第638話「ダンジョンコアの妙案」
ヘカテイアに関しては『力を得た理由』と、『地獄から出られなくなった理由』は確実だと思われる。
そして既に彼ら等が呼ばれた時点で『スタンピード』が起きるのは間違いない様だ。
そして会話がまだ続く……
しかし会話が終わる時は、片方が死ぬ……もしくは、ヘカテイアが僕を諦めて狙いを切り替える場合だ……
「いいか?俺等二人がここで負けて帰れば『スタンピード』が起きねぇって事じゃねぇ。『この後』もあるんだよ!俺達は言わば前哨戦だ。意味がわかるか?本番はこれからだ!お前が心臓を作ったガキが死んだらどうなる?それでも『意味がある』のか?」
「馬鹿はテメェだよ!それをワタシが知っていねぇと思ってんのか?あのガキと仲間は全員『転送陣』で此処から放り出すに決まってんだろうが!」
「ヘカテイア!テメェが『いねぇ』のに『転送陣』をどうやんだよ!!」
「心臓にワタシの意識を移しとくに決まってんだろうが!術式が厄介だから自我は殆ど消えるが魔法は確実に発動する……」
「それで人間に戻るのか?いつ転生するかわかんねぇのに?そんな意味がわからねぇことで目的は果たせんのか?」
「ワタシは『馬鹿』じゃないよ!『召喚の儀式』も組み込むに決まってんだろう?わざわざ遠回りに説明させてテメェは何が知りたいんだい?」
「やっぱり姿くらませる気だったんじゃねぇか!だったら尚更行かせねぇに決まってんだろうが!……テメェが地獄から完全に消えて均衡が崩れたら、間違いなく『封印』が壊れるだろうが!!」
「だからなんだってんだい?しらねぇよ!さっさとワタシの変わりを見つければいいだろうが!」
「それが出来ればテメェに構うかよ!!」
何やらきな臭くなってきた……『あの獄卒擬き』は『ヘカテイア』と協力状態にあるらしい……
そして『封印』なるものがどんな物かは分からないが『絶対にやばい』ことだけは言える。
何故なら圧倒的にやばい、あの二人が協力すると言う事なのだ。
僕としては心臓なんか作ってもらう必要はないし、寧ろ獄卒擬きのお願いを聞いて『封印』を守っていて欲しいものだ。
その封印が壊れることで、僕達が救われるなら話は別だが、たとえ救いであっても間に合わないだろう。
まさか僕と獄卒擬きの接点が生まれるとは思わなかった。
ヘカテイアには大人しく帰ってもらい、獄卒にまた負けて貰えば『スタンピード』で二人は外に出て、死ぬまで暴れなくても済むはずだ……そうすれば一つ目の獄卒問題は解決する。
だが『ヘカテイア』は納得しないだろう……戻る前に、なんとか心臓を造ろうとするはずだ。
だが、ダンジョンの転移陣で地上へ逃げる選択肢はダンジョン深化を含み、かなりヤバいことだけは言える。
あの二匹の獄卒がが『揃って外に出る』そしてそのあと『新しい何かが現れる』のだ……
非常に困った状況だ……考えに考えるが解決の糸口が見えない。
『報告が有ります。マスターの思考要請より解決法を模索。マスターの記憶ベースにある『ホムンクルス』が解決法の最有力候補と思われます………』
ダンジョンコアに急に話しかけられたので僕はビックリしたが、色々考えていたせいで、コアは『相談』と思ったようだ。
ちなみにダンジョンコアの解決法は、ヘカテイアの身体の一部からコアを作りホムンクルスのコアにする。
こうする事でゲートからの直接指示は免れる形になる。
何故ならばホムンクルスは僕が作るものだからだ。
命令の書き換えに当たるらしい。
僕はそのホムンクルスへゴーレム同様、命令を考える……要は人への危害を加えない制約をつけると言うことだ。
そして基本はダンジョン最下層での生活とする……こうする事でヘカテイアは『探しもの』をしにいける。
ダンジョンと切り離された、ホムンクルスならではの自由行動だ。
ただし、ちゃんと帰ってこないと何処で何をするかわからないので、そこも詳細を決める必要がある。
