第568話「人工ダンジョン・苦痛の地下墓所」
ひとまずワームミートは全部回収して、美味しく無い物は村に帰ってから畑の肥料にでも使おうと説明をする。
「なんか……ヒロさんって色々考えているんですね?美味しく食べられる物なら分かるんですけど……『非常に不味い』と分かる物の有効活用とか……そこまで利用価値を求めるって……」
「マールといったのぉ……仕方ないじゃろう?ヒロはこれでも、あの土地の領主様じゃ!村民の食い扶持を考えるのも仕事じゃ!」
「そうなのです!ミミの家族を匿って貰っている村なので、食料は不味くても持ち帰るべきなのです!!雪深い冬に飢えて死ぬよりマシですから!!」
アルベイとミミの言葉に、『御もっともだ!』と言う顔をするオリバーとマールだったが、エルフ達3人は凄く感動していた。
「確かに!畑の肥料とは考えていませんでした!コレは良い勉強になる。ヒロ殿と居ると、何かと食材絡みが見つかって助かるな!そう思わないか?エルオリアス!エルフレア!」
「ああ!そうだな!!月エルフの領地は土地が痩せていて、どうしたものかと考えていたが……そうか肥料か……魔物由来の物でも使い方だな!」
「そうだな!私もそう思うよエルデリア!あの時でさえトンネルアントの巣に食材があるとか思わないしな!今回はワームミートの有効活用か……我々の都市でもマジック・モノクルに類似した物を開発せねばならんな!」
3人は感動しながらも、仕切りに剣を振るっている。
ゴーストに直接ダメージが通るマジック・ウエポンで片っ端から斬り捨てているのだ。
僕はふと彼等の足元を見ると、ゴーストが落としたドロップアイテムがあった。
僕はそれが何かすぐに鑑定でわかるが、モノクルを受け取りそれで見る様にしてから言う……地味に面倒だ。
「ゴーストもアイテム落とすんですね?なんか『怨念の詰まった箱』とか物騒な名前ですけど……あ!どれもこれも呪われてる………」
「そうだな!ヒロ殿は知らんのだな……ダンジョン内のゴースト種は『自分の怨念を込めた箱』を落とし、それを開けた者に呪いを付与するんだ。遅延タイプだが致死性の呪いで解呪不可能だ!!いいか?これは絶対に開けてはならない物だ!!だからヒロは特に気をつけた方がいい!」
オリバーはそう言いながら、安全のために落ちている箱の全てに『祝福』をかけて消滅させている。
うっかり足で踏んで壊しても発動するのかもしれない。
それを見たミミはマジックアローの祝福で消滅させる。
「お師匠様!ワテクシ役に立ってる!!このダンジョン!ワテクシ役に立てる!!ふほほほほほほほ!!」
気色の悪い笑い声を上げながら、ミミは嬉々として『怨念箱』を消滅させている。
オリバーは途中で消滅作業をミミに任せてしまったので、非常に不安だ。
ミミを『信じている』が『撃ち漏らし』だけはやめて頂きたい。
呪いだけに、触っただけで発動する恐れもある……
粗方ゴーストとクラッシャーワームの群れを始末したので『感知』で周囲の索敵をする。
「もう居ませんね……入り口から数歩なのに既にこんな群れとは……」
最後の1匹には、ダンジョン情報を集める為に鑑定をしておきたかったが既に遅かった。
僕の鑑定では『迷宮深化条件』と『固有個体発生討伐率』と言う、よくわからない物が表示される。
今回は深化条件はさておき、固有個体が発生する確率だけは知って置きたかった。
トレンチのダンジョンの二の舞はゴメンだ。
その上どう見ても『アンデット系』ダンジョンなのだ……とんでもない物が産み出されても困るだけだ。
凶悪な魔物が下層階から召喚された場合、時と場合によっては僕らは全滅してしまう……
そう思いつつも僕は、魔法の地図を片手にダンジョンの奥へと進む。
少しゆとりが出来たので地図をよく見ると、『人工ダンジョン・苦痛の地下墓所』と出ていた。
第一階層はこれといって特別な階層でもなく、通路や部屋に罠も無い。
