第540話「瓜二つ!ドッペルゲンガーと偽ドワーフ」
「それで?お主達はあの『穢れノームの迷宮鉱山』に向かうつもりなのだろう?ドッペルゲンガー達がしでかした『後始末』のつもりで………」
「と言いますと………何か問題が?……フレディ殿は何を知ってらっしゃるんですか?ダンジョン・スタンピードが起きていれば、何とかして食い止めたいと思うものでは無いですか?人族とすれば」
「そうじゃな。言い分は間違ってはいない。じゃが……わざと起こしたスタンピードだろう?奴等が『ドッペルゲンガー』ならば、何か目的があるんでは無いか?そこにむざむざ入ってお主らは魔物を倒すんじゃろう?『穢れを多く溜める』手伝いをするために?」
「「「「!!」」」」
「そうか……ドッペルゲンガーは『穢れから生み出された』ならば奴等は、同族を増やす為に我々を誘い込むつもりだったのか!」
「正確に言えば………『ドワーフ族』をじゃろうな……人族にはドッペルゲンガーはおらんのだろう?ならば既にドワーフ王国へ多く潜入している『個体数』を増やすつもりなんじゃろうな……勿論コレは儂の推測じゃぞ?」
ザムド伯爵はフレディ爺さんと話す事でヒントを貰っている。
僕とアナベルの様な関係を感じるが、スタンピードは放って置いて大丈夫なのか心配だ。
「おい童!少し儂に付き合うが良い……心配している『スタンピード』ならば儂とダンジョンの中に入れば片が付くじゃろうて……じゃが他の奴がついて来る事は禁ずるぞ?どうじゃ?」
「………良いですよ!」
「「「「ヒロ殿!!それはなりません!!」」」」
エルフとドワーフスレイヤーの声が揃う。
「大丈夫ですよ……皆さんが考えてそうな危険な事にはならないと思います。それに多分危険なのは『魔物の方』でしょうから!」
「はっはっは!たしかにヒロ殿とフレディ殿にかかれば敵などは居ないも同然だな!!」
ドワーフの王は何やらご機嫌だが、フレディ爺さんの先程のセリフからすれば、ドワーフ王が幼い頃会った事がある会話だった。
しかし何時迄も此処で昔話を聞いている訳にもいかない。
僕達はアリン子の開けた穴から入り組む坑道内へ戻る。
「なんて事じゃ!!こんな場所に横穴を掘ったのか?この先の真下に何があるか……儂が漸く『岩壁をズラして』埋めたと言うのに……ドワーフ王よ!此処は埋めねば危険じゃぞ!」
「フレディ殿……そこはヒロ殿が掘ってくれた鉱山都市西区に向かう別穴だったのですぞ?頑張って掘ってくださったのです……開通はしなかったらしいですがな!はっはっは!」
魔法の地図では下方向は分からない……アナベルとポチを知っている爺様が、どうにかして此処を埋めたと言う事だから本当に危険なのだろう。
しかし岩壁をズラして埋めたとは……どうすればそんな事が出来るのだろう?
そんな事をしてこの山に影響はないのだろうか?
