第534話「ドワーフの血筋とプライド」


「うむ……迷惑をかけておるのは承知の上で、お知恵を拝借したい……ドワーフ貴族のバウギン伯爵はプライドの高いゴールドドワーフ族の出でな……半王権派の主力メンバーガウギン侯爵と親しい仲だ……」



「それは先程話に出ていたドワーフ貴族ですよね?」



「うむ……前は我等の同志であったのだが……敵側に丸め込まれた様なのだ。まぁドワーフの王国は国民の意思を尊重して王を選ぶ国だからな。時には敵勢力にもなり得るのだが、ここまで無茶をする奴では無かったのだが……とても残念だ……」



 その話をした後、ドワーフ勢力で危険な事をしそうな貴族を聞いた。



 その理由としては、鉱山戦を控えているのだから横っ腹を攻撃されれば幾ら街を守りたくても、被害が出てしまうからだ。



 殆どの敵対勢力達は王都に居るそうなので鉱山戦には影響がなさそうだったが、唯一共について来た悪辣ドワーフ貴族が2名いた。


 プラチナドワーフ族のマルガス男爵とベルガス男爵と言うらしい。



 ドワーフ族はどうやら5血統に分かれるそうで、その中でも血筋と先祖に執着するのが『プラチナドワーフ族』という事だ。


 そして揉め事になるとかなり面倒なドワーフ族なのが、そのプラチナドワーフとゴールドドワーフなので注意が必要だ。


 ドワーフのついて全く知らないので、それを聞くとハルナが詳しく説明をしてくれた……



ミスリルドワーフ族………最古種。最も人数が少ないが、唯一ミスリル鉱山を所持する種族。血筋に執着やや有り。


プラチナドワーフ族………血統と先祖に執着しプライドが高い。総人口はミスリル族とほぼ変わらない。王の玉座を欲している。


ゴールドドワーフ族………プライドが高く全血統で宝石や金と爵位が大好きな種族。独裁政治を夢見ている。人口率は族内3位。


シルバードワーフ族………アイアン族の次に人口が多い。宝飾品のみ製造している。戦闘や決闘が大好きで王位に興味なし。


アイアンドワーフ族………最古種で最も人数が多い。鉄製装備品の製造を得意とする。血筋には興味なし。




「ドワーフの皆さんは残念ですが、本隊には帰れそうに無いですね……今追いかければ間違いなく、ゴブリンやホブゴブリンの群れと遭遇戦は避けられないですから。この人数では間違いなく無駄死にですからね……」



 そう言ってから、僕は撤退したドワーフの状況と鉱山から向かって来るゴブリンの群れの状況を衛兵に聴く……


 どうやら悪辣貴族は早々に引き返し、王権派はジェムズマインの入場門付近まで来た様で、衛兵と睨み合っているそうだ。


 そして、ここに連れてきたドワーフ貴族3名の兵士達も同様にそこで止まっているそうで、彼等中立派の残る1貴族も仲間の為に残った様だ。


 結局逃げたのは結局悪辣貴族だけだった様だが、鉱山に向かったドワーフ達はどうなったのか不明だ。



「って事は………皆さんの兵士は皆残ってるんですね?じゃあ……街に来て貰いましょう!!今は争っている場合じゃないですから!街に籠城していた場合、進路変更した魔物が他所の場所に行くと困るので攻めて出ましょう!」



「ゴブリンと戦闘か!?なら儂らが一番最初に出るぞ!あのバウギンのバカの事で苛々が流石に抑えられんでな!鉱山のゴブリンなんぞ皆退治してやる!!」



 そう言ってアラヤトムが両腕で力瘤を作る………



 その姿を見てシルバードワーフってやはり戦闘が好きなんだなぁ……としみじみ思う。



 僕達はドワーフの戦士団を迎え入れる為に入場門へ向かう。



 時間に余裕などない……彼等を早く迎え入れて誤解を解いた上で、鉱山戦に備える準備をする必要があるからだ。



 入場門へドワーフの王族達と向かうと、王と貴族達はすぐ様誤解を解く為に事情を話して回ると、ドワーフ達はすぐに武器を捨て謝罪の意を示す。



 衛兵と睨み合っている戦士隊の誤解を解く事は、これから先の戦闘で必要になる。


 その場にいるドワーフ戦士団と衛兵全員に領主のウィンディアから説明がなされる。



 ドワーフ戦士団は命がけでこの街を守り抜く事を約束し、衛兵達も争っている場合じゃないと理解しているのですぐに門内部へ迎え入れ、すぐに門を固く閉ざす。



「では皆の者作戦会議を行う。百人長以上の役職者は全員参加する様に!会議は場所的な問題があるが冒険者ギルドにて行う。陛下……ドワーフ族の事はお任せして宜しいですか?」



