第475話「妖精種の性格と解釈の違い」


 その魔力も飛ばされた時間を基礎にして、前後への時間指定する度に爆発的に大きくなるそうだ。



 そんな魔力を使えば如何にダンジョンと言え『蓄えた穢れ』はすぐに枯渇してしまう。


 だからダークフェアリーは、異世界人を『何人も最低限の魔力でこっちへ放り込んで』生き残った異世界人をコアに活用したのだろう……と言う事だった。



 異世界人が生き残り、個体としてのレベルが上がればコアの質が上がるので尚の事だろう……ともトレントは付け加えた。


 そして賢人トレントは問題発言と重要発言を一緒にする……


「異世界召喚は必要魔力とコツが分かれば『失敗を考えなければ』フェアリーでも出来る。特殊な力……肉体を破壊して『穢れの身体』を手に入れればな?その代わり『生まれ変わる事』はもう出来んがな……妖精核も魔物核も人間の魂と扱いは一緒だ!それを壊すのだ……元に戻れるはずもないだろう?」



「でも……それを知った上でダークフェアリーはやったと言う事ですよね?」



「『知って』いればだがな?……違うならばどうだ?例えば……重要な部分は伏せられて『悪戯の延長』だと言われていたら?妖精種は悪戯好きが多いからな?」



「!!悪戯で殺されたり、異世界に呼ばれ穴蔵で300年も暮らす羽目など堪らないです!」



「例えばの話じゃ!!想像力が乏しいな?全く……理由はワシの後付けじゃろうが。それに人族の寿命問題はワシにはなぁ……妖精種は500年は最低でも生きるからな?あと考えは改めるべきだぞ?人間とてかなりの生き物を殺しておる………まぁ弱肉強食という事だな」



 僕は村長を見ると『うんうん』と頷いて居る……確かに言われた通りだ……言葉に詰まってしまう。



 悪戯の延長問題についてトレントの考えを聞くと、悪意の異世界召喚ではなく『共に長く悪戯できる』と言われたらと言う事だった。


 そして悪戯好きと言うのも、先程『鍵』を貰った時に話を聞いた……



 それにこの世界の人以外の種族の命の重みの考え方は人間と異なる。



 生活圏内に『死が溢れて』いるのだ……人だって森に入ればゴブリンに襲われて死ぬ世界だから、安全など無いと心から解っている。


 元の世界だって、交通事故に病気そして運が悪ければ金銭などの目的で襲われて殺される事もある。


 そう思っていると、村長の話を始める賢人のトレント……


「この村の基礎はワシが作ったが、それから後にこの妖精が『ワタガシ草の蜜』が気に入って住み着いて村を作ったのだ……それでも1000年は経ってないからな?」



 長命種基準の考え方なので、寿命の概念がかなりおかしい……だが『悪戯』で異世界人を連れ込んで長谷川くんは450年も生きて苦しんでいた……悪戯では済まない……コレだけは異世界人として譲れない。



「ですが……ダークフェアリーは異世界人である長谷川くんに『廃棄処分』と確かに言ったんですよ?」




「それも『廃棄処分』が『死』ではなく『送還』と聞いていれば事情が変わるのではないかの?召喚魔法の基本は『呼んだ後一定期間』で『還す』のが決まり事なのだよ……だから呼べるのだ。」



「では僕の召喚魔法も原理は同じで、この世界に実際にいる魔物を呼んでるのですね?」



 トレントは不思議そうな顔をするが、一応頷いてくれた。


 不思議そうな顔が何故そうなったのか腑に落ちないが、今はそっちが問題では無い。


 トレントは、召喚魔法の決まり事の続きを話しているからだ。



「だが異世界召喚は違うのだ。呼んだ後『同じ所へ返す術式』は組まれてないのだよ。召喚を多用し長く生き楽しむ種族にとって『一緒に楽しむ事が至福』なのだ、還すと言う行為は『別れ』を意味するからな。その個体は戻した先で他の魔物に喰われてしまい二度と会えんかもしれないからな?」



 トレントの召喚説明はかなりショックな内容になる……僕の使う召喚魔法と異なり、呼んだ後に元の同じ位置に返さない仕組みだという。 



 『廃棄処分』が『元の世界に返す事』と間違った知識をダークフェアリーが持っていて、召喚される前の場所へ還る事を『大した事のない問題』と捉えていれば……状況は大きく変わる。



 そして、それは大いに関係している可能性があると、ルモーラが言う。


 その理由は『フェアリー』は悪戯のために、あちこちに旅立つ種族だからだそうだ。


 同じ場所じゃなくても生活はできる……とまで言っているほどだ。


 『誰かへの悪戯が存在理由』と言ってもおかしく無い、とまで言っている。



 だがトレントは別の切り口の考えもあった様だ。



「しかし、言っておく事は他にもある……『穢れ』は悪意の塊だ……初めは悪戯であった意識が『殺意』に変わるかもしれん……それは『当事者』にしかわからん……お主が経験した事から考えると、初めは『悪戯』だった事が『変質』した可能性があるかもしれんな」



 フェアリー種が『ダークフェアリー』に変わった時点で、何かが起きた可能性が大きいと言う事だった。


 そして全て調べた訳ではないから、ここまでの事は憶測でしかないと言う。


 だが、楽観主義のフェアリーがそこまで変貌した理由が何処かにあると言う事だ。



 トレントは長い年月の事を思い出す様に考えた後、『ふむ……やはりオカシイのぉ』と言う。



「問題はダンジョンコアの設置とその扱いだ!自然発生のダンジョンならば最下層に行かねばならん……フェアリーになどオーガ種やジャイアント種の相手など無理だ。ダンジョンの主人が幾ら弱くても最低オーガ種だろう……それでもフェアリーには無理だ。ならば『コアの設置』しかないだろう?」



「コアの設置を僕が知らないので、なんとも言えませんが、倒せない理由はよく分かりました。ルモーラが『絶対に無理』と言ってますし、まともな攻撃手段が無いみたいですね?」



「そうなのだよ。それにそのコアを作り出す技術はフェアリーには無理だ。その手段は扱える種族が限られているのだ……裏に何かが居るのは間違い無い……それもこの世界と大きく関わるもので悪意と殺意を強く持つ者だ……全てを滅ぼす気が有るみたいだからな?」


 そう言った後『事情は分かったわしも調べてみよう……ゆっくり待っておれよ?短命種のハミダシ者のヒロよ!』と言われた。


 意味深な言葉の意味を聞きだそうとするが、とうのトレントは蔦を器用に伸ばしてバタークッキーを巻き付けると口へ運ぶ。


 蔦は数本を一度に自在に動かせるのか、変わるがわる巻きつけては美味しそうに頬張る。



『バリバリ……バリバリ』


『バリバリ……バリバリ』


『バリバリ……バリバリ』



「こんなに食い散らかして悪いのぉ……そうじゃ!この礼にワシが管理する『薔薇の幻影迷路』の使用を許可してやろう……本来人族に使用はさせるつもりは無いのだが特別だ!この『バタークッキー』は食えば食う程に力が漲るのだ!お主の世界が如何に『大地が豊か』かすぐに分かるぞ!!」


 トレントは興奮気味に話したので内容がクッキーと大地の話に切り替わった……



「賢人様『薔薇の幻影迷路』の件ですが……どの様な物ですか?その……途中でクッキーの話になってしまい……」



「おお!スマヌスマヌ!『バリバリ……バリバリ』薔薇の幻影迷路には『バリバリ……バリバリ』森の精霊と風の『バリバリ……バリバリ』精霊が……スマヌがココアを根にかけてくれるかの?なかなか大地の成分が多くあれも捨て難いのだ!!」



「じゃあゆっくり食べた後で説明を……」



 そう言って根にホットココアをかけるがトレントは……



「見た方が早いぞ?『ルモーラ!』お前にも使用を特別許可してやろう!この人間を連れてきた褒美だ!今日だけ使用を許すぞ!そこの女冒険者2名も行ってくるがいい!本来関係ない者は入れないが、今日は気分が良いからな!そうだな……食べた枚数と飲んだ分の礼として1刻くらいはゆとりを持ってやろう!」



 トレントが強く枝先で樹々を払うと、何故かそこには無数の薔薇で出来た巨大なアーチが現れた……

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