第646話「お留守番で大激怒!?」
僕はバロールを怒らせた様で、バロールは胴体にある一際大きい目玉で僕を睨み付ける。
『人間の小僧が……我を笑い物にするだと?殺して喰らってやる!』
「ヘカテイアさん?あの眼玉……何処に口あるんですか?眼玉ですよね……何処に?」
「ぷ!……くくくく……眼玉じゃないわ『バロール』よ?口が何処かは私も知らないわ!一緒に食事なんかした事ないもの?今度地獄に戻ったら招待するわね?バロール……その時に口の場所を教えて頂戴……ぷっ……くくくくく……」
「がはははははは!!お前!本当にひどい奴だな?悪魔をコケにする人間なんぞ、見た事も聞いた事もないぞ?それにアレでも一応魔王種だからな?ああ……これはいい土産話ができた!!」
僕は悪気があって言ったわけではないが、尚更バロールを怒らせた様だ……
「ヒロ!お遊びはそれ位にしな!魔物が来るよ魔法陣……9……11……まだ増えるねぇ……」
とめどもなく現れる魔物だが、今まではバロールの威圧で他の冒険者は全く動けなかったが、怒りの矛先が僕の方へ向いたせいで対処できる様になった様だ。
しかし新たに発生した魔物の多くは、ヘカテイアやマモンそしてバロール周辺に近寄らないようだ……
戦闘に巻き込まれてしまうと、並の魔物では肉片にすぐになってしまう……それを本能で察知して居るのだろう。
そして湧き出た魔物が眷属で無い以上、三匹とすれば魔物など何処にでも居るどうでも良い存在だから尚更だ。
しかし問題は全くおさまらない……寧ろ増える一方だった。
何故かと言えば、上層階に行ったはずの貴族達がどんどんと転送陣で飛んで来たのだ。
どうやら上の階で冒険者を雇った様だ。
この階層に魔法陣で来る以上、五階の階層主と戦った経験がある冒険者だろう。
割と小さい安全部屋は、あっと言う間にひしめき合っている状態だった。
しかし僕達は、その部屋に向かい事情など聞いている余裕はない。
しかし次の瞬間、彼らがきた理由が嫌でも分かってしまう……
「退いてよ!パパに会いに行くんだから退いてよ!狭いの!狭〜い!!がるるるるるるる」
冒険者でひしめく安全部屋だったが、聴き慣れた声が中からする……龍っ子の様だ……
突然龍っ子の声が安全部屋から聴こえたと思った瞬間、全員が階層主に部屋に逃げ込んでくる……
龍っ子の『火龍の威圧』がもろに炸裂した……
逃げ場は下層階と階層主部屋しかないので、一番近く逃げる場所はそこしか無かった……
しかしそこは、既に魔王種が戦う危険エリアだ。
そして安全部屋には、何故か魔物である筈の『龍っ子』がいる。
流石にゼロ距離の龍種威圧は恐怖でしか無いだろう……小さいとはいえ火龍なのだから。
「ふぅ……狭かった!!……パパ!お手伝いにきたよ!狩りの練習について行きなさいってママが言ってたの!でもミオのオネェちゃんとご飯食べてたら置いてかれてた……酷くない?パパ?……娘置いてってさー」
「いや……ミオさんにお願いしたんだけど?帰ってくるまで、言葉教えてって?読み書きできないと街では大変なんだよ?」
「…………おお〜凄い〜!こんなにいっぱい練習台が!!」
思いっきり勉強が嫌いなのがよく分かった瞬間だ……完全に『勉強の言葉』を無視したのだから……
何も言ってないのに部屋に入ってくるなり、龍っ子はバロールをぶん殴る……
当然の如く戦闘に参加する龍っ子……
そして小走りで僕に近寄ってくる冒険者達がいた……
「も……申し訳ない。ギルドで元気をなくしていた姿を見て見いたんだ……そしたら母もヒロも居ないって泣き始めたから……仕方なく居場所を……」
そう話したのは、天翼の獅子のウルフハウンドだ。
当のウルフハウンドは、魔王種バロールにホムンクルスの身体を貰ったヘカテイアとマモンの威圧で、縮こまっている。