ちなみに、獄卒と地獄にある本体の繋がりについて、仕組みや構造は一切コアに情報がないので不明だそうだ。
しかし、どうやるかわからないが自分自身を『獄卒』にすることが出来るならば、ホムンクルスから戻るその方法があるのでは無いか?との事だった。
そして彼らがいた場所へ戻るための最も有力な方法は、異物としてコアに既にある『ゲート』だ。
このゲートの情報を得る為にも、この案がうまくいけば獄卒から情報を吸い出せるそうだ。
その有力な手段は、ゲートの使用だ……コアに異物として入っているので、情報はそのまま直結してダンジョンコアに伝わるそうだ。
ホムンクルスでそのゲートを利用すれば、少なくとも元の場所へ帰れるのではないか?と言う事だった。
ちなみにヘカテイアでない方の獄卒擬きに関しても同様に『ホムンクルス』にしてしまう。
何故ならば『退治』しない事にはダンジョンの深化はとまらないからだ。
だからホムンクルスに移してしまうと言う事だ。
地獄から逃げられたくないのならば、一緒にくっついて回る他はない……と言う事だ。
話に乗るか反るかは分からないが……
ホムンクルスと獄卒の力の差は歴然なので、この後くる『ガーディアンの何か』への助力は期待できないと言う。
しかし情報については、この二人から間違いなく得られるので何もないよりはマシ……と言う判断でもある。
ちなみにこの場合、ホムンクルスに人格を植え付ける手間が省けるので、即時運用が可能になるそうだ。
通常だと、言語習得や歩行訓練からするそうだ。
ゴーレムと違い『知能』や『運動神経』があるので命令だけでは身体は動かないという。
ホムンクルスのメイン素材は目の前にある……獄卒だ……できればコアである獄卒の魔石が良いが、そこは無理なので自前の魔石を代用する感じだ。
あとは魔物の骨などが必要だと言うが、あのギガンテック・ブラックマンバの遺骸がマジックグローブの中にあるので平気だ。
因みに使う骨は獄卒でも良いが、その場合ホムンクルスが完成する前に、骨を取り出す時点で獄卒が死んでしまう可能性もあるのだと言う。
寧ろそっちの方が話が早いと思ってしまった……言葉として言わずにいたが、頭で考えたので伝わっていた……まさに筒抜けだ。
問題はどうやってそれを知らせるかだ……迂闊に近寄れば間違いなく死ぬ。
遠くから話せば悪辣貴族に全てがバレる………
ちなみに話しても成功するとも限らないので、危険が危ない階層主部屋の中より、安全部屋から話す事が重要だ。
話を大方聞き終えて考えに集中していると、誰かに呼ばれている気がした……エクシアだった。
「おい!聞いてんのか?ヒロ?」
「え……!?」
「あちゃー!やっぱり聞いてないっすね!って言うか何か考えてたって事っすね?この感じ……」
いつにの間にか考えに集中して、周りの声が聞こえなくなっていたようだ。
僕は周りの顔を確認してから話す……悪辣貴族はソーラー侯爵とリーチウム伯爵だけで充分だ、厄介が増えるのは勘弁願いたい。
「実は方法がないわけでは……ないみたいです……」
僕がそう言うとソーラー侯爵が食いつくように一番に質問する。
「見たいとは?……どういう事だ?」
「ちょっと落ち着けよ侯爵様……それを話すって言うんだけど、それを話せない『状況』になってるって事だろう?」
エクシアは鋭い……ソーラー侯爵達は僕について何も知らない、そしてこのダンジョンについてもだ。
「流石エクシアさんですね……その通りです」
「今此処にいるメンバーで問題があるとすれば私と息子のリーチウムって事になりそうだが?」
「父上……『私』ではなく『父上と金級グループの天響の咆哮』だと思います」
「な!?何故だ?彼等は金級冒険者だぞ?お前が入り彼らが問題とは……意味が益々分からんぞ?」
リーチウムは口が裂けても言えない……と言う表情をするが、トラボルタはすぐに理解したようだ。
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