第463話「領内視察・ローリィとエイミィの故郷」
結局翌朝は8時まで寝てられず、7時には宿の主人に起こされた……理由は勿論だが気が逸っている『イスクーバ』が原因だ。
下に降りて宿の亭主と話すと、彼が早い理由もよくわかった。
少なくともローリィとエイミィの故郷の村までは馬車で片道3時間かかり、ミミの故郷の村迄は直通経路で4時間かかる……因みに前者の村と後者の村の距離は1時間なのでお互いの村はそんなに離れていない。
だから朝早く出ても、帰ってくるのは間違いなく夜だ。
「おはよう!イスクーバさん。随分早いと思ったけど、宿の亭主に話を聞いたら納得の距離だったよ。待たせてすいません!」
イスクーバはマークラの配慮で『多分距離が分からないから早く出たほうがいい』とアドバイスを受けていたそうだ。
「義父も後程合流するそうです。あの剣のお礼も兼ねて直接お礼を言わねば気が済まないと……申し訳ありません……」
「そうですか……気にしないでいいのに……とりあえず近いほうが薔薇村って事なので、先にそっちに行こうかと思ってます」
僕がイスクーバに礼は必要ないと伝え、その上で行き先を伝えるとマークラは予想していたらしく、
「大丈夫で御座います……先にそちらによられて行った方が、帰りに何かがあればまた寄れますから」
マークラは非常に有能だ……
馬車の用意を忘れていた僕だが、ちゃんと乗れる様に手配をしていてくれていて、宿の脇に止めてあった。
「馬車は2台用意させました。片方は同伴されるお仲間様に、片方はヒロ様がお乗りください。アンミン奥様は後程お父上様と合流された上で、村まで直接向かわれると言われました。剣のお礼は後程させて頂きます」
マークラと話していると、馬車数台が到着する。
「なんじゃ!馬車は用意してあったのか?うん?おお!!これは元ヤクタ家の執事殿か!しっかり者だと聞いていたが噂通りだな!」
「いえいえ!お仲間様の分をちゃんと聴かずにいました……お恥ずかしい……確かにヒロ様の話を聞けば『護衛』馬車も用意しておくべきでした……いやはや……」
「大丈夫じゃ!ファイアフォックスのサブマスターもしっかりしておるからな!全部彼が用意をしておったわ!がははははは!!」
輝きの旋風は全員馬で、ミミの居るレッドアイズとチャック達は荷馬車で、異世界組も用意されていて馬車だったが、荷馬車では無くホロ付き馬車だった。
エルフ達は全員馬だったが、見慣れない馬だったので確認すると『エルフィン・スティード』と出る……
「これはエルフ馬と呼ばれる種族で持続力がよく足が速いのです。主に人間の乗る馬より攻撃力も高いので、エルフはこれに乗りますが……数が少ないのがネックですね……」
不思議そうにしていたのが伝わったのか、エルデリアが詳しくそう教えてくれた。
馬車が多かったが、途中の休憩やら何かあった時のために乗り分けていく事にした。
マークラに用意した1台目の馬車には、僕とソウマそしてマークラにイスクーバが乗り、2台目馬車には異世界女性組とタバサが乗り込む。
マークラとイスクーバは御者席に……と辞退したが『今日の事で話すことがあるので乗って貰う』と言ったら理解してくれた
ホロ付きの馬車にはチャック達と3姫達が乗り込んだ。
アンミンが用意させた伯爵家の馬車を勧めたが『冒険者を甘やかすな!同じ目線で見て!』とスゥが言ってきて幌馬車に決定した。
今日の行程の途中で昨日聞けなかった『詳しい話を聞く』とだけ言っておいた。
あとで何かがあっても、困るのは僕達だからだ。
荷馬車の一台は魔物を狩った場合にも使えるので、結局そのまま持っていく事になった。
僕的には、馬車が余るこの時点でフラグでしかない気がした………
「では行きましょう!手間取り過ぎると今日中に帰って来れなくなりますので………」
イスクーバの号令で出発する事になる……が………
「ヒロ様ーーー!!私も参ります!!」