顔からは『来るんじゃ無かった』と読み解ける表情が滲み出ている。
しかし彼等多数が入場したせいで問題は当然起きる……
魔法陣が幾つか更に浮かび上がり、見慣れた獄卒が二匹現れる……
『クックック……こんなチャンスが来るとはな。ヘカテイア!ダンジョンは俺に味方を………がぁ!バロール??………ヘカテイアにマモンはどこ行った?龍種の幼体………なんだこれ!』
『ヘカテイア!俺らを還したつもりだったのか?ダンジョンはそう甘くないようだぜ?おお!?……バ…バロールだと!?……何がどうして……ほんの少しの間でこうなってんだ?』
少し前に見たヘカテイアの攻撃より、酷い状態が晒されている……
龍っ子はダンジョン部屋の戦闘を『狩りの練習』と勘違いしたようで、手当たり次第に魔物を切り裂き、引き裂き、握り潰した……
見慣れたわけでは無いが、モブと認識せざるをえなかった獄卒擬きの2人は、再登場した矢先に龍っ子のブレスで黒焦げになり送還ゲートが開く……
去り際の言葉は『なんだよ!またかよ!!』だった……所詮モブなのかもしれないが、元が何なのか位は知りたかった。
魔物の殆どは、追加で雪崩れ込んだ人間たちの影響により魔法陣が強化され『狂乱』状態になった。
その為に龍っ子が起こす恐怖や恐慌の効果を打ち消した。
狂化したのミノタウロスが群れで果敢に龍っ子に挑むが、2.5メートルは有ろうグレートアックスは簡単に捻じ曲げられ、時にはブレスで溶かされた。
しかし残念なことに、多少倒してもどんどん湧いてくる。
魔法陣の数は最低でも11個はある上に、貴族含めて沢山の冒険者と貴族が中に入ったせいで、既に幾つ出るかも分からない。
魔物排出に従い、どんどん減ってく『穢れ』……楽しそうに狩る龍っ子……
リーチウム伯爵に激怒される悪辣貴族達と実の父親。
助けに来たはずが巻き込まれて、阿鼻叫喚の後続冒険者組……
それは『地獄』と言うには、正にふさわしい光景だった……
何故ならば、初めから戦っていた僕達は既に蚊帳の外だからだ……
バロールの相手は既に取って代わられて、龍っ子がメインアタッカーになり、ヘカテイアとマモンはサポートに回っている。
二人がバロールに手を出すと、龍っ子に『邪魔するな』と言われて噛み付かれるのだ。
「なぁ……ホプキンスこれ食うか?」
「ああ、エクシア貰うぞ!その……なんて言うか……すごい遠征だな?この状況下で生きてられるのが嘘のようだ……メンバーは嬉々として素材拾いやら、エクシアのパーティーと連携組んで戦闘を楽しんでいるが……。それにしても……オレ達はここで肉を食ってて良いのか?」
「今はこれでも良いんじゃねぇ?問題はこの後だ!この後!!この全てを仕組んだヒロでさえ想像が付かないんだからね!宝箱が……怖いわ………まじで。はぁ……なんて誤魔化すかなぁ」
そんな会話を横で聞きながら僕は……『確かに滅茶苦茶だなぁ……パーティー分の宝箱か……揉めそうだなぁ……』と現実逃避をする。
僕がふとバロールの方に目をやると、ドラゴンブレスをまともに浴びるバロールが居た。
周囲のひび割れた空間も同時に焼かれて元に戻っていく……広範囲のブレス攻撃だ。
「この我が……負けるだと?……我はヘカテイアにもマモンにも負けてはおらん!その龍の娘に負けたのだ!末恐ろしい狂気の龍の娘にな!!」
「いいから消えろよ!分かってるよ……相手がまだ幼体だってのが、心底恐ろしいぜ……」
「そうよ。さっさと消えて……バロール。此処に居ても貴方は虚しさが残るだけよ?」
バロールは空間に押しつぶされ消えてしまう……
龍っ子はこの戦闘に満足し足りないのか、『たかが弱めのブレスで消えるな、弱虫!帰ってこい!』と無茶を言っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。