だが危険な箇所であるならば、そのまま放置など出来ない……責任を持って埋めて来ないとダメだろう。
これ以上問題を増やすのはごめんだ。
「じゃあ僕がマジックグローブで回収したもので埋めて来ます……アリン子が通した穴も既にありますし!」
僕はそう言って屈んで入ろうとしたら、既に床部分が抜けて下へ降りる傾斜が出来ていた。
今までそんな場所の上に立って穴を掘っていたと思うとゾッとする。
「あああ………既に崩れて下層への傾斜が見えてますね。フレディさん……どうしましょう……?」
「既に遅かったか仕方ないのぉ……あの馬鹿オークが掘り当てた問題の穴じゃ……奴等はそこに降りて行ってすぐにこの鉱山からトンズラした場所じゃ。何があってもそこから先に行かない様に、今度は板壁でも作って塞いでおくのじゃな!」
「何があるんですか?オークが全て逃げる程って……」
「そのうち自分の目で見て来るが良い……だが、そこに行くときは仲間など連れて行かん事だな!」
今まで勿体ぶらずに話していただけに内容が気になる……
だが、行かないほうが良いと言われた場所については、今までの異世界での経験上碌でもない事が起こるのは間違いない。
そう思った僕は『そんな場所なら気が向いたら行きますね……まぁ理由がない限り行く事はないでしょうけど、それでも生涯行くことが無いことを祈ります』と言っておいた。
暫く『魔法の地図』に従いダンジョン方面に進むと、坑道内で戦闘中のドワーフ戦士団から報告が入る。
どうやら坑道内の魔物の多くは仕留めて、大方討伐を完了したらしい。
僕達が起きている問題点を話している間に、ドワーフ戦士団の奮闘のおかげで安全に坑道内を歩くことができる様になっていた。
そして街を出てから5時間後、漸く鉱山坑道内部のダンジョン入り口まで辿り着いた。
しかしエクシアと二人ならば、もっと早くこの場所に着いていたとは、奮闘してくれたドワーフ戦士団のために口が裂けても言えない。
「じゃあ行って来るかの……ドワーフの遺体に関しては儂らに任せるが良い。重量無視のマジックグローブをこの童が持っておるからな」
なんでも見通しのフレディ爺さんは、本当にアナベルの知り合いだと思える知識量だった。
問題は明かしたく無い情報を『悪気も無く皆に言ってしまう』ことだろう……
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「それで?………アナベルのやつは元気かの?」
ダンジョンに入ってすぐに質問が来ると予想していた僕は、アテが外れた。
入ってそうそう魔物に襲われたのだが、フレディ爺さんは何処からか杖を取り出しダンジョンの内壁を叩くと、壁が迫り出し通路の魔物は1匹残らず押し潰される。
黙々と魔物を退治しつつも、部屋を見つけるたびにドワーフの遺体が無いか隈なく探す。
フレディ爺さんが話し出したのは下層階段を降り地下二階に降りてからだった。
「会ってないんですか?フレディさんは?」
「会うも何も……死んじまった人間に会えるわけないだろう?」
話が食い違っている気がしたので、僕が異世界人である事とアナベルとの出会いを説明する。
「な?異世界人じゃと?ポチと同じか!そうか……そうか……『そっち』か!!」
フレディ爺さんは漸く合点が行ったと言う顔をして、両手を叩きながら笑い始める……
「てっきり儂はポチと『契約』した『トラベラー』かと思うたわ!!」
「トラベラーってなんですか?」
「トラベラーを知らんのか?寧ろお主はポチとはどんな関係に有るんじゃ?其方の方が気になるわい!さっきから想定の範囲外しか起きてないから、既に儂の手に余るんじゃがのぉ?」
僕達は一度ゆっくり話す為に地下2階層安全区域へ移動する……
「実は僕の持つスキルがマジックバッグの特性を持つスキルでして……そこでアナベルさんと再開して、ポチさんと出会ったんですよ!」
『ユニークスキル・倉庫』の説明をしてから実際に扉を設置する。
当然スキル条件に関係でフレディ爺さんは倉庫の中には入れない。
「ほほう……これはまた……なんてスキルを持っておるんじゃ!儂が作りたくて長い間考えていたスキルじゃぞ?ん?んぬ??………テ?………テレサ!?テレサじゃないか!!オイ!テレサ!!………聴こえるか?其方にアナベルが居るって本当か!?何を言っておるんじゃ?分からんよ!!こっちにはお前の声が聞こえないんじゃ!!アナベルの奴も呼んでこっちに来い!少しで良いから昔話をしよう!」
「テレサ?……アナベルさんですよね?あの女性は……」
僕の発言で目を丸くするフレディ爺さんに、スキルの事情を説明する。
「絶対に言わないでくださいね?死活問題なので……」
「言わんよ……言わん……古馴染みに合わせてくれた例もあるからな!裏切ろうモンならバチが当たるわい!!そうかアナベルとは奴の妻のテレサの事じゃったか……あやつはずっとあそこで『狭間の管理』とやらをやっているのか……痛ましいのぉ」
そう言ったフレディ爺さんの顔は寂しそうでもあり嬉しそうでもあった……
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