第599話「久々の解錠作業」
「ちょっと待ってください!ヒロ男爵様!Sランク箱に罠が残っているんですか?転送罠は地上でも発動しますよ?万が一の場合は、街の壁の何処かって事だってありますから!アラームの間違いでは無いんですか?」
「いやいや!オレンジさん転送で間違いないですよ?その時も危険だからって誰も手を付けなかったんですから……」
「いやいや……何を言っているんですか平然と?それであれば今も同じでは?鍵を持っているって言いましたが、ランク鍵ですよね?鍵があれば、箱を全部開けられるわけでは無いですよ?箱ランクに合わせたランク鍵要は専用のマジカル・キーが必要です!」
僕は『悪戯ルモーラの罠壊しの妖精鍵』を取り出して机に置く、そしてオレンジにはモノクルを渡す……百聞は一見にしかずだ。
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『悪戯ルモーラの罠壊しの妖精鍵』
「マジックアイテム・鍵 レア度・⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎」
フェアリーの村長が製作した祝福鍵に、ルモーラの
『罠壊し』を付けた特別品。
ルモーラは『罠を外している』と勘違いしているが、
実際は『罠を破壊』している。
効果 「罠を破壊し、鍵を開ける」
制限 「箱指定なし・罠指定なし」
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オレンジはモノクルを受け取り、顔を寄せて鍵を見た瞬間、体勢を崩して後ろにひっくり返った……
「お………驚いた!!こんな鍵が存在するなんて!!ヒロさん!!それがあれば王国専属鍵師になれます!!」
「そんな凄いのか?」
「凄いも何も!!罠を外すのではなく『罠破壊です!!』絶対に罠は作動しない鍵であり、S+まで開き使用制限も鍵耐久度も無いです!開け放題のある意味『不壊』です!……」
それを聞いたデーガンとテカーリンが、モノクルを奪いあい鍵を確認する。
「「本当だ……」」
テカーリンより早くデーガンが……『今知った事は絶対に他言無用だ!!絶対だ!この存在を冒険者が知ったならば、絶対にヒロ男爵様の命が危うくなる!!寝ても覚めても襲撃者から襲われる!!いいな?相手が誰でも絶対に言ってはならん!そうなった場合……言った者はいずれ国王から一族郎党、存在した事実自体抹殺される可能性があるからな!王都のゴーレムを管理出来るのはヒロ様しか居ないのだからな!!意味がわかるな?』と言う。
それを聞いた受付嬢達は『なんて日だ!!……』と疲れ果てていた。
街中何処をどう探しても薬用瓶が100本近く足らないので、傷薬を100本持ち初心者エリアを練り歩いた。
そして強制的に傷の回復をさせて薬を消費、そして瓶の洗浄後に不純物扱いになる水滴が残らない様に自分の手ごと念入りに乾燥。
酷い疲労感に襲われるも今度は、班分け作業。
そこから気が狂いそうになる作業である『再生ポーションの計測』
溢してはならないと言う無言の重圧……を受ける班員
慎重に薬を計測し瓶詰めしてから、薬品を流作業で渡してから担当が封詰め。
今度は封詰め作業班が落とさない様に細心の注意を払い蓋を閉める。
そして数を纏めてからマジックバッグにしまう仕事……そして全員に作業時間をかけてはいけない重圧……
使用期限は10刻までしか無い……僅かでも無駄になどできない。
そしてマジックバッグに入れる作業まで全てが終わった時に横を見ると、計測班が全員青ざめている。
その目線の先を見ると何故か微妙に残量が違う……焦る受付嬢達は誰が間違えたのか……と言い合いになる。
封詰め班は確認していたか?と聴き取り調査……お互い疑心暗鬼に……
一度デーガンに事情を話し、呼ぶも確認の為に仕方なくマジックバッグから200本を取り出して一列に並べる……無常にも使用期限は過ぎていく。
それを全員で確認……『全部10ミリ』で、寸分違わず合っている。
しかし目に前の瓶の残量が語りかけている……『間違いなく残ってます私!此処にまだあるよ!』と存在感を更に発揮……
焦るデーガン……ギルマスが報告を受けてすっ飛んでくる……
ギルマスは報告を受ける……初めは『空き瓶』になった……しかしある時から微妙に量が変わってきた……