そして幾つかの部屋の中を覗いたが、宝物のあった形跡さえもない。
「ヒロお主…何やら残念な顔じゃな!宝箱でもあると思ったか?アンデッド系のダンジョンの財宝の殆どは、呪い系の罠が多いからな!見つけても気をつけるんじゃぞ!特にミミは勝手に触るでないぞ!解呪不可の罠も稀にあるからな!」
僕はアルベイに見透かされた様で少し恥ずかしかった。
だが、このダンジョンを設置した輩はその『財宝』を目当てにこの場所を作ったのだから、何が目的か気にもなる。
ミミを見ると『あちゃー』という感じで顔を覆っているので、どうやら同じ考えだった様だ。
僕等は急いで階層を降りる為に階段へ向かう。
普通のダンジョンの様に、財宝目当てに遊んでなど居られない。
急ぎ階下に降りると階段は広間に通じていて、その広間には無数の『スケルトン』がそこかしこに見える。
「やっぱりおったな!それもこの数……低層階て言うのは本当なのか!?」
「皆さん、此処は私が!これでも金級冒険者ですからね!神よ不浄な魂を滅せよ!『天啓の祝福』」
「ガガガ……ゴガァ………」
「ヒギィ!ギヒィィィ!!」
「カタカタ……ガガガ……」
「ギヒィィィ!!ギィ!!ギィィィィィ!!」
広間に居たスケルトンがガラガラと崩れて灰になり、同じ広間に居たと思われるゴースト種の断末魔が幾つも響く……
「この魔法は『部屋』など『特定エリア内』全てに祝福効果を与える魔法です。祝福系なので詠唱が要りませんが、敵味方の区別無く祝福を与えるので使う場所が限られる魔法です!此処では大いに役立ちましたね!!」
スケルトンの消えた後には、討伐品のアイテムがいくつも落ちていた。
オリバーは部屋の中で再度『天啓の祝福』の祝福を使い全ての『呪いのアイテム』を消滅させる。
「すごく便利な魔法ですね!、エリア祝福なら箱が多い時いっぺんにできますね!!」
「そうじゃのぉ!トレンチのダンジョンでコレがあったら楽だったのになぁ!10箱超える宝箱は祝福も大変じゃったからな!」
「確かにそうですね!ミミもそう思います!!あの数の祝福は皆ヒーヒー言ってましたからね!!」
僕とアルベイそしてミミの発言に、オリバーは驚きが隠せない……
10箱を超える討伐財宝の宝箱など、彼は金級でありながら目にしたことが無い。
すると、早くもマールから歓声の声が上がる………
「た!……たた!!宝箱が…………ひーふーみー………5箱!?7人のパーティーで5箱!?」
その言葉にオリバーの首が90度捻られる……
「ぐあ!く!首を捻ってしまった!!……いててて……た……確かに5箱あるな!?困ったぞ!このパーティーには箱開け出来る者が居らんぞ!?」
そう言ってオリバーは何かを期待して僕を見る。
当然僕は既にモノクルで確認中だ。
「A級の祝福された宝箱が2個に、Bランクが1箱そしてDランクが一箱で、罠は僕がマジックアイテムの『開けられる鍵』を持っているので平気です!」
その言葉に驚いたのは、オリバーでもマールでもなくアルベイだった。
「お主!!いつの間に鍵を手に入れたんじゃ!!開けられるってA級もか!?罠対策ありの鍵って事じゃよな!?」
僕はマジックグローブから『悪戯ルモーラの罠壊しの妖精鍵』を取り出す。
コレは妖精の村長と、おっちょこちょい妖精のルモーラの合作の品だ。
「待て待て!今どこから出した!?」
「だ〜か〜ら!オリバー!その手の話は厳禁でしょう!?ヒロさんのやる事に驚いてたら、10日あってもこのダンジョン踏破できないわよ!!私の見立てでは、この魔物量だよ最低5日はかかるの!あなたが居てもよ!?」
オリバーの驚きに流石にマールが口を挟んだが、僕はマールの言葉に驚いた……
5日などかけていられない……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。