第555話「フレディ爺さんの魔法講習」
「テイマーの能力の説明をするぞ?よく覚えておく様に!テイマーはそもそも、自在に呼び出せる『契約印』か、その個体を手元に置く必要がある。ちなみにアープお嬢ちゃんの持つものが『契約印』じゃ!」
爆弾発言をするフレディ爺さんだったが、突然クラスメイトから羨望の眼差しを得たアープは、恥ずかしそうに顔を抑えている。
「魔物の多くは契約に応じて召喚されるが、その術者が持つ魔力と術者レベルに応じて大きさが変わるのじゃ!今は小さくても、ちゃんと練習をして鍛錬を続ければ、いずれ結果が目に見えて分かると言う訳じゃ!何事も弛まぬ努力が必要と言うことじゃな!」
しかしその言葉に一番早く反応したのは、ミーニー学長だった……
「どう言うことですか?そもそもお爺さんは何者ですか?」
ミーニー学長の質問に対して、プッチィ主任がそっと学長に近寄り……『あの方は引退された宮廷魔術師のフレディ老師様です!話を聞いたら、どうやら50天も昔に姿を隠されたクルーガー老師様の様です!!』とプッチィ主任が耳打ちする……
「ク!?クルーガー老師様!?あの……超高熱炎範囲魔法を編み出されたクルーガー老師様?何故ヒロ様と!?……と言うか……何故この学院に?」
「フレディ爺さんはどうやら教えるのが好きな様なので、今なら此処で講師として雇えるんじゃないですか?子供好きそうだし!」
僕が悪ふざけでそう言うと、『誰が爺さんじゃ!まだ気持ちは若いままじゃ!!』と言っていた……
だが、すぐにアープが纏わり付いて、アレコレ質問攻めにあった時のフレディ爺さんの顔はまんざらでもない様だった。
「仕方ないのぉ!ミーニー学長と言ったな?どれ!お主が管理する学院の特別講師枠をひとつワシに寄越せ!生徒の全員が魔法使える様にしてやろう!給料の他には……そうじゃな……マジックアイテム製作工房を用意せい!どうじゃ?」
「よ!喜んで!……むっちぃ!むっちぃ!!すぐに部屋をマジックアイテム工房をひとつ用意しなさい!一番大きい部屋ですよ!!クルーガー老師様がお使いになります!!」
ミーニー学長は、フレディ爺さんの言葉を聞くなり大声で騒ぎながら教室からすっ飛んで出ていく。
フレディ爺さんは『やれやれ』と言いながらも話を続ける……
「ちなみに!!ヒロ先生がやる契約魔法は『例外の産物』じゃから、もし同じことが出来たら宮廷魔術師の枠は確実じゃ!よく覚えておくが良い!」
フレディ爺さんは何やら余計な事を言ってくれた様だが、それがどういう事かなど僕に分かる筈もない……
僕は携帯で時間を見ると、既に授業の残り時間は5分を切っていた。
自習時間とアクアプリンの一件でかなり時間を要した。
僕は折角なので、フレディ爺さんの自己紹介をして座学終了のベルを聴くことにした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「学院の全生徒と講師は集まりましたか?では……クルーガー老師様講義をお願い致します!」
何故こうなったのか……と言う感情が顔に出ているフレディ爺さんだったが、それは仕方のない事だ。
あの学長が知った時点でこうなる事は想像が付いていた。
それもクルーガー老師と言えば、子供でも知っている程に超有名だったらしい。
そして僕が『折角だし、宮廷魔術師が講師として教える様を見た方が良いかもですね?』と言ったら、あっという間にそれが広まった。
クルーガー老師は宮廷魔術師の一員ではなく、宮廷魔術師『長』だったそうで、生徒に関わらず講師までもがその実技指導を聞きたがった……
その結果………
「全員魔力量を増やす特訓をする!良いか?講師がまともな魔力を持ってなければ教える事などできんじゃろう?ヒロの総MPとまではいかんが、半分は持っておく様に!」
僕はそのあと自分のMPが幾ら有るか言わされる羽目になったが、MPの最大値は500を超えると言う。
