第495話「水鏡村のダンジョンで村民探索」
僕はこのままだと時間ばかりかかり捗らない……
と思ったので、手分けをしようか考えていると『感知』でひとつ思い浮かんだ事があった。
『アルブル・モンドの見渡しの魔法地図』を使えば、ダンジョン内部は封印状態でも見れるのでは?と思ったのだ。
クロークから取り出して見てみると名称と階層の状態が映し出された。
「今から最速で下層までおります!途中村人がいたら回収して行くので遠回りになる場所もあると思います。チャック悪いけどダンジョンの罠を探知して!道は僕と一緒に『アルブル・モンドの見渡しの魔法地図』で確認を!」
「あいよ!ヒロの旦那は相変わらず人使いが荒いな!」
「そのヒロにどれだけお世話になったのかしら?チャック……恩返しは重要よ?私やユイにスゥは『戦闘』で役に立ってるし『エルフ国』への入城許可も私達が出す予定だけど、貴方は役に立たないとダメじゃないかしら?ファイアフォックスに入りたいんでしょう?」
「モア!いつも一言……『チャキン』………あっぶねぇ……なんでもねぇっす!!…………首筋に剣とか……冗談も通じないのかよ……ブツブツ……罠は此処から当分無いっすね!ガンガン進んで平気だぜ!ヒロ!……おっと!ヒロ『男爵様』……」
「チャック!男爵様は要らないから!!背中がザワザワするからやめてくれますかね?『チャキン……ガリガリガリ』………」
僕はモアを真似てチャックに剣を突きつける……すると剣の先が壁を削る音がする……
壁を見ると切り傷がついていた……どうやら『デス・アサシン』のスキル効果の様だ。
使い慣れていないので、冗談でも気をつけた方が良さそうだ。
「ヒロさん!やめてマジで!冗談がモアさん仕込みになってますよ……ヒロさんのは剣の予備動作だけで首が飛びそうだよ!!」
呑気なダンジョン探索になっていた……感知に引っかかる事もなく地図にも表記が出ない。
魔物が1匹も居ないのだ……ダンジョンと言えば魔物がわんさかいる場所だが……ゴースト系でも魔物として視認出来ないだけで、本来は感知には反応する。
下層階への階段のすぐ側に来た時点で、僕は違和感の答えに近づいた気がした。
魔物が居ないのでは無い……『未だに封印状態』なのだと言うことを。
「この階層だけかも知れませんが、このダンジョンはまだ『封印状態』にある様です。魔物も同時に封印されて居るのでしょう……下層に行けばわかりませんが、魔物が居ない階層はチャンスです。それにその考えが正しければ村人はまだ生きている可能性が大きいです。村人を探していなかったらどんどん降りましょう!」
そう言ってから下層階に降りると、階段の目の前で一組の夫婦に出会った……
「「ヒィィィィィィイ!!」」
姿からして水輝石の採石師だろう。
「大丈夫ですか?魔物の被害は?」
「ぼ!冒険者様?あ!食堂で見た!!ミミの友人さん!!」
「あ!あの時に店に来た!よかった無事で!!助けに来ました……他に人は居ませんか?魔物は?」
「此処はどこなんでしょう?急に真っ黒い穴に吸い込まれて気がついたらこの先に居たんです!人は見てません。妻と私の二人です!ミミのお祝いに水輝石を取りに来たんです!!魔物って?なんですか?此処は何処ですか?」
「此処はダンジョンです!詳しい話は後で、今は僕たちについてきて下さい。怪我は?チャイ!二人の怪我を確認して、ソウマさん話の続きを聞いて下さい。僕は地図でこの先を確認します」
「ヒロさん!わかったよ!………二人は怪我は?軟膏です……擦り傷にはコレを塗って下さい……」
「ヒロ話は任せとけ。地図と道順を頼むよ!」
僕は彼らと話したかったが、ソウマに話し相手を代わって貰い魔法の地図で階層を確認する。