更に焦るギルマスのテカーリン……部位特化ポーションなど無駄にできない……
しかし『残量を全て合わせて計測し、新たな瓶へ詰めていいか』判断などつかない。
作成者を呼びに行くも、安定的に行方が何処かわからない……
僅かだが無情に過ぎ去る使用期限……更に焦る受付嬢達……
手分けで探すと『開封部屋』前を歩く犯人を発見。
やっとの事で発見からの連行……事情の説明から始まり当人の判断では、ヒト纏めで問題ないと無造作に一本に纏められてミキシングされる様を見て、安堵からの急激な疲労感。
ほっとしたのも束の間……今度は国専属鍵師に関わる大事件……既に心の疲労で倒れそうな彼女達だった。
そんな状態を知らないままに、呑気にも『じゃ開けてきますね!』と言ってその場を去った男爵……
彼女達にはまた、計測と封詰の仕事が出来てしまった……。
その日の彼女達は心身安らかに眠れなかったと言う……夢にまで計測と封詰が出たとか何とか……
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僕は久々に一人で開封作業に勤しんでいた。
「さぁ、転送罠から開けようかな……」
独り言では無い……スラとモンブランが一緒だ。
「主は欲しいものあるの?私はお菓子欲しいな!」
僕はスラの一言で、休憩しつつゆっくりやろうと考えた。
今は急ぐ必要はない。
机の一つにチョコとココアを用意する。
するとモンブランは……
『ねぇ!作成ミスった魔力薬水があったじゃない?あれちょうだいよ!!』
そう念話で話して来る。
僕は用途がないので、それをモンブランにあげる事にした。
『やった!じゃあ森っ子も呼んで!!半分こするから!!』
そう言ったので、森精霊の祭壇で彼女を呼ぶ。
『モンブランさん!有難う御座います!魔力薬水なんか500年ぶりです!』
魔力薬水は全部で400mlあったので200mlずつ仲良く分ける事になる。
僕は液体が詰まった薬用瓶4本を蓋を開けて渡す。
『ふおぉぉぉ!みなぎる!!わーーーーー!!』
そう言った後に、モンブランの聖樹の花が数個咲き始める。
森っ子とそれを聞いて笑い出す……
「モンブラン!!聖樹か?本当に?なんか怪しい言い方だったよ?」
『私も思いました!でも意味はわかります。実体を持つモンブランさん特有の感覚ですよね!』
そう言った森っ子は、久々と言った魔力薬水を念力で浮かべて消滅させる。
どうやら精霊が吸収すると消える様だ。
森っ子には魔力薬水がどんな効果を及ぼすのか聞いてみると、祭壇から実体を化現した時に大きく変わると言う。
魔力薬水が多ければ、それを実体の樹木へ吸収させ爆発的に大きくすることができるそうだ。
ちなみに精霊力の消費量によって、ウッドゴーレム、マンドレイク、ドライアド、アルラウネ、トレント、ツリーマン、エント、エンシェントツリーマンなど他にも多数素体が選べるそうだ。
その素体を成長させる起爆剤の様なもだと言う。
定期的に魔力薬水を作って二人に渡した方が、今後のためになるかも知れない。
僕はチョコをスライムと食べつつ、箱開け作業に取り掛かる。
『階層主の特殊宝箱』ランクS箱をよく見ると、トロールボックスの特大サイズだった。
王都近辺のダンジョンのギガント・ミノタウロスとの対戦後だったので箱が小さく感じたが、全くそんな事はなかった。
あの時周りが大喜びした意味が、ようやく僕はわかった。
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『階層主の特殊宝箱』ランクS箱の1箱目
スタテッド・リザード・スキンメイル
中級ポーション 1
金貨袋(250枚) 1
アイアン・エイプ・ボーンクラブ
衝撃のガントレット
炎の魔石(大)
回復の宝珠
『階層主の特殊宝箱』ランクS箱の2箱目
精霊の祝福(土属性)
石礫の・グレートアックス
聖女のドレス
インク要らずの羽ペン
祝福の勾玉
高級魔石(小)
ミスリルのインゴット(15kg)
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中身はなかなかだったが、防具は女性用やサイズ違いで武器は僕の扱えるサイズではなかった。
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