するとフレディ爺さんは『目標を間違えた!最低限100MPを目指す様に!』と言い直していた。
しかし、100MPと言っても冒険者では無い講師に子供達には難しい……
大人は頑張ってゴブリン相手に稼ぐしかないが、子供はそうはいかない。
それをすぐに理解したのが、ザベル君だった……
彼がMPの上げ方の質問をすると、フレディ爺さんは『まさか……この学院は基礎も知らんのか?困ったもんじゃ!』と言ったので、先生の表情が非常に暗くなる……
「まぁ……仕方ないの……時代と共に情報は失伝される運命にある!じゃが、お主ら講師はわしから教わった事は、ちゃんとこの学校で伝えていく様にな!!ちびっ子達はそうじゃな……毎日MPを空にするまで使うのじゃ!そうすれば50MPまでは強化できるはずじゃ!」
僕は不思議に思ったので空にすると、実際その行為にどう効果があるかを聞く。
「お……お主のMPはどうやって……ちょっと待て!お主の今のレベルは幾つじゃ?まさか……40を超えておるのか?」
『ここの所睡眠時間が足らず……余剰分が回収出来てませんが、56レベルですね……余剰分の最大値は不明ですが分かる部分含めると66レベルですね?』
僕はあまり聞かれたくない情報なので、こっそりと耳元で話す……
「ぶ!!………その膨大な魔力はテレサの阿呆以来じゃ!!そうか……。それで?おぬしは今まで一度も空にしてないのだな?その様子じゃと?じゃが今更じゃの……空にしても上がるのは最大値50MP程度じゃから、お主の場合たかが知れてるじゃろう?」
そう言ったフレディ爺さんは皆に分かりやすく説明をしてくれた……
MPを全て使っても身体には悪影響はないらしい。
逆に最大値が1上がる効果さえあるそうなので、出来る限りマックスまで消費する必要がある様だ。
ただ問題は『魔力酔い』が起きるそうで、それは魔力の最大値が増える時の身体への副作用だと言う……
「じゃが……コレは魔導ギルドに行けば一番最初に習う事じゃぞ?ここの講師とて誰でも知っておる!お主の魔導証は何級じゃ?更新忘れる馬鹿が割とおるが…………ま……まさか独学とか言わんよな?」
非常に周りが騒がしくなる……
講師も生徒も学院長迄もが僕を見る……しかしもはや僕に言い訳の言葉などは無い。
「あ……えっと……これだけはいわせて下さい!決して騙してる訳では無いですよ?魔法はちゃんと使えますから!使える物を使うのが冒険者でしょう?」
「なんてこった……独自に魔法をここまで使い熟したのか?お主はもはや、儂等の理解が及ぶ存在じゃないぞ?儂等は魔導ギルドで駆け出し時期を過ごし、時間をかけて自分の魔法形態を確立するんじゃ!」
「僕には別の教師が居たんです……スパルタ式と言いますか……その教師曰く、魔法には仕組みなど無いらしくコツを掴めば良いと……」
「そうか……既に師事する者が居った訳じゃな?その講師も只者では無いのぉ。じゃが……合点がいった!わしの『迷宮魔法』を見ても驚かなかったのは、既にお主はその境地を知っておったと言う事か!!いやはや先が恐ろしいのぉ……」
僕とフレディ爺さんの会話には、どうやら誰も入り込めない様で、誰も言葉を発さずに黙っていた。
僕は既に皆の前で石像を破壊して、巨大な魔物を何匹も召喚した過去がある……それを無かったことになど出来ないのは、どの講師も理解の上だった。
「ああ……しもうた!そんな事は今はどうでも良い!良いか?ちっこい生徒達よ。お主達はこの悪い見本を真似しない様にな!コイツは例外中の例外じゃ!お主らがそれをしようとしても挫折するのが目に見えておる!……では授業を再開するぞ?」
勝手に比較対象にされてから普通では無いと言われた僕としては、そもそも比較対象を僕では無いもっと平均的な人にしてくれ……と思うしか無かった。
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