奥に『ベーザム』『ゴラグラ』と表記がありズリズリと地図の上を動いている。
魔物の名称ではなく名前らしき物が書いてあるので、多分人間だろう。
「奥に後二人います!二人は準備良いですか?先に進み助けないと!!」
僕はチャックに地図を渡し、罠を注意して探してもらいつつ先に進む。
「ヒロの旦那!この2ブロック先に居ますぜ!通路の罠は無いから進んで平気ですよ!」
僕はチャックにお礼を言って地図を受け取る。
皆で進むと『ベーザム』『ゴラグラ』と書いてある名前と僕達の名前が被さる……目の前には背負い鞄を担いだ採石師では無い姿の二人がいた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「うぉぉ!!魔物め!!死んでたまるか!折角割の良い仕事を見つけたんだ!!」
「ベーザム!!頭を狙え!!なんとしてもこの変な場所から出るんだ!!うぉぉぉ!!」
男達二人は急に武器を『ブンブン』振り回して突撃してくる。
僕は突然のことだったにも関わらず、彼らの行動が手にとる様に分かった……
ベーザムと呼ばれた男は袈裟斬りを狙っていて、ゴラグラと思わしき男は持っている剣で突きを放とうとしている。
僕はベーザムの懐に飛び込み、剣を握る両手を片手で押さえて止め、相手の身体を肩にを充てて太腿を掴んでから勢い良くひっくり返す。
『ドシン……』
「ぐへぇ……いってぇぇぇ…………」
後ろの男は仲間の身体が邪魔をして突きを放てないので、僕は一気に距離を詰めて武器を持つ手に手刀を叩き込む。
手刀の痛みで剣を手放すグラゴラ………
『カラン……カラン………』
手刀を受けて堪らず武器を落とした男に左手で喉輪攻めをして首を掴むと、右手でショートソードをクロークから抜いて切先を向ける。
「何者ですか?武器を持っているって事は冒険者ですか?それとも………」
「ヒロ!コレをみろ!!人骨の山だ!!」
「いかんぞ!全部回収するんじゃ!!なんちゅう事じゃ!!お前らなんぜこんな物を!?」
地面に散乱した人骨を見るソウマにアルベイ。
彼らの事情は後回しにして、僕らは全員で彼らの背負い鞄に『人骨』を戻す。
チャックには彼等二人が逃げたら、容赦なく背後からでも撃って良いと言っておく。
「逃げねぇよ!魔物と勘違いしただけだよ!!古戦場帰りだから!!なぁ?グラゴラ?」
「ああ!そうだよ!悪いことなんかしてねぇよ!」
彼等の言い分を聞きながら、この人骨は放置できないし、破片でも残したら危険だ……
「コレは悪いですが今だけは僕が管理させて貰います。此処はダンジョンですから……この人骨を残していった場合、浮かばれぬアンデッドとして永遠にダンジョンに囚われてしまいます!」
僕は否応無く『マジックグローブ』で背負い鞄ごと回収する。
「俺らは頼まれたんだよ!これはボーザー禰宜の推薦する仕事で、年貢免除の仕事さ!コレをやれば代わりにボーザー禰宜がその収益から年貢を収めてくれて、給金もくれるんだ!水精霊に頼らなくても暮らして行けるんだよ!!」
「そうさ!安い賃金をセコセコ貯めなくても一回で結構な金になるし、古戦場の魂も救われる!俺たちも金になり、暮らしは上を向く!精霊の村って言ったって、精霊なんかもう見れないじゃ無いか!!精霊より人骨で稼いだ方がこの村の為だろう?」
彼等の言い分は間違いでは無い、人の生活に欠かせないのは『金』だ。
物々交換で成り立つこの水鏡村だが、最低限の金は必要だ。
何をしているのか理解した上で一時的だろうが今の仕事を選んだのだ、問題があるとすれば今なぜ彼等が此処にいるかだろう……
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