第529話「両国の問題解決と新たな可能性」
「あ!申し遅れました!最近冒険者から爵位もらって『男爵』になったばかりの者です……冒険者と対して変わらないので!それに重要な話し合いの場所には出ないので、そこらに居る冒険者として扱ってください。よろしくお願いします」
「「おい!!」」
「申し訳ない!ブロック殿……彼はこの様な席は慣れておらず……」
「私からも謝罪しますぞ!申し訳ない!!」
ザムド伯爵が謝罪した後に間髪入れずウィンディア伯爵も頭を下げるので、僕も仕方なく頭を下げる……
僕は爵位持ちである者への対応など好まないので、意思表示したまでだが……何とも面倒だ。
「はははははは!気に入ったよアタイは!男爵なのに冒険者ヒロか!いいね!いいねー!アタイは『鍛冶職人のハルナ』だよ!」
「ハルナ様!少しはアイアンドワーフの姫として自覚を持ってください!さっき私に言った言葉を既に忘れてます……あー!!………皆様……此方こそ申し訳ございません!!」
驚く事にハルナはドワーフの姫だった様だ。
何故姫が単独で出歩いているのかすごく疑問が残るが、実際出歩いているのだからそんな国なのだろう……としか言いようがない。
ブロックもそんな姫の対処に大変そうだが、強硬派なのか穏健派なのかが分からない。
さっきのハルナの言い方といい、ナントカと言う人へ報告せねばならないと言ったブロックは、やはり強硬派なのだろう。
そう考えていると、部屋の入り口付近から声がした……
「そりゃ無理ってもんだよ!ハルナにはね!」
「あ!今更きたの?おっそいし!それにアンタに言われたくない!ミドリ!」
後ろを振り返ると『ミドリ』と呼ばれたこれまた綺麗なドワーフの女性が立っていた。
格好はハルナと同じ様に鍛冶職人特有の作業着だ……
ドワーフは作業着に執着でもあるのだろうか……もっと親密になったら是非聞いてみよう。
そのミドリと言う女性ドワーフは、軽く憎まれ口を叩いたものの伯爵達へは第一声で謝罪をし始めた……
「伯爵様遅くなり申し訳ありません。一旦進軍を止める様に説得するのに時間を要しました……おー?ちょ!おっとっとと…………とー?それ!!インゴット!?……クリムゾンミスリル………の?」
謝罪の途中にも関わらず、机の上のインゴットを目ざとく見つけて駆け寄るミドリ………
ミドリというドワーフ美女に今までの説明するハルナとブロックだったが、話をそっちのけでインゴットを齧って確認するあたりはハルナと同じだった……
「ベロがピリピリするね!間違い無く火属性って事だねぇ………本物だ!素晴らしい量だね!」
第一声はやはりハルナと同じだった。
「ピリピリするって……ピリピリって雷属性じゃないんですか?」
「何言ってんだい?この子は?」
ミドリがハルナにそう言う……するとハルナは『雷属性はジンジンするのにね?』と言う………
どうやら二人は、雷属性の鉱石も齧った様だ。
「話はブロックとハルナの話でよく分かりました……領主様に伯爵様そしてヒロ様この度の恩は決して忘れません!!ドワーフ王自らが軍を率いて来ておりますが、この話をすれば喜びましょう!一度私は軍へ戻り報告して参ります。ハルナは人質代わりにおいておきます。万が一馬鹿な強硬派が何かをしようとしても、コレで手が打てませんからね!」
そう言ったミドリは、ブロックを一瞥して『さっさと碌でなしの親分へ報告に行けよ!』と怒っている。
どうやらブロックは強硬派の人員だった様だ。
そしてミドリは、同族の非礼と自分が取った態度を詫びてから自軍へ戻って行った。
「割と自由な感じですね?ドワーフさんて………」
「気が短いからね……ドワーフは。それに穏健派と強硬派は意見が絶対に合わないからね……強硬派は今の陛下をすげ替えたくて仕方ないのさ!金儲け主義の成金ドワーフ野郎にね!」
ハルナはそう言ってから僕へ頭を下げる。