「うむ!何でも言ってくれ!新領主殿。皆の者よく聞くのだ!ドワーフ族は今より大恩ある人族の剣となるぞ。我が自慢の戦士団よ!奮い立て!!小鬼など全部根絶やしにしてやるのだ!」



 急遽ギルドから回復師達が呼ばれ怪我をしている兵士達は、すぐさま回復師達の魔法で回復して万全の状態になった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「また困ったことになったねぇ……王都の蟻の巣に水鏡村の鍾乳洞。今度はジェムズマインの鉱山坑道かい……アタイはあの森で疫病神拾ったのかね?」



「エクシアさん……運の尽きた神様はお互い様でしょう?そもそも僕は原因では無いですよ?行く先々で何故か魔物が氾濫する様に何かが起きているんです。トンネルアント放置する王都とか、背信者とか………ホラ!原因は僕じゃ無いでしょう?」




 エクシアと僕は話し合いの輪から外されていた……理由は簡単で、前線に出たら出鱈目をやらかすからだ。



「どうするんだろうね?エルフとドワーフ仲が悪いのに同じ会議に放り込んだら………ホラ………怒鳴り合ってるよ……」



「ですね……あの冷静なエルオリアスさんが大激怒する様を見れたのはある意味収穫ですけど……結構武闘派だったんですね……」



 エルオリアスとホルトゲイリーが現在大喧嘩している。


 理由はどちらがゴブリンを倒すかでもめている……正直1匹も逃す気はないのだから、どちらでもいい気がする。



「ってか暇だよな!」



「ですねー!!エクシアさん一足先に僕達で鉱山行きません?どうせ行くなら早い方がいいし!」



「お前………初めてアタイと気があったよ!じゃあ行こう!今すぐ行こう!」



 僕達はどうせ仲間外れにされるなら先に行ってても変わらないと思い、エクシアと二人で鉱山に向かうことにした。



 周りに知れれば面倒なので、コッソリ二人で行こうと言う話になるのだが……



 その理由はあくまでも建前であり、エクシアはチャンティコを使い熟したいのでその練習台が欲しかった。


 僕は当然長谷川くんから引き継いだ『デスアサシン』の持つスキルを使いこなす事と、例の『獄卒』を使って見る為だ。



 危険な力だった場合、封印しておく必要がある。


 『獄卒』化現持ちはファイアフォックスに多いので、危険な場合皆に使わないように言う必要がある。



 僕はエクシアにアリン子の背中に乗せて貰い鉱山に行こうと持ちかける。



 すぐに宿屋の裏庭に向かうと、暇そうに穴を掘っては隠すアリン子がいた。


 僕はアリン子に事情を話す……



『イイヨ!ヒマダシ………デモ……チョコレート!ホシイ』



 僕はチョコレートを5個取り出すとアリン子の口に放り込む。



『ボリボリ………ボリボリ』



『チョコレート!オイシイ!セナカノッテ……コウザンハヤクイク……』



「地下から街の外に出られると助かるんだけど?見つかるとアレコレ言われかねないからさ!」



『イマホッタアナ……マチノソトイケル……ナカトオル……』



 僕達はアリン子が作った街の地下の巣穴に入ると、生活魔法の『ライト』を唱えて周りを明るくして街の外を目指した。



 巣穴は周辺の森の中に出口があって、周辺の木は所々斬り倒されている。



「アリン子ちゃん聞いていい?もしかしてキノコ育ててる?」



『ウン!キノコショウガヤキイレタ……ウマカッタノ……ソレミタユイナホシガッタ!ワタシヤクニタツ!ソシタラユイナゴハンクレル……ワタシオナカイッパイタベレル!!』



 アリン子はいつの間にかユイナに餌付けされていた………

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