第666話「続・ガラスの靴争奪戦」


「ミオさんは第一夫人です。ちなみに私は第二夫人の『シャイン』で、ヒロ様と同じ『冒険者』で御座います。まさか冒険者もご不満で?」



 ホームズは『やっちまった!』と言う顔をして、僕に助けを求めている。


 だが残念ながら僕には止められないコンボ中だ……



 今のはハメ技の『中パンチ』か『大キック』位で、これからが『必殺技』だ。



「私はゼフィランサス……火龍ゼフィランサスと言えばわかるかしら?私の家族を馬鹿にしたら……あなたの国など1秒として持たないわよ?良い事……彼の家族には二度と差別的な言葉を使わないようにね?私は貴方達帝国貴族に対して、この王国の貴族より興味がないの……と言うか人間に興味がないわ。今すぐでも草も生えない焼け野原に出来る事を忘れないようにね?」



 特に驚いたのはゼフィランサスの言葉だろう……間違いなく今夜ホームズからは『伝書鳩』が飛ぶだろう。


 ……だがそうはさせない。



 これ以上、問題濃い目の悪辣貴族マシマシはたまりません……



「シャーロックさんにホームズさん、ゼフィの事は内緒でお願いしますね?『伝書鳩』も口外も禁止で?静かに暮らしたいので……。面倒な貴族が何かチャチャ出されると困るんです……」



 僕がそう言うと……困った事に余計な言葉が加わる……



「何よ?簡単じゃないの……帝国の国民全員ダンジョンに放り込めば私の眷属が美味しく頂くわよ?……魔物より食べやすいんだから……。折角だから帝都丸々ダンジョンにしましょうよ?大きいと色々と便利よ?」



 ヘカテイアの冗談は、何処まで本気で何処からが冗談かいまいち分からない……やろうとすれば本当に出来そうだからだ。



「そ……其方の方は?」



「え?……偶然通りかかった『悪魔』よ?ねぇマモン?」



「おい……『俺』に言ったんじゃねぇよ!今の『其方』ってのは……俺はマモンだコイツは……ヘカテーと言えばわかるか?」



「マ……マモン!?ヘカ……ヘカテー!?」



「失礼ね!ヘカヘカテーじゃ無いわ!『ヘカテー』よ!」


「もうお前黙ってろよ?めんどくせぇよ!」



 ヘカテイアは笑いながらマモンを蹴飛ばすと……『私達は下でエールと串肉でのんびりするわね?……人間らしく?……うふふふ』と言って降りていってしまう。



「その……何と言いますか……」


「今は『ガラスの靴』問題の話ですよね?外野は気にせず、其方を早く話しましょう。」



「「はい!『是非其方の方向』で!!」」



 面倒くさい事になってしまった……周りが面白がって彼等を『揶揄う』ものだから……



 鉱山に新たに増えた問題で、鬱憤が溜まっていたからって『彼等』は悪くない。


 両方とも王様に泣きつかれたのは目に見えている……まぁ……話が進まないから意地悪したくなった気持ちはよくわかるが……



「ひとまず説明しますね?この靴には危険な『能力』があります。不可避の『禁断症状』です!意味わかります?」



 一応注意事項を説明する……するとシャーロックが……



「当然で御座います!我々とて馬鹿ではありません。その使用法は十分注意しています。王宮の宮廷魔術士にマジックアイテムの専門家が居ます。その者に『特殊能力』の封印をしてもらう予定です。必要なのは『美貌』のステータスです。王家には無ければならぬ必需品となりましょう!」



「帝国の皇帝陛下も同様にお考えです……何卒!何卒……帝国の皇帝陛下に!!」



 睨み合うシャーロックとホームズ……


「ああ……テカーリンさん王都への『献上品』っていつ予定ですか?」



「あ……ああ……直ぐにでも……今からフラッペの氷菓屋に行けば大丈夫だろうが……お前だがそれをここで言うか?帝国のはどうするんだ?黙って引き下がれないだろう?」



「ふぉっふぉっふぉ……テカーリンさん、まだまだ甘いですね?ヒロ様はもう一足を私に持って来させるのでしょう?今直ぐお持ちしましょう。さて、マラライの弟に初仕事させねばならないですね……テカーリンさん衛兵達を借りても?」