「アンタのおかげで助かった!ウチらの馬鹿親父が今のまま王で居られるのはアンタのお陰だ!感謝する!もし私等で手伝える事があったら何でも言ってくれ!アタイは鍛冶職人だから武器嫌いしか作れないけどさ!それに……ガサツなのも許してくれると助かるよ!」
ハルナは今までの適当加減が嘘の様に僕へ挨拶をしてくれた。
錬金術の練習もあるし、ドワーフが来ているならせっかくならば聞いてみよう……と言う感じで偶然作った物なので、そこまでお礼を言われると逆に申し訳なさが出てくる。
しかし僕はハルナさんから言質を取ったので、今ドワーフと人族がもめている事が済んだら是非お願いしよう。
ダンジョンへ潜れるドワーフ冒険者の紹介と武器製造を!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
伯爵達は執事筆頭のラルに、ハルナの宿泊場所になるウィンディア家別邸へ案内する様に伝えた。
それから僕は質問の嵐だった……『何故クリムゾンミスリルを持ってるのか』から始まったが、当然『作りました』としか言えない。
そして金塊と製造素材があれば幾らでも作れる……と言った瞬間『二人は静かに椅子を弾き座り』深いため息をついた……
「そうか……錬金素材か………」
「ザムド伯爵……多く作るなら金塊で作れますけど、それだけの価値って事は忘れちゃいけませんよ?必要な素材も割と面倒ですし!特に火属性の魔石じゃないと作れませんからね!」
「そうか……ウィンディア!今からギルドへ行って、火属性の魔石は買い占めんとならんな!」
僕は『ギルドでは常に売ってるんですか?』と聴くと稀に入荷するが個数は多く無い……と言っていた。
先に買い占めたかったが、コレばかりは仕方がない……
「大丈夫だ!今回の件の謝礼に幾つか造れる量を用意しておく……素材リストを後でくれるか?」
僕は忘れないうちに執事のグラハムに必要素材を伝えておく……
「すまんな!部位再生ポーションだけで無くクリムゾンミスリルまで……何にせよ今回も助けられた。それも陛下の為に同じ王冠まで作らせる交渉までして貰って……一連の報告はミドリ殿の報告が届き次第になるが、必ず陛下にはしておく!まぁ早くても明日になるがな!」
僕は馬車で送ってもらい宿に帰ったが、腑に落ちない点があったのでグラハムに質問をする……
「グラハムさん……今回ドワーフの王が軍を率いて人族の管理するダンジョンへ来たじゃ無いですか?人族の王様的には兵の派遣はしないんですか?ダンジョンを口実に、鉱山の管理を奪取する事を考える悪い輩が居たとしてもおかしくは無いと思うんですが?」
「まさか!それはあり得ませんよ。ドワーフは頑固ですが、誠実なんですよ?内部でもめているのは確か、古くからのドワーフのしきたりに従おうという者と、国交をもっと多く持ち潤沢な資金を集めて、ドワーフ自体をもっと強大な国にしよう……と言う二つの派閥が理由だった筈です。なので多種族を騙し討ちする様な種族では無いですよ!」
ザムド家に仕えるだけあって、なかなか情報通なグラハムだった。
確かに聞いた範囲では、ドワーフという種族の抱える問題をしっかり押さえている様だ。
それにザムド伯爵やウィンディア伯爵が兵の準備をしない以上、確かな情報なのだろう。
しかし残念な事に、その考えは見事に打ち砕かれる事になる……翌日バウギン率いる反王政軍が鉱山を強襲し、ドワーフ戦士団による事実上の占拠をした。
問題はそれだけに終わらず無かった……
バウギンに与する貴族と戦士団はドワーフ王へ反意を示し拘束した……その上でジェムズマインの街を包囲したのだ。
理由作りは至って簡単に運んだ。
ブロックが持ち帰ったクリムゾンミスリルの件を使っただけだった……
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