第482話「食欲の権化ルモーラ推参!」
「ヒロ!!捜したぞ!!ダークフェアリーがまた何かしでかしたかと思ったぞ!エイミィにローリィも無事じゃったか!」
僕達を一番最初に見つけたのはアルベイとシャインの2人だった。
どうやら僕達が何時迄も帰らないので2人1組で捜しに出たらしい。
アルベイが自分のパーティーメンバーでなくシャインと一緒にいるのは、アルベイが探し始めた訳ではなくシャインが先に村から出て捜し始めたそうだ。
「実は話すと長いのですが掻い摘んで話すと……森精霊と風精霊の契約を得る事になりまして……」
「なんじゃと?……精霊じゃと?これじゃから嫌なんだ!この常識外れは!!どうしたら出会うんじゃ?ホイホイ精霊と逢える程精霊は………はぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
アルベイは、エイミィとローリィが連れている2人の風精霊を見て絶叫をあげる……
「どう言う事じゃ?エイミィとローリィが?風の精霊使いって事なのか?」
「ハハハハ!なんか流れで……ねぇ?エイミィ?………」
「アルベイ……ヒロに育った森を案内してたら流れで……」
アルベイは踊りながら、2人のまわりをグルグルと回っている。
「ガハハハハ!!まさか二人とも風の精霊使いとは!輝きの旋風の名に相応しいじゃないか!!ヒロ!名前は無いか?相応しい二つ名じゃ!!」
「二つ名ですか?……うーーん……手に入れたのが薔薇の迷路だったのと、新緑の騎士の知り合いだから……何時も二人でいるので『新緑の双姫』とか『薔薇の双姫』って感じでどうですか?薔薇村の出身だから後者の方がいいのかな?」
「…………おお!良いな。薔薇の双姫か!じゃが新緑の双姫も捨てがたいがな!そうかそうか新緑の騎士の知り合いだから新緑の双姫か!ハハハハッハ!!………ハァ!?なんじゃと!?なんじゃ?その新緑の騎士の知り合いってのは!!神話の……森の剣・グリーンナイトと知り合いじゃと?」
「まぁ後で詳しく二人から聴いて下さい。それより早く村へ帰りましょう!これ以上大事になる前に!」
僕達は踊り狂うアルベイと、それを見て大笑いするローリィとエイミィと急いで村へ帰った。
シャインはダークフェアリー絡みじゃ無いとわかり一安心したようで、帰り道に僕はアレコレと質問攻めにあった。
「ユイナ!!アルベイ達が帰ってきたぞ!ミクとカナミとアーチに準備をやめるように言ってくれ!」
ソウマがそう言って走ってくる。
「ヒロ!お前何処に行ってたんだ?ダークフェアリーが出たのかって大騒ぎだったんだぞ!?って……なんだそのちっこいのは?お前ダークフェアリーの仲間か!!」
一斉に武器を構える仲間たち……そして『それ』に気がつかなかった僕達は後ろを振り返る……
「なんでコイツら私を殺そうとするんだよー怖いよー!!ヒローー!!」
「ル………ルモーラ!?なんで此処に?」
僕は焦ってルモーラを二度見してしまう……
「だってヒロ思ったよりいい奴だったし、ローリィとエイミィの仲間も二人を任せられるか気になるし!様子見に来たんだよぉ〜!それにさっき言ってた夕飯が気になるじゃんか!!」
「ルモーラは悪いフェアリーじゃないわ!皆武器を下げて!!」
「確かにルモーラは悪いフェアリーじゃないから皆武器をしまってください!!単純に食い意地が極めて強いだけですから!!」
「うぉい!!ヒロ!!歯を食いしばれ!うりゃぁぁぁ!!」
『ポカポカポカポカポカ………』
多分こうなった理由は僕にある……
僕は妖精の森から出る時に『時間的にユイナの夕飯に間に合わないかも……』と言ったところ、ローリィとエイミィは非常に残念がっていた。
それを聞きつけた食欲の化身ルモーラは『せめて私の分を持ってきて』と、森でローリィとエイミィが妖精達に挨拶をしている間ずっと言っていたのだ……