「え?何に………あ!ああ……ああ!そうだな確かに!……衛兵長に直ぐ伝えよ。氷菓屋へ衛兵を10名、マッコリーニ商団へ衛兵を10名派遣せよ。付け加えて置くんだ『かなり』急げとな!」



 僕は自分の持っている危険物を処理するつもりだったが、マッコリーニの嗅覚は素晴らしい……


 帝国にも恩を売り自分の危険物を処理する事に成功したのだから……



 周りはマッコリーニが何足持っているか知らないので、マッコリーニが帝国に分けた分が最後といえば問題ない。


 何故ならば既にハリスコの倉庫でガラスの靴が3足も割れたからだ。



 更にマッコリーニが進んで帝国に渡した時点で『帝国の助力』が得られるのは間違いが無い……悪感が何かをしようか企めば、マッコリーニの願いで帝国が動き、地の果てまで追いかけられるだろう……



 当然僕もその恩恵が貰える……目の前に宮廷鑑定士が居るのだから間違いない。



「マ!マッコリーニ様!!本当ですか?では、是非!手に入ると皇帝陛下へお伝えしても?」



「ふぉっふぉっふぉ……。できれば遠征部隊として『トロル』を7名護衛で帝都まで連れて行くことをお許しくだされ。我々も実は数日の内に、もう遠方へ『行商』へ行かねばならないのです……」



「ト……トロルの護衛隊!?ナント………末恐ろしい………そんな事が可能なのですか?」



「実は既に帝国へ行く算段があったのですよ。付け加えるならば、今朝帝国領への通過許可は取っています。ただ、流石に帝都には立ち寄れないと思っていたんですよ。トロル同伴ですからね?まぁ暫く本陣は野営でもして、私が直接皇帝陛下に御渡しをする方向で考えていたんです。ですが、それが許可されるのであれば『より安全』にお持ち出来ます。あ!因みに『割れる』とこうなります」




 マッコリーニが悪どい!!


 酷く計画的だ!!これが悪徳商団でなければ何と言うのだろう!!



 『割れた破片』まで持ち歩けば、手にいれる方は『嫌』と言えるわけが無い!!悪どい!!



 絶対の先を読んでいた……先読みが得意なマッコリーニには、囲碁でもやらせたほうがいいだろう……名人にもなれそうだ。




「ヒロ殿……いえ……ヒロ男爵様は考える事が一歩も二歩も進んでますな?確かにトロルの護衛隊など……襲う輩などいません!捕まって喰われるのがオチでしょう……因みに……安全なのですか?トロルの護衛は?」



「気になるなるならば、このギルド前にあるテントにお入り下さい、中にいますぞ?」



「テ……テントと言うとあの小さな?まさか……そんなまさかあの小さいテントにトロルが入るなんて……ハ!まさか……マジックアイテムのテント!?………」



 鑑定士二人はソワソワが抑えられないようだ。



「実は緊急会議中でして……要件が終わったら御開きに。まぁ詳しくはマッコリーニさんとテカーリンさんに言って貰えますか?多分それで問題なく終わるでしょうから?宿泊先が無ければトロルのテントにどうぞ?部屋がたくさんあるし、テントは僕のなので……まぁどっかで雑魚寝が一番楽でしょうけど……奥まで歩くの大変なので……」



 ソワソワがワクワクに変わって、シャーロックとホームズはテカーリンをせかし始める……



「ちょっと待て!え?俺が窓口?巻き込むつもりか俺も!?……俺は会議に……」


 そう言うとデーガンと受付嬢オレンジが…



「無理だって……ギルマス……両国の陛下だぞ?靴に何かあったらどうするんだ?」


「そうですよギルマス……ここは私達が話を聞けますが、悪漢が靴を奪いに来たら『免職』では済みませんよ?」



「ああ!くそ!国王陛下と皇帝陛下絡みだ……確かに放っておけねぇ……くそ!ヒロ覚えていろよ!」



 そう言って席を立つ……『お前……ダンジョンでもやったよな!……お前!絶対わざとだろう!!』と部屋を出る最後まで文句を言っていた。



 『細かい男は嫌われるよ?』と言いたかったが、ほぼ拉致される様に行ったのでバッタリ後で出会わないように注意しよう。

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