やら凄い音が聞こえたが?……」



 下の食堂から宿の亭主が心配して声をかけてくれた。


 非常に強く壁に叩きつけられたので、凄い音だったしびっくりするのは当然だろう。



「ああ!すいません。荷物をまとめて動かそうとしたら……すっ転びました……横着しない方がいいですね!」



 誤魔化すために部屋の扉を開けて顔を出してそういう。



「ははは!気をつけろよ?またてっきり何か造ってるのかと思ったぞ?ははははは!」



 亭主のお爺さんにそう告げてから首を引っ込めて、倉庫の扉があった場所に向かい恐る恐る壁を触るが……既にそこには何も無い。


 僕は壁に向かって『倉庫』スキルを使うと『金細工がされた大きな扉』が現れる……まさに拡張されていた。



 ドアのノブを握り中に入ると、もはや其処は『店舗』になっていた。



 店舗の大きさは陳列棚が4つ入りそうな位の大きさで、壁には既に棚などの設備がある。


 店舗の最奥部には枠だけの扉があり、中は見慣れた倉庫になっていたが大きさは学校の体育館位の面積だ。


 体育館くらいの大きさの倉庫の両端には入ってきたものより大きめの扉が4つあった。


 状態からして拡張前にあった各箇所で作った片方通行の移動扉かもしれない。



「ちょっと……あんた……何だいこれは?何したのさ?」



 僕は声がしたので後ろを振り返ると、エクシアだった。


 ビックリした事に、倉庫スキルで作った『店舗部分』に入ってきているのだ。



「え!?エクシアさん?なんで『僕の倉庫』に入ってるんですか?」



「え!?これアンタの『倉庫スキル』かい?って言うかなんで入ってるか聞きたいのはアタシだよ!!ロズの件で部屋に来てみたら扉があったから……ちゃんと声をかけたんだよ?風呂とかトイレとかかもって思ってね?で開けてみたらアンタがいたから入ったんじゃ無いか……」



「え?じゃあこの扉からは防音構造になったのか!!中も見えない様になって……手探りなんですよ。実は倉庫に『拡張』使ったらこうなりました。調べている最中にエクシアさんが来たって感じですね……」



「かぁ……あんた相変わらずバカだね……ところでこれなんだい?」



 そう言ってエクシアはモノリスプレートに不用意に触る。

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