それが余りにも煩いので村長に蔦で雁字搦めにされてワタ畑に放置されてしまい、彼女はエイミィとローリィの別れの挨拶ができなかった。
ちなみにこの時に妖精の住む森周辺に『人間の村』で農業に使えそうな野菜や果樹が無いか聞いたら、新緑の騎士から『チェレープの苗木』と『レモップルの苗木』をいくつか貰えた。
向こうとしても願ったり叶ったりだったようで……『是非魔の森を開拓して大地を浄化し、多くの汚染されていない樹々を沢山増やして森の拡大をしてくれ……』と言われた。
汚染されても樹木では無いか?と聞いたら『ゾンビになった仲間を、同族として人間達は放って置けるのか?』と遠回しに言われた。
要は自分達で切り拓くのは辛いが、周りへの被害をこれ以上増やさない為と新たな眷属の為のようだ。
しかし森の精霊からは面白い情報を得られた。
魔の森で変質した樹木は『非常に魔力が高く』硬い素材と聞けた。
その木材は『穢れに侵食されているのでは?』と思ったが、祝福をかける事で穢れは失われるそうだ。
そして魔力が篭った魔樹は『武器製造』や『建築』に適しているそうだ。
魔力耐性を強く出来たり魔力伝達を良くしたりと、要所に応じて適正素材を混ぜる事で性質の変化を期待できていい事づくめの素材だった。
今まで人族は樹木系魔物からそれを得ていたが、それを近場から採集できると知れたのはいい事だ。
「ビックリしたわい!振り返ったらフェアリーが居るんじゃからな!!ルモーラと言うのか?エイミィとローリィが世話になった。沢山食ってくれ……良ければワシの分も食ってええぞ?幼い頃助けていたおかげでワシらは出逢えたんじゃ!!」
「はぐはぐ……うん貰う!良いおっちゃんだな!モグモグ……その大きい一枚おくれ!!」
輝きの旋風からは『ルモーラ』は大人気だった。
何故なら彼らは男しか居ないむさ苦しいパーティーだったのだが、エクシアと出会った事がきっかけで突然美女二人が仲間に加わったのだ。
その彼女達が世話になったフェアリーが目の前にいるのだから、メンバーの家族のようで嬉しくもあるのは当然だ。
「アルベイ!聞いて欲しい事があるの……私達仇を見つけたわ!私達の生まれた村が既に無いことは言ったわよね?実はそれが『小国郡国家』の仕業だったの……それを新緑の騎士様に聞いたわ……人工のダンジョンを作りそこで宝を漁っているそうなの……」
「なんじゃと?そんな事が?こう言ってはアレなんじゃが……近場にそんな場所はなかったぞ?」
「いや!そんな事はないぞ?アルベイ。一度あったじゃ無いか!やけに羽振りがいい冒険者が『新ダンジョン』を発見したと言う話を!」
「確かにそんな事あったなぁラバル……じゃがあの冒険者は二度と姿を見せなかったから『ガセ』じゃと……そうか!金に薄汚いあの国じゃ……消されたのか!」
「ドーイも何か聞いた事があったと言ってたよな?」
「ああ!あったなそう言えば……店に売りに出す事ができない武器を買い取ってくれ無いか……と言われたぞ?鑑定スクロールした結果なかなかの品だったから買い取ろうとしたんだが、金を持って行ったら指定日に来なかったからな?確かにアイツもアレから見てないな?」
アルベイ達は小国郡国家で『番犬』のリーダーを待っていた経歴がある。
何か噂を聞いていてもおかしくは無い。
それに新緑の騎士の話ではダンジョンは『王国領土』に作ったのだから、何処でそれを手に入れたかなどは大声で言えるはずもない。
「エイミィにローリィ……詳しく説明をしてくれんか?話せる所までで良いんじゃが……」
エイミィとローリィは、その話の元になった森精霊と風精霊のやりとりから振り返って説明をした。
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