第600話「ダンジョンの巧みな罠……持ち帰った危険物」


 魔石やお金そしてミスリルのインゴットは嬉しい品物だった。


 これをもっと早く知っていれば、ドワーフ達は喜んだだろう。



 その他には全般的に、マジックアイテムが多めの内容であった。


 サインペンやシャーペンが使えなくなったら役立ちそうな『インク要らずの羽ペン』はダンジョンのアイテム的のはハズレだろう。


 冒険者はこれを得た場合、嬉しいのだろうか?


 鑑定してもインクが切れないだけなのだ……僕には用途も意味もわからない。


 後でエクシアかロズ、もしくはシャインかテイラーに会ったら聞いてみよう。




 続いて僕はフレディ爺さんが戯れに倒した、鉱山のダンジョン5Fの『階層主の褒賞』ランクA箱を開ける。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


『階層主の褒賞』ランクA箱


グレート・アナコンダ・レザーアーマー


グレート・アナコンダ・ポイズンランス


グレート・アナコンダ・スキンマント


グレートアナコンダの卵(孵化可能)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 内容は4個だがグレートアナコンダ祭りだった……水曜◯ードショーを見ている気分だ……


 そしてグレートアナコンダの卵は(孵化可能)となっている……誰があんな巨大生物を孵化させるのだろうか?



 生まれた当初は相当小さいかもだが、ダンジョンがこんな物を用意するとは……


 そもそもアナコンダは、メスのお腹の中で卵が育ち孵化をして幼体が生まれる筈だ。


 この卵はその直前という事になる。



 悪の秘密結社かDNAを解析する変な学者でもこの世界に呼ぶ気なのだろうか?


 ひとまずグレートアナコンダグッズは放置して次の箱を開ける。



 宝箱3箱で、これも鉱山で見つけた。


 未踏域にて発見した物で、鉱山と言えば当然フレディ爺さんだった。



 報告は済ませていたが、色々あってノーチェックの3箱だ。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 宝箱 Cランク


金貨袋(50枚)


下級ポーション2


シルバー・ダガー



 宝箱 Dランク


銀貨袋(100枚)


傷薬(大)1


+3バックラー



 宝箱 Dランク


穴の空いた・レザーアーマー


折れたロングソード


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 ショボかった……ヒドかった……3箱目はゴミを持ち帰ってきただけだった。



 Cランクの宝箱は所詮、設置されたタイプだけあって中身が期待できる内容ではなかった。


 2箱目はあげたはずのバックラーが帰ってきた……あげた物より修正値は大きくなったが、この世界の装備は『アナベル人形』の様に何処かに処分すると返ってくる感じだ。


 後でマラライに紛失していないか聞いてみよう。


 僕は開けた順にマジックグローブに回収していくが、グレートアナコンダの卵をマジックグローブに入れて永眠させようと触った瞬間、孵化してしまった。



『パチクリ』



 目があった瞬間……懐かれた……


 なんだろう……『孵化可能』ではなく『孵化直前』の間違いでは無いだろうか?



 絶対に罠だ!としか言いようがない。


 それも卵はバスケットボールサイズで、グレートアナコンダは中に丸まって入っていた様なので幼体でもかなりデカイ。



「クルルルル……クルルルル……」


 親と思っているのか鳴いてなにかを知らせてくる……お腹が空いているのだろうか……


 ひとまず僕はゼフィランサス達が食べるには適さない、オルトスのスジ肉部分を切って目の前におくと丸呑みをする。



「クルルルル!!クルルルル!!!」



 どうやら美味しいと言う合図だろう……ユサユサと横に揺れ始める……


 つい面白くなって、筋張っている部分を更に切って渡してみる。



「クルルーールル!!クルルーールル!!!」



 上機嫌の様だ……たしかにゼフィランサス達にはどうかと思える肉でも、人族は美味しく食べている。


 この肉もしっかり煮込んだら、多分美味しいスジ煮込みが出来るはずだ。



 そんな物を魔物にあげれば確かに喜ぶだろう……



 それに生まれて間もない魔物だけに、親が得てこなければ希少肉など食べれないのだから……



 しかし火龍と違うのは『そこまで腹ペコじゃない』という事だ。



 既に目がトロンとして、お腹いっぱいで寝そうな雰囲気を出している。



 仕方ないので宝箱の中身を片付けながらどうするか考える……



1、何処かのーダンジョンへ返す……


 絶対却下だ!1000%誰かがいずれ死ぬ……そしてボス部屋に居座られたらそのダンジョンは終わる……



2、遠く人里から離れた場所にへ離す……


 まぁまぁありだ……問題は捨てられたと勘違いして恨みを募らせ周りを襲わないか心配が残る。


 まぁ野生の蛇はすぐに独立するだろうから問題なさそうだが……仮に親のそばに居たら食べられてしまうかも知れない。



3、育てる……


 これ以上増やすわけにはいかない……ユイナの激怒が目に見えている……


 そしてミクの呆れ顔に、アーチの馬鹿笑いとミサとカナミの白い目は確実だし……ミサとカナミはレベル的に世界を渡り歩いた時に、この魔物の脅威を知っているだろう。


 ちなみにソウマは僕と同じでコッソリ餌をやりそうだ……



4、後腐れなく終わらせる……


 一番周辺への問題がないが、僕の不注意で孵化させた感じなので心が痛い……魔物にもたくさん種類がいるからだ。


 敵になるか味方になるかは、その個体次第と分かったし……



 僕はうつらうつらしている、グレートアナコンダの幼体の頭に剣を突き立てることができずに、結局連れ帰る事にした。


 問題は後回しにしよう……もし困ったら、ひとまずはトンネルアントの巣に匿おう。



 眠そうなアナコンダの頭を撫で撫でして、体に巻きつく様な仕草を手ですると、理解したのか巻きついて来た。


 ヒヤッとして、なかなか気持ちいい。


 違う!そうじゃない!!



 僕は長い尻尾を腕に巻き付け、アナコンダの顔を肩に乗せてからクロークを羽織る……するとアナコンダは器用に巻き付いたまま寝始めた。


 これでグレートアナコンダとの二人羽織の完成だ……芸を仕込めばバレずに済む!バレてもパートナーと言い切ろう!


 しかし成体になったら背負えない……どうしよう……じゃない!



 それも違う!!絶対に違う!!



 開封部屋の外に出ると、すぐにギルマスの呼び止められる……



「なぁ?男爵様……それって隠れていると本気で思っているか?実は言い辛いんだが……こっちは若干緩やかな傾斜になってててな?全部丸見えなんだけどな?その蛇はなんだ?今まで一緒に居た部屋にも何処にも居なかったよな?」



 そう話したギルマスだったが、横にいた見慣れない冒険者たちの一人が酷い剣幕で僕に突っかかる。



「くっ!!ソイツは!!グレートアナコンダの幼体だ!!俺たちの宿敵だ……よこせ!ぶった斬って装備の足しにしてやる!そこの冒険者のガキ!今ならソイツを連れて歩いてたことは見逃してやる!!さっさと寄越せ!お前には何も選ぶ権利なんかない!俺は銀級のウルフハウンド!天翼の獅子のリーダーだ!!」



 そう物騒な事を言う男にギルマスのテカーリンは……



「ウルフハウンド!!少し落ち着け!!……ヒロ男爵様?本当なのですか?って言うか……おおよそ間違いではないですよね!その顔は……何故!?何故ですか?こうやって問題事を増やしていくのですか?攻略会議出ましたよね?その議題にもなった5Fの階層ボスが何故此処にいるんですか!!」



 それは僕が聞きたいし、箱を開けたら居たとは言えない……


 しかしグレートアナコンダをどうにかするには、チャンスかも!!と思ってもしまう……



 しかしそんな風にしてしまったら、人間のクズの様な気もしてならない!


 神様もし貴方が僕の立場なら……どうするつもりだったんですか?……正解を教えてください!!



「魔物など全て斬り捨ててやる!俺の装備を破壊しただけじゃ飽き足らず、ギルドまでガキをよこして来やがって!お前を産んだ成体のグレートアナコンダにお前の死骸を投げつけてやる!人間様の様に知能も碌にない魔物風情が!人間様のところに来た事を呪うんだな!!」


 残念だがその成体と思われる魔物は、『フレディ爺さんが戯れに倒した』……とはとても言い辛い雰囲気だ。


 それに彼は知らない……彼のセリフに激怒している真後ろの存在を……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る