走り出す馬車の御者台に、器用に駆け上ったのは『シャイン』だった……
「あ!危ないですよ!全く!シャインさんはお兄さんと一緒に、今日はエクシアさん達と打ち合わせなんじゃ?」
「テイラー兄さんがいれば問題ないです!それに、兄様と同じ男爵様ですからヒロ様は……『ちゃんと身を守ってくる様に!』と男爵である兄から厳命されました!」
ひとまず馬車を止めて、シャインを中に入れる。
「女性陣は後ろの馬車ですけど……こっちで良かったのですか?」
「ダークフェアリーが来たならば、回復をいち早くする為に此方の馬車が適切ですよね?」
「確かに!そうで御座いますね!シャイン様!我も何かあればヒロ様を守る為に盾になる所存!前の様な不甲斐ない姿は見せません!」
「イスクーバさん、それを言うなら私とて同じ事です!一緒に守り抜きましょう!!」
「はい!」
ガッチリ握手をして力む二人だが、そうそう襲われてばかりも居られない……
夜までに帰るのであれば、さっさとダークフェアリーは、牢獄アイテムに閉じ込めないとならないのだ!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
僕は途中休憩で今日の主要メンバーに、村では僕がこのジェムズマイン南部の領主だと言わないでくれ……と言っておいた。
理由は簡単で、もし不正を喜んでする輩がいたら『取り締まれない』からだと言っておく。
実際は、擦り寄ってくる面倒な人間を相手にするのが嫌なだけだが……
イスクーバとマークラは、耳が痛いと言う素振りを見せたが『人間は変われるんですよ?』と言うと、激しく首を縦に振り『我々は罪滅ぼしのために変わります!このチャンス無駄にはしません!』と、さらに力んでしまった。
責任感の強そうな二人だから、少しづつ変わって行くしかないだろう。
良い方に変わってさえくれればそれで良いのだ……この領民が鉱山で無駄な死を遂げたのだが、それは彼らの所為では無いのだから。
全てはヤクタ男爵の欲望と、騎士ターズの不甲斐なさが招いた事なのだ。
現にイスクーバの母は領民を思って、様々な取り組みを内緒でしていたらしいのだから……
人間はやろうと思えば『良いことも悪い事も』できる生き物なのだ。
ならば良い事をするべきなのだ……
仲良くなり気心が知れた仲間達は、必ず自分の助けになってくれるのは経験済みだ。
僕の知り合いにも非常に多いのでそれは間違いはない。
休憩を30分挟んで、僕達は先を急ぐ。
魔物には1匹も出くわさない……理由は簡単で『チャーム』を馬車に括り付けてあるからだ。
中級種以下の魔物は馬車に近づくことさえできない。
僕は『アルブル・モンドの見渡しの魔法地図』を広げて地図を見ながら進むが、イスクーバとマークラそれにシャインは目を見開いて『なんだこりゃ!』と言う顔をしている。
フォレストウルフの名前が4匹近づいてくると、馬車の窓から遠くに姿が見えて、近付いてくるが諦めた様に引き返していく。
その行動が地図の名前と合致するのだから、ビックリしてもおかしくは無い。
エルフ達はフォレストウルフを狩に行きたいが、寄っては逃げるので狩れずに居た……
「どう言う事でしょう?前にも経験しましたが……魔物が来ても諦めて帰っていくのです!初めての経験で……説明がつきません!」
エルオリアスが興奮気味に馬車のそばで話す。
「水精霊の加護じゃないですかね?昨日見ましたでしょ?」
シャインも説明はつかないが、目の前で見ている『地図のせいだ』と彼女は思っている様だ……
理由はわからないでもない……
問題は行く時より尊敬の眼差しが『怖い』と言う事だ。
今は皆を押し退けて僕の横に座っている……『早く馬車つかないかなぁ』と……僕はさっきからそれしか考えていない。
朝8時に出発した僕達は何と2時間でローズビレッジ(薔薇村)に到